2「 素敵な名前をつけてあげてね。」
・・・・・・
影島は少し痛々しく感じたが、聞き返した。
「ごめん、ちょっといいかい?私の名前は・・・・・・」
「汝、影島と言う者だな。さっきの話は聞かせてもらった。」
「そうか・・・・・・それじゃあ君の能力を教えてくれないかい?」
「我が能力はヒートチェンジャー。
熱を放出したり、吸収することができる。
先程は氷を溶かす為に熱を氷へ放出し、
溶けきってぬるくなった飲み物を冷やしていたのだよ。
失礼な話だが、氷が邪魔だったものでね。」
竜介だった人物はため息をついて話した。
「皆の者、聞いて欲しい。
我は竜介と言う者とどう付き合えばいいのだろうか。
我の宿主、竜介は我の存在に気づいている。
しかし、竜介は我の存在を毛嫌いしている。
せめて、竜介と情報をやり取りしたいのだが・・・・・・
そのためにはどうやって入れ替わるのか、知りたいのだ。
どうすればいいのか教えてくれ。」
影島がそれを聞くと、ミアの方を見た。
ミアは影島に向かって任せてと言うように頷いた。
「ミヤ・・・・・・お願い・・・・・・」
そう言うと、ミアは瞳を閉じ、
しばらくしてゆっくりと瞳を開けた。
その姿を見て、竜介だった人物が話しかけた。
「汝、我と同じ存在だな・・・・・・。」
「ええ、そうよ。あたしの名前はミヤ。
あなたと同じ、特殊な能力を持つ人格、[サイクター]よ。」
その声のトーンはさっきのミアよりも若干低めだった。
青黒い雷に打たれた者は、超能力のような特殊な能力、
[サイクター能力]を身につけることができる。
しかし、本人の人格は能力を使うことはできない。
[サイクター能力]を身につけると共に人格に解離現象・・・・・・
つまりもうひとつの人格が生まれ、その人格が能力を使うことができる。
能力を使える人格は[サイクター]と呼ばれている。
「・・・・・・たいしたことないわ。
あなたは丸い物を長時間見ると人格が切り替わるようね。」
「汝、我が人格の変更の方法がわかるのか・・・・・・!?」
横から尚志が割り込んできた。
「ミアちゃんはな、他人のサイクターを見抜くことができるんだぜ!」
「山田さん、ミアじゃなくてミヤよ。」
ミヤは尚志の言葉に訂正をかけた後、竜介だった人物に話しかけた。
「いい?あなたは丸い物を長時間見ると人格が変わるの。
狼男のようにね。
あなたが竜介さんに戻りたかったら丸い物を見続けたらいいわ。
でも、それだけじゃあ竜介さんとの情報交換が出来ないから、
メモ用紙などで書いて置くといいわ。
あと、ガラスのコップは急に冷やしたり暖めたりすると割れちゃうから、
あまりそういうのはしないほうがいいわよ。」
「すまない・・・・・・、しかし、丸い物など・・・・・・」
「丸い物ならここにあるじゃないか。」
影島はメロンソーダの入ったコップを指さした。
そのコップは上から見ると丸く見える。
恐らく竜介は、うつむいているままコップを覗きこんだ為に、
いつの間にか人格が変わったのだろう。
竜介だった人物はコップを上から覗きこんだ。
尚志はミヤに質問した。
「これってさ、丸いコップで飲んだらいちいち変わるんじゃないか?」
「いえ、ずっとジロジロ見ない限り大丈夫よ。」
しばらくして竜介は我に帰って、辺りを見渡した。
尚志は竜介の人格が変わった間のことを話した。
「・・・・・・だから、もう心配しなくてもいいんだ。
そのもう一人の人格と仲良くすればいい。」
「ええぇ・・・・・・」
「どうしたんだ、竜介?」
「だって・・・・・・気がつくとみんな変な顔するんだもん・・・・・・。」
影島は竜介の目を見て言った。
「大丈夫、最初はそう見られると思うけど、
慣れたらきっと大丈夫だよ。」
竜介は聞き返した。
「・・・・・・本当?」
「本当だよ。竜介くん。」
そばにいたミヤ・・・・・・いや、ミアが話しかけた。
「私ね、小学校に入ったばかりの時、なかなか友達ができなかったの。
だけど、学校で過ごす内に自然と増えて行った。
もちろん、小学校と中学生は違うよ。
でも、ネガティブになっても仕方ないと思うの。
君のサイクターも、君の事を気遣ってくれるから、
だから、一緒に学校に連れて行ってあげて。
それから、素敵な名前をつけてあげてね。」
そういって、ミアは微笑んだ。
「・・・・・・うん。」
竜介はそう言って、こっくりと頷いた。
「ミアちゃんが来てくれて、本当に助かったよ。」
山田親子が帰った後、影島はミアに話しかけた。
「いいえ、私は何もしてないですよ。
全部ミヤのおかげです。」
ミアは微笑んで言った。
「しかし・・・・・・自覚のあるサイクターでよかった・・・・・・。」
影島は呟いた。
青黒い雷に打たれた者は、その時の記憶がない。
そのため、自分かサイクターの持ち主と気づきにくく、
サイクターによるトラブルは多いのだった。
「そういえば、ミアちゃんがミヤちゃんと話ができるようになったのは
どのくらいの時?」
「確か・・・・・・小5の頃からミヤの声が聞こえるようになって・・・・・・、
普通に会話できるようになったのは中学生の時です。」
サイクターと宿主が脳内で会話できるようになるのは時間がかかる。
その時間には個人差があった。
「だけど、メモ張だけでも十分情報交換出来ますし、
特に不自由もしなかったですよ。」
「そういえば、生まれた時から一緒だもんね。」
「ふふっ・・・・・・そうです・・・・・・」
ミアは少し恥ずかしそうに笑った。
サイクターは青黒い雷に打たれて生まれる者が多いが、
宿主と共に生まれるサイクターも数少なからずいる。
ミアのサイクター、ミヤはそんな者達の数少ない一人だ。
ミヤは宿主のミアと共に生まれ、共に育った。
二人はいわば姉妹のような関係だ。
(・・・・・・ミア・・・・・・)
(・・・・・・ミヤ?どうしたの?)
(立ち話している時間、ないんじゃないの?)
(時間?・・・・・・ああ!!)
ミアは時計を見て叫んだ。
「いけない!!遅刻しちゃう!!」
ミアは夜間学校に遅れない為に慌てて店内を去った。
(ミアちゃん・・・・・・ミヤちゃん・・・・・・行ってらっしゃい。)
影島は心の中で呟いた。
いかがでしたか?
今回は説明回みたいな感じです。
相変わらずの不定期投稿ですが、
忘れた頃に見てください。




