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2:運命の日、王宮にて宣告される事とは

 2週間前、テキオン王国という国の王宮にレギンは居た。


 といってもそこは地下に設けられた薄暗い部屋であり、上の階の華やかさに比べると、屋敷と馬小屋ぐらいの差はある。


「生命のポーションと魔力のポーション、今日もポーションだけか、今の女王様になって随分と楽になったな」


 レギンは仕事としてノルマを与えられ、今までならポーションはおろか、魔法薬の素材、魔科学の部品および研究材料、とにかくも雑用を押し付けるがごとく、大量のノルマを渡されていたのだ。


 2か月前なら夕方までかかり、多ければ夜に終わるようなノルマ、それが今では昼前までに終わるようになっており、やはり、王が変わった影響が出ているとレギンは考えていた。


「さて、残りは僅か今日も昼前に終わるだろうな」


 昼までに終わらせて、その後は何をしようか、レギンは8年前から軟禁されており、この王宮だけがレギンの世界、やることは限られている。


「まあ研究を終わらせるか」


 今やっている研究、それは結構費用が掛かるものだが、研究費用は軟禁されているお詫びのようにある程度は都合されている。


 それが自由の代わりにレギンが手に入れたものか、レギンが軟禁されたことにより、魔科学の発展はここ8年で急激に成長している。


「レギン・レイシス、女王様がお呼びだ」


 ノックぐらいしろ、そう思うレギンだが、軟禁され監視されている身なのでプライバシーはあんまりないんだろうなとレギンは思い直し、ノックしてもらうことは諦めることにした。


 改めてレギンはドアの方を見てみると、そこに居たのは王宮の兵士、レギンを連行するために今はドアの前で待っている。


「なんの用ですか?」


「私は命令されただけだ、いいから早く準備をしろ」


 兵士は嫌そうな顔でレギンに命令をする。


 今更それにむっとなることも、嫌そうな顔もせずにレギンは、あまり使わない古びたマントを、机の横にあるラックから取り、ぱっぱっとほこりをはたき落とし、これまたよれよれの服の上に着る。


 そのおかげで見た目は幾分かマシになるが、それでも王宮に相応しい人物は言いづらい。


「では、いつも通りにこれを付けさせてもらう」


 レギンは腕を前に伸ばし、兵士は懐からいつものを取り出す、じゃらっと金属の音、それは腕輪であり、レギンの魔力を制限するもの。


 レギンが部屋から出る時、これを付けるのが条件であった。


 魔封じの腕輪、レギンが考案、設計したものでありこれは試作品、といっても丈夫で物理的、魔法的にも破壊は不能、いや可能ではあるが着用時には先に体が滅びるといったところか、過剰な火力でしか破壊は出来ない。


 ちなみにこれ1つで、テキオン王国の国家予算の10分の1が飛ぶので、量産されているのすら高級品であるが、この試作品はそれと比べ耐久はまるで段違いだ。


 不自由、レギンはこれを付けられて自分の立場を再確認する。


 8年前、今はもうかすかにしか覚えていない外の感覚、風に吹かれたときの気持ちよさ、焚火の近くでの暖かさ、川の水の冷たさ、土に寝ころんだ時の匂い、全て8年の間に忘れてしまった自然の記憶だ。


 レギンはもう一度外に出てみたいと今、考えていた。



「ミアン女王様、今、お連れしました!」


 レギンは考え事をしてうつむいていた顔をあげると、そこは謁見の間の前の大扉であった。


 立ち止まり、いつも通り大変そうに大扉を開けるんだろうな、そう思っていたが謁見の間の大扉が、音をたてながら自動で開いていく。


「おお、すごいな!」


 これには素直に驚く。


 それは魔科学の賜物か、この機械化こそ魔科学で得られた革新の1つであった。


 大扉が開き、その向こうにはレギンにも見慣れた空間が存在していおり、ここは最後に来た1年前から変わらないものであった。


 変わったとするならば大扉、そして王座に佇む王のとこまでに繋がるレッドカーペット、その両脇に立っている貴族か、その顔触れは1年前とはほぼ一新されていた。


 そして、そのレッドカーペットの先の玉座、それに座る王がその娘である王女に変わっているのが一番変わったことだろうか。


 レギンは今、ここに呼ばれた理由を推測していた。


 代り映えのしない毎日、何もないまま過ごしていたがそれが逆にまずかったと思っている。


 即位の際に挨拶、何も言われないからしていないが、ルールやマナーにうるさい王族や貴族ばかりが滞在する王宮、そこにいるのだから恐らくその無礼さが許されていないのだろうと、勝手に決めており、まずは挨拶をしようと前に進む。



 近づけばわかるがその凛々しさと美しさ、レギンは8年前まだ女王様が子供だった時に見たことがあるがその面影は残っている。


 ブロンド色の美しく長い髪、それは昔と全く変わっていない、だが、会うのは久しぶりだし、向こうはなぜかレギンの事を嫌っていたので俺のことなんて覚えていないと考えており、事実、レギンは今まで忘れさられていた可能性もあるのだ。


 どちらにせよレギンは膝をついて、挨拶することにした。


「ミアン女王様、この旅はご即位……」


「貴様、誰が口を開けていいといった!」


 ダメだった。


 レギンはミアン女王様の隣に立っている礼服を着た男、恐らくは側近の大臣に怒られてしまい、口を閉ざし黙ることにした。


 そういえば、前王の大臣は相応に老いていてたが、この大臣は若いなと思い、周りをチラリとみてみると、貴族たちも若い男が多いと気づく。


(女王様の趣味か? いや、さすがにそんなことで決めたりはしないか)


「テキオン王国が7天の1人、レギン・レイシス!」


 7天、それはテキオンの7つの羽と呼ばれている、7人の様々な分野の一流の人間だ。


 まあ、国外的には6天と呼ばれており、レギンの存在は秘匿されているのだが、国内の一部の人間はこの事を知っている。


(7天? ああ! そういえば、そんな肩書も昔に貰ったな)


 使う機会がないので、本人さえ忘れていた肩書、それを女王様に思い出させてもらったレギンだが、


「今日をもって7天および宮廷魔術師の称号を剥奪、そして王都への追放および侵入の禁止、明日から王都で貴様を見かけたら、即刻、問答無用、死罪とする」


 その肩書は奪われることになった。


 その発表に対して、周りの貴族は拍手で歓迎して、女王を称えていた。


 そして、突然とその地位を奪われ、追放と言われたレギンはと言うと、


「いいのですか!?」


 思いのほか喜んでいた。


 いや、レギン的にはそれは嬉しい発表だが、周りの貴族にはその地位を奪われるというのは耐えがたいものだという常識、けろっとどころかいい顔をしているレギンに困惑と、冷たい視線を向けていた。


「ええい、気味の悪い、そこの兵士、さっさとこの男を連れていけ!」


 その言葉に今か今かと連行を待つレギンだったが、その兵士はというと焦りと困惑で戸惑っており、ついには一歩前に出て、口を開く。


「お、恐れながら女王様、レギンを追放するのでしょうか、彼は前……」


「貴様、女王様に口を利ける立場と思っているのか!」


 側近の大臣は兵士に対して怒り、命令を遂行しろと促すか、それを待てと止める声、


「良い、今回ばかりは許してやる、そして理由も話してやる」


 気分がいいのか女王様はその無礼を許し、レギンを追放する理由を話し始めたのであった。


「そいつは粛清の最後の始末になる、前国王、つまりは我が父上、モラーナ・テキオンが不正を行っていたのは知っているだろう?」


「はい、女王様が直に改革をなされたと」


「うむ、その通り、父上と近い輩はこの通り追放一新し、新生の王室を作り上げた、だがな地下にまだその輩が居たというわけだ」


 女王様はひどく見下した目でレギンを横目で見る。


「レギン・レイシス、地下でポーションを作るしか能がないたかが魔術師、なぜそんなものが7天という大層な称号を持っている? なぜそんな奴が多額の給料を貰っている? 決まっている、父上がそう作り上げて不正の苗床とした、そうだろう!」


「そうだろうと言われましても……」


 給料が出てたのかも知らなかったレギン、金なんて必要がない生活だからかそれを疑問にも思わずに、研究費も困らなかったので、その問題に触れたことがなかったのだ。


 だからといって、不正は知らなかったと言おうとするレギンだが、


「ふん、言い訳か? 残念ながら証拠もある、罪人は黙っているんだな」


 側近の大臣にそう言われ、ぴしゃりと口を閉ざされてしまった。


 レギンとしても、その証拠がでっち上げだと思ったが、追放されたいので反論はしないことにする。


「しかし、レギンの魔術は必要なものではないのですか?」


「魔術、いいか、そんなものは時代遅れ……入ってよいぞ!」


 すると謁見の間からの入り口から1人の男が入ってくる。


「ここに居る者は初顔であろう、紹介しよう、テキオン王国、魔法科学技術部、主任魔法師、そして新たな7天である、サイラス・レギオンだ」


 それはレギンが聞いたことがない組織の名前であった。

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