私が『うさこ』と呼ばれる理由
名字が「いなば」だから、因幡のシロウサギ➡️うさこ……。
詳しくはシリーズ一作目をご覧ください(*´-`)
私が初めて好きになった相手は、職場の上司。
父親とあまり変わらない年齢だけど、そんなことはまったく気にならなかった。
優しくて、思いやりが深くて、今までこんな人に会ったことがない。
だから、本気だったの。
私が警察官を拝命したのは、今から5年前。
警察学校を出たあと、3年間の交番勤務を終え、その後所轄の刑事課にうつって刑事デビュー。
周りからは羨ましがられた。
でも、実情は。
パワハラにセクハラ。
直属の上司ったら、二言目には『女のくせに』『女に何がわかる』だもの。
それでも辞めずに頑張ってこれたのは、支えてくれた仲間がいたから。
今でも感謝している。
そんなある時。
管轄区内で殺人事件が起きた。
初めての捜査本部、初めての聞き込み。
すごく緊張したし、あまりにも張り切りすぎた。
そんな私をなだめ、励ましつつ、刑事として本当に大切なことを教えてくれたのが……私の初恋の相手、高岡聡介警部。
初めは、何とも思わなかった。
珍しいタイプの刑事だとは思っていたけど。
でもその後、高岡警部の直下で働くことになってわかった。
この人は、他に類を見ない素敵な人なんだって。
仕事熱心で、部下みんなを心から大切に思ってくれている。
ちなみに。
グレーだけど髪の毛は健在だし、お腹も全然出ていない。
こんな素敵な人だし、年齢的にも家庭持ちだよね……そう思っていた。でも実は。
事実上のバツイチ、長い間独身を貫いていると聞いた時、私の心も決まった。
迷わずアタック!!
なんだけど……。
次から次へと事件は起きるわ、仕事は忙しいわ。
もう、そんな暇なくて。
気がつけば時間だけが経過していた。
そんな中。勇気を出して一歩踏み込もう、と思ったのは、人事異動の噂がきっかけだった。
所轄の刑事課に欠員が出たせいで、どうやら私にお鉢が回ってくるらしい。
しかも、場所は県の一番東側。
もしその話が本当なら、今までみたいに毎日会えなくなってしまう!!
今しかない。
自分で自分の背中を押して、私は思い切って高岡警部に自分に気持ちを伝えることにした。
結果は……。
惨敗。
そもそも、本気にすらしてもらえなかった。
『こんなオジさんをからかうものじゃない』
そう言われるのは想定内で、その対策もしていた……はずだった。
挙げ句、人事異動の話は別の人に決まってしまって、恥ずかしいやら気まずいやら、しばらくはまともに顔を合わせることもできなかった。
向こうも、そのまわりの人達も気を使ってくれて、余計にいたたまれなかった。
初恋は上手くいかないって、本当だったんだ。
仕事、変えようかな。
ここにいちゃいけない気がする……。
その後、1ヶ月ほど過ぎた頃か。
学生時代の友人に誘われ、初めての婚活パーティーに出席したのは。
けどなんだか、比べたら悪いけど、高岡警部ほどの人はいない。
同年代の若い男性が、みんな同じ顔に見えてしまう。でも。
親もうるさいし、仕方なく何度かパーティーには出席した。
何一つ、身にならなかったけどね。
そんな時だった。