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1:明かされた事実は衝撃的なものだった

「追放……だと?」


「はい、宮廷にいるだけでなにもしない魔術師は追放が妥当かと」


 その一言で場の空気は凍り付いてしまう。


「しょ、正気か?」


「し、知らんからな、どうなっても知らんからな!」


 戦士の男と商人の男はそう言って、どうしようもないという表情を見せる。


「……終わりよね、いえ始まりかしら崩壊の」


「と、とりあえず防衛重視で軍の強化はしますが」


 女魔法師と軍師は諦めたような表情になる。


「……はあ、私も出てく」


「ちょ、ちょ、ちょっと! 困るって今は!」


「知らない」


 少女はその場から去り、調子のいい青年もこればかりは焦っていた。


 女王様のその発表に場はカオスといったところか、混乱を極めていた。


「み、皆さん、なぜそのように焦っているのですか!?」


「なぜって、そりゃ焦るだろ!」


「たかが、魔術師の1人、しかも金くい虫ですよ! これで、軍事費にも他のものにも金を回すことができるんですよ?」


「いや、あいつがいれば……もしかして、女王様は知らないのですか?」


「え、何がですか?」


「えっ!?」


 その言葉に場に残っている5人は驚きの表情と声をあげて、固まってしまう。


「何って、レギンの役割ですよ!」


「そんなの、宮廷でポーションとかを調合するだけの仕事ですよね?」


「それは宮廷から出れないから仕方なくやっていることですよ! この7天の中で一番強いのはレギン、俺達が束になって、ようやく止めれるか止めれないかなんですよ!」


「あんな冴えない顔で、まさか!」


 その言葉に誰しもが女王様をにらみつけて、その雰囲気に彼女もさすがに焦ってくる。


「女王様、先の戦争のクレーターを覚えてますか?」


「ええ、父上は魔科学の成果だと言ってました」


「……それ、レギンの魔術です」


「えっ、たかが魔術ですよ!」


「その、たかが魔術で、やるんです彼は」


 魔術は魔法と比べて、術式を扱い理論的に発動する能力だ、この世界では直感的に扱う魔法よりも扱いずらいと重視されていないものであった。


「じゃあ、なぜ前線で戦わないのですか!」


「理由は抑止です、その強すぎる力、それを恐れているけどこの国のために働いてくれるならば、その力は保有しておきたい、だからこそ王宮で飼い殺しとなり、いざという時のための抑止力として、王の近くで国を守っていたのですが……知らなかったですか? 前国王の決定ですが」


「知らないわよ!」


 もはや、王女様は逆ギレのごとく叫んでいた。


「まあ、でもそれならそれでいいんじゃね? あいつさ、可哀そうだったし」


「いいわけないでしょ! 貴方、探してきなさい!」


「む、無茶言わんといてください!」


 調子のいい男は、その命令はさすがに無理だと首を横に振り、拒否する。


「では、イレーナ! 貴方ほどの魔法師ならばいけるでしょ!」


「まあ、探せはするけどね、捕まえるのは無理よ、本気を出されたら追い付けないもの、それに彼の魔術とやりあって勝てるもんでもないしね」


 イレーナはそう言うが、それに異議を唱えるのは王女様の隣の新たな7天の1人であった。


「馬鹿な、魔術は準備が必要な以上、時間がかかり戦闘面では魔法に劣るはずだ」


「その分、魔術が強力なのを知ってるでしょ、それをあの子はノータイムで扱うのよ、まあ、貴方達のご自慢の魔科学でなんとかしたら? どちらにせよ、私は降りるわ」


 そういって、イレーナは魔法でその場から消えてしまう。


「ハンネス! 貴方のギルド商会の手で捕まえてきなさい!」


「Sランク……いや、SSSランクぐらいの前代未聞の依頼になりますな、女王様、失礼ながら冒険者はこう言いますよ、国家予算の10分の1でも割に合わない仕事だと」


「くぅうううう!」


「まあ、金では捕まりませんなレギンという男は……それよりもレギンが居なくなったことによる、武器、魔科学、道具、薬、その他、全ての素材の調達手段、およびそれの販売により儲けていた資金、その調達が目下の課題と考えますが」


「分かっていますわ! フェルノート! 軍師である貴方から何か策は!?」


 そして、最後に女王様はヒステリック気味に軍師に叫び、それをフェルノートはため息1つ吐いて、これからの事を話し始める。


「ないです、レギンを捕まえるのは不可能、戦略も策も全て無駄になりますね、レギンが報復でこちらに危害を加えないのを祈るしかないですね、まあ、レギンの性格からしてそれがないのがありがたいことです、彼、優しいですから」


「私が言ってるのは、これからどうすればいいってことよ!」


「……国防ですよ、7天の内、レギンと更にはフローシアもどこかに行ってしまいましたから、新たに加わったのは魔科学の専門でしょうね、書類で見たことがあります、レギンと比べて不安ですが魔科学を用いての防衛ですかね」


 ああ、大変、大変とわざとらしく、フェルノートは呟いて、それは更に女王様をイラつかせることになるが、


「ミアン女王様、必ずや私……いえ、魔科学をもってして成果をあげて見せます」


「ええ、期待しています、もちろん、貴方にも」


 新たに加わったサイラス、彼の言葉に女王様は気分が和らぎ、そして心の中では、さすが私が選んだイケメン、こいつらとは違うわねと的外れなことを考えていた。


「……はあ、俺も傭兵として生きようかな」


「あっ、いいっすね、それ」


 そして兵士である、ダリウスとシャルンも、その雰囲気を感じ取ったのか、女王様に聞こえないように不穏な事を言っていたのだ。




 7天という国のトップの実力者、ただでさえバケモノレベルの彼らが更にバケモノだと、恐れ敬意を抱くレギンという人物、彼を追放したのが間違いだった、それを思い知っている中、そんな彼はというと、



「王宮の外で朝を迎えるのもだんだんと慣れてきたな」


「お目覚めですか、レギンさん」


 王都に立ち入り禁止となり仕方がなく国外に向かう途中、その途中で人助けをしてその女の子に慕われていた。


「レギンさんは、王城に軟禁されていたんですよね?」


「まあね、その分、安全だったけどやっぱりどこか物足りなくて……」


「はい、自由になりたい意思、よくわかります……あ、今日で私の国に着きますよ!」


 どうやらこの女の子は王女様でレギンは、その王女様に気に入られたことになる。


 レギンは心の中で、俺の国の王女様とはいい意味で違うなと思っていたりしているが、それほど優しい子であるとこの2週間で感じ取っていた。


「リーシャちゃん、もうすぐ着きますからね!」


 そして、彼女はレギンの横で寝ていた少女、リーシャに話をかける。


 まだ、幼いのでこの旅についてこられるか不安がっていたのだが、ここまで付いてこれて、とりあえず安心ってところか、といってもリーシャは違うことを不安がっていたのだが、


「……でも私、エルフです」


「関係ありません! 私の国ではどんな種族も、どんな身分の人も自由に暮らせる国を目指しているのですから! エルフさんもいっぱい居ますよ!」


「……本当?」


「ええ、エルフさんは魔法が得意ですから、魔法科学の研究をしたりしてます」


 姫から魔法科学という言葉が出てきて、それにレギンは驚く。


「え、魔科学って、他の国でも実用化されてるの?」


「あ、はい、確かにテキオン王国が起源ですけど、私の国でもまだそこまで及ばないですがそれなりには……魔法科学、すごい力ですから」


 そういって、王女様は東の方角を向く、


「この先には、昔の大戦で出来たクレーターがあります、魔法科学が初めて実戦で使われたようで、それはもうものすごい爆発だったらしいです、犠牲者が出なかったのは奇跡でしょうけど」


(ふーん、この東となるとモルル平野か、懐かしいな昔、訪れたことが……あっ!)


 レギンは記憶を遡り、ようやく思い出す。


「それ、俺……」


「え?」


「いや、なんでもないです」


 戦争の時、自分が作ったクレーターだと思い出したのであった。




「とにかくも、ネガディブ、めっですよ、リーシャちゃん!」


「は、はい、シェリアお姉ちゃん」


「わあ、やっとお姉ちゃんって言ってくださいましたね!」


「わっ、わっ!」


 シェリアはやっとお姉ちゃんと呼んでくれた、リーシャに嬉しくなって思わず抱きしめる。


 それをレギンは、微笑ましい目で見守りながら独り言ちに少し前の事を思い出していた。


「……こんな光景も2週間前には考えられなかったな」


 そう、彼は2週間前、運命の日ともいえる朝を思い出していたのであった。

【読者さまへ】


「面白い!」「続きが見たい!」「このキャラが好き!」

この作品を見てそんな感想を持っていただければ幸いです。


そしてもしよければ、☆☆☆☆☆→★★★★★にしていただければ、

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読者さまからの応援が、作者にとっての一番のモチベーションとなるので、ぜひよろしくおねがします。

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