2.異国の王子
第二話目です。基本的に、物語は王女目線と王子目線の交互で進んでいきます。(思いつきなので途中でぐたぐたになるかもしれません…)
王子はだいたい部下と一緒にいるので会話が多めになります。
※2020/05/12加筆修正しました。
手が空いたので城の中を散策していた。自身の役目を果たし、事後処理を部下達に任せていた。優秀な者達ばかりなので仕事が早い。もしかしたら明日にでも報告がてら自分の城への帰路につけるかもしれない。自分の城というと少々語弊があるが、自分が生まれ育った場所だからいいだろう。
壁や柱の装飾を見てみるがどれも趣味が良いとは言えず、思わず閉口する。調度品も摩訶不思議な色や形をしていた。文化の違いかとも思ったがどう見ても美しくない。話の種には出来るかと考えたが、この装飾達をなんと表現したものかと頭を抱えた。
「殿下!こちらにいらっしゃいましたか!」
自分を呼ぶ声が聞こえたので振り返った。そこには部下がいた。
「どうした?」
「はっ、悪政に加担していたものは城の内外関わらずほぼ捕らえました」
「よくやった」
「…王と王妃がそれぞれ囲っていた者どもはいかがなさいますか?その、かなりの人数いるのですが…」
部下は渋い顔になった。
「あー…、奴らは何と言っている?」
「えーそうですね。何もやってないだの、知らないだの、褒美が貰えるからやっただけだの」
「最後のは思いっきり駄目だろう。…他には?」
「ええ、給料をはずむからといって各地から人を集め、その中から好みの者を選んで侍らせていたようです」
「処刑した者の補充ついでに愛人を、か…」
吐き気がする話だ。
「気に入った者には更に金品を与えていたようです。寵愛を受けるための争いを見て楽しんでいたようです」
「悪趣味な…」
この国の王は十年前に代わった。先王は賢王として名高かったが十年前に倒れたのだ。その後、王弟が継いだがすぐに国は傾いた。国境を封鎖、気に入らない官がいれば処刑、税を重くし少しでも足りなければ集落の住民全員を鞭打ちにあわせた。赤子や老人、病人関係なくである。それを非難した者、罰するのを拒否した者、自身に刃向かうものあれば一族もろとも処刑した。
国境を封鎖したが自身は外国から宝石等貴金属を大量に買い集めていたらしい。自身らが贅沢をするために、国民に重税を課していたのだ。それでも足りず借金を繰り返し国庫はほぼ空である。
「殿下っ!殿下っ!」
別の部下が遠くで呼んでいる。どうやら探されているらしい。
「こっちだ。なんだどうした」
「あ、こんなところに!ええ、少々気になることがございまして…」
「なんだ?」
「はい、やたら東の方角を気にする侍女が二人おりまして」
「東?東に何かあるのか?」
「それが何度か訪ねてみたのですが、頑なに答えてくれなくて…ですので東と……」
「ふむ…」
少し考えるフリをしてみる。実はもう決まっている。東を探索したい。もうこの城内の奇怪な装飾は見たくないからだ。
「よし、東に行ってみよう」
「やはりそうなりますか…。危険でございます。おやめください。まだ潜伏者がいるやもしれません」
「殿下自ら行かれなくても、私どもが確認してまいりますが?」
「いやいや、部下にばかり任せていては駄目だろう。たまには俺にも仕事させてくれ」
「なんだ、そういうことでしたか。あー、では他にも同行者を見つけてまいります」
先ほどの部下二人に加え、他にもう二人連れて城の東側を探索しはじめた。しかしそれらしき何かは見つからない。
「こちらで合っているか?」
周囲を見渡してみる。木が生えているぐらいだ。城のまわりだったらもう少し手入れがされていてもいいのだが、伸び放題である。城内は手入れされすぎて装飾は……だったのに正反対だ。
「と思いますが、確証がないのでなんとも…」
「侍女達を連れてきた方がよかったのではないでしょうか」
「いや、何も喋らないと思いますよ。怯えてましたから。脅すわけにもいけませんし」
再び辺りを見てみたが特に気になる所はない。思い違いだったのだろうか。
「城の最上部から確認してから探せばよかったな」
ふと思いついて言ってみた。未知の地に行くときは目的地を確認してから行くものだ。今回は完全に思いつきなのでそれを怠ってしまった。
「あっ…」
「やってしまいましたね」
後から追加された二人が少し顔をしかめる。彼らは身分が高くないので口には出さないが、表情には出すようだ。
ここで引き返すのは癪なのでもう少し辺りを探してみることにした。
「あっ!ありましたよ!さらに東へ続く道があります!」
木々に阻まれ、少々見つけにくい場所に細い道があった。ずっと奥に続いているようだ。
「おお、でかした。よし行ってみよう!」
「何が起こるか分かりませんので先頭に立たないでください!」
「おう」
細道を進んでみると、人気はないが最低限の手入れはしてあるようだった。よく見ると轍のような跡がある。しかし間隔が狭いので馬車やその類いではなさそうだ。
その道を少し歩いて行くと遠くに塔らしき建物を発見した。
「あ!見えます?塔が、塔が見えてきましたよ!」
「おおお!やはり何かあったか!」
「まさか本当にあるとは…」
あまりの嬉しさに大声を上げてしまった。部下達もかなり驚いているようだ。
「塔といえばお姫様だろう。さぞかし美しい姫君がいることだろうよ」
子どもの頃に読んだ本にそんな話があった気がする。残念ながら内容は覚えていない。
「そんなおとぎ話みたいなことないと思いますがね」
「夢がないなぁ。いるさ、きっと」
例え何もなくても冒険じみたことが出来たので問題ない。よい気分転換になった。
「私はお宝があったら嬉しいですねぇ」
「たとえあってもこの国のものだぞ」
「分かってますよ!でもやっぱり何かあったらいいですよね!」
「はぁ、お二人は夢があっていいですね…」
そんなバカげた話を続けていたら、塔の真下に到着した。塔は円柱状で周りの木よりも高く、下部には蔦が這っている。本当におとぎ話に出てくる塔のようだった。
「二人は塔周辺に危険がないか確認してきてください」
「はっ!」
「我々は殿下の護衛を」
「はい!」
二人の部下の顔つきが若干険しくなる。
「別に大丈夫だろう」
何の気配もない。遠くで小鳥がピピピと鳴いているぐらいだ。
「念には念をです」
「わかったよ…」
早く中に入りたいのだが慎重な部下がいるため、なかなか先へ進むことが出来ない。少々苛立ち始めた所に、周囲を調べに行った二人が戻って来た。
「塔の周辺には何もありませんでしたが、放置されているにしては綺麗なので定期的に掃除を行っていると思われます」
「塔の内部を覗いて見ましたが、こちらも清掃されているようです」
「うむ、報告ありがとう」
確認に行った二人がそう報告したのを聞き、自分は真っ先に塔へ入って行った。
「で、殿下!最前に立たないでください!何が出るか分からないのですよ!」
慎重な部下が声を少し荒らげている。焦っているようだ。
「何が出るって言うんだ?猛獣か?にしては我らの気配で唸り声すら上げない。いても大した奴じゃないさ」
「罪人かも知れません」
「罪人だったら鎖で繋がれているだろう」
「しかし!」
「問題ない。俺はそれなりに腕が立つからな」
少し強めに言えばこの慎重な部下は引き下がる。
「はぁ、分かりました。危険を感じたら後ろへ下がってください」
「ま、こんな狭いのでは後ろに行くのは無理だな。何もないことを祈ろう」
はぁ、と慎重な部下のため息が聞こえた。慎重ではなくため息部下にしてやろうか。
狭い螺旋階段をグルグルと上っていく。明かり取りのための窓、というよりかは隙間があるので真っ暗ではないが視界が悪い事には変わりない。何週目か分からなくなった頃、漸く一番上に着いた。
「ふぅ、やっと上りきったな」
「かなりの段数がございましたね」
「何もなかったらどうなさるんですかぁ?」
(さっきまでお宝がどうの言ってただろうに…)
「まぁ、その時はその時だろう」
なんとも厳つい扉がある。扉には閂がされており、それには鍵がかかっている。中に何もなかったらここまで厳重にしないだろう。やはり扉の向こうには何かある。
わくわくしてしまう心を抑えて部下に指示を出した。
「鍵は壊せるか?」
「やりましょう」
「頼む」
部下達が鍵を壊している音が響き渡る。流石にやり過ぎかと思ったが、ここまで来て引き返せない。壊した鍵は新しいのをつければいいだろう。
そんな事を考えているうちに鍵が壊れガキンッと音を立て床に落ちた。閂を抜き扉を開けると明かりが差し込んできた。
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