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優しさ

作者: はらだ


「大丈夫ですか?」


放っておけなかった、どうしても。


夜道を一人でヨタヨタ歩く、妊婦さんを。


「えっ?」


妊婦さんは、とても驚いたようにこちらを振り返った。


「大丈夫、ですか?何かお持ちしますよ?」


その妊婦さんは、両手に荷物を持っていた。そのお腹も、とても大きくて。


「あぁ…いえ、大丈夫ですよ?この荷物は全然重くないんです」


今は8月。災害レベルの暑さと言われていて、夜も気温が下がらないとニュースでやってたばかり。今も、私もあなたも、汗だくだ。


「でも…、誰か来られますか?お迎えとか…」


周りを見ても、付き添い人らしき人はいない。今は夜の、22時過ぎ。


「もうすぐ来るみたいで、今待ってるんです」


よかった。迎えに来る人がいることに、ほっとした。

それでもやっぱり心配で、少し渋っていると。


「大丈夫ですよ、…優しいんですね」



あの後、「大丈夫」と言われた私は、妊婦さんと別れた。やっぱりもう少し強気で「一緒にいる」と言えばよかったと後悔を残して。


妊婦さんは何度も、優しいと言ってくれた。こんな私を。


大きい荷物を持ってフーフー言ってる老人の横を素通りした私を。

白杖付いてる人が物にぶつかりそうになっているのを見ていることしかできなかった私を。


いつも後悔してた。なんで動けないのか、どうして立ち去るのか。


妊婦さんに声をかけたのは、その後悔の積み重ねだ。色んな人を見過ごしてきた、結果だ。 


そんなのは「優しさ」なんかじゃないのに、それでもやさしく笑いながら「優しいんですね」と言ってくれた。


こんな私が報われたからなのか、恥ずかしさからなのか、気付いたら私は一人で泣いていた。よく分からないけど。



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