ぷらあれ!
いつものラウンジBARにて、アレスロが待ち合わせの時間通りに店に着くと、プランデッリは既にグラスを傾けていた。
以前リスナーからもらった「コカレロ」というジンの一種。淡い緑色のポーションは彼女のお気に入りの一つだ。
アレスロも純米のポーションを頼み、隣に腰掛ける。
「お疲れ様。騎士団長も大変ね」
「ああ、今日は一段と疲れたよ」
労いの言葉に苦笑を返す。
週末は決まってこのBARでどうでも良い話をするのが二人の暗黙の決め事だった。
マスターから渡された純米ポーションを一口舐め、ふぅと一息。
やはりここで飲むポーションがいちばん美味い。
この店自体の質が高いのもあるが、一番の理由はきっと。
「ん? 顔に何か着いてる?」
彼女の存在が大きいだろう。
ビータスクリエイションに所属している者の中で、プランデッリは一番相談がしやすい相手だ。
何でも寛容に受け止めてくれる彼女に助けられたのは一度や二度ではない。
本人は平然としているが、アレスロはその事に深く感謝していた。
「なあ、これを受け取ってくれ」
だからこそ、今回はプレゼントを持参していた。
小さな長方形の箱を手渡すと、プランデッリはきょとんとした顔でそれを受け取る。
「え、なになにー?」
ガサゴソと包みを開き、箱を開ける。
そこには簡素な飾りのネックレスが入っていた。
プランデッリがいつも着けている物と似た、色違いの青い石が中心にあしらわれている。
「おおー。いいの?」
「日頃のお礼だよ。ボクはセンスが無いから申し訳ないけど」
「そんな事ないわよ。ありがとう」
にっこりと穏やかに微笑む彼女に、アレスロも自然と笑みを浮かべ、純米のポーションを口にする。
今日はやけに甘く感じるな、などと思っていると、プランデッリから思わぬ言葉を投げかけられた。
「ねえ、女性にネックレスを送る意味、分かってる?」
イタズラを思いついたかのような笑みに、アレスロは首を傾げる。
「あはは。やっぱり知らないかー」
プランデッリはコカレロをくいっと飲むと、触れ合う程に顔を近づけ、耳元で囁いた。
「これはね。『貴女は私のモノ』って意味だよ」
「――は? い、いや、そんなつもりは……」
「無いのかな?」
尚もニンマリと意地が悪く笑う彼女に動揺を隠せず、アレスロは小さくうなる。
「……無いことは、ないかな」
「ふふ。そっかぁ」
プランデッリは上機嫌にアレスロから離れると、カバンからすっとカードキーを取り出した。
それを見せつけながら笑う。
「ねえ、下に部屋を取ってあるんだけど。どうする?」
「え……それって、その……」
「うん。予想通りじゃないかな?」
アレスロの頬が染まったのはポーションのせいか、彼女の言葉のせいか。
しばらく視線を漂わせた後。
アレスロは小さく、頷いた。