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ふみきりのカンくん

作者: マリーミチコ

ボクは駅のすぐ近くにあるふみきりのカンくんだ。

毎日電車が通るたびに

”カンカンカン”

と音を鳴らして遮断機を下ろすんだ。

人や自転車や車がふみきり内に入ってこないようにするんだ。

安全を守るためでもあるんだけど、ボクは電車の通過待ちをする人やふみきりを渡る人の観察をして

少しばかり共感を覚えたりするんだ。


あっ、まもなく電車が駅のホームに入ってくる。


”カンカンカン”


ボクは遮断機をおろした。

車に乗っている中年の男性。

朝から浮かない顔だな。

顔をパチパチ両手でたたいてる。

眠そうだから眠気覚ましにたたいているのかな。


おっと、こっちは自転車の高校生だ。

イヤホンして音楽聞いているのか。

ったく、ボクの音が聞こえなかったらどうするんだ。

危ないよー。


おや?あっちには、はにかみながらしゃべっている中学生の男の子と女の子がいる。

どんな楽しい会話をしているのかな?

みんなもう少し待ってて。


ボクは電車が通りすぎたあと、遮断機を上げた。

行き交う車やバイク、自転車に歩行者。

みんな、ふみきりの手前で一旦停止して安全確認をするんだよ。


また次の電車がやってくる。


”カンカンカン”


ボクは遮断機を下ろした。

車に乗っている若い女性。

あれ?泣いているみたいだ。

涙を流している。

泣ける曲でも聞いているのかな。

それとも悲しいことがあったのだろうか。

どうかこの女性に楽しいことがありますように。


ボクは電車が通り過ぎた後、遮断機を上げた。

するとベビーカーに赤ちゃんを乗せたお母さんが

ふみきりを渡ろうとやってきた。

よし、次の電車はまだこない。

ゆっくり渡ってね。

ん?お母さんがふみきりの半分ぐらい渡ったところで立ち往生している。

あっ!ベビーカーの車輪がレールに挟まっているじゃないか。

お母さんが車輪を上げようとしているが

なかなかうまくいかない。

早く、早く、早く・・


もうすぐ次の電車がきちゃうよ。

ボクは電車が駅のホームに入ってくるのが見えた。

もう鳴らさなきゃダメだ。


”カンカンカン”


遮断機を下ろそうとしたその時、二人の男子高校生がお母さんの元へ急ぎ、ベビーカーをひょいと持ち上げた。

レールに挟まっていた車輪も上がり、高校生達とお母さん、赤ちゃんも無事ふみきりを渡りきることができ、危機一髪。

一時はどうなることかと思ったけど、事無きを得た。

よかったよかった。


ボクはふみきりを渡るみんなを安全に守らなければならない。

同時に電車の運転士さんにも安心してふみきり内を走ってもらうんだ。


さて、今日はどんな人達が、どんなことを思いながらふみきりを渡っていくのだろう。


普段ふみきりを車で渡ることがあり、遮断機が下りていると”カンカンカン”と二つの赤いランプが交互に点滅しているのを見ると、赤い目のように思えてしまいます(笑)

そんなふみきり側を擬人化したような短編ストーリーにしました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 初めて、感想を書かせてもらいます。 踏切の立場になって、踏切の目線でみた作品 なんですねぇ~(笑) 毎日の日常生活の中にある事で、ほのぼのする ところや、ハラハラするところも見られている…
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