1「 僕に近づかないで」
こんにちは、オロボ46です。
前にも多重人格と特殊能力を合わせた世界観の話を書きましたが、
設定を複雑にしすぎて続けづらくなりました。
なので今回は設定を変えて1から仕切りなおします。
それでは、どうぞ。
5/13(日)
青い雷を青黒い雷に変更しました。
後編も同様です。
世界は今、終末を迎えていた。
巨大隕石が地球に向かっていたのだった。
地球で暮らす人々はパニックに陥った。
諦めがついて、静かに終わりを迎えようとする者もいれば、
どうせ最後だからと開き直り、犯罪行為に走る者もいた。
ところが、隕石が近づいた時、
空から無数の青い雷が人々に向かって落ちた。
青黒い雷に打たれた人間はそのまま気を失ったが、命の別状はなかった。
そして、青い雷に合わせるかの様に、隕石は消えてしまった・・・・・・
それから30年後の日本、
どこにでもある、極普通の町。
交差点では、人々が自分の帰る場所へ向かってあるいていた。
その人ごみの中、地味な格好を着ている男が、
中学生ぐらいの少年を連れて、ある場所に向かっていた。
「竜介、久しぶりの外の空気はうまいだろう?」
男は少年に話しかけた。しかし、少年は答えたなかった。
「もうそろそろ時間かな。」
青年は時計を確認していた。
その青年は背が高く、少し痩せており、
のっぽという言葉が合う体格だった。
カランカラーン
扉から誰かが入って来たことを知らせるベルがなった。
「・・・・・・あれ?ミアちゃん?忘れ物?」
入って来たのは高校生ぐらいの少女だった。
顔は少しハーフの顔立ちをしていた。
「影島さん、すみません・・・・・・
忘れ物しちゃって・・・・・・。」
ミアはそう言って、部屋の奥へと向かった。
影島 俊はここ、喫茶店[青脳]の店主である。
母親が始めたこの喫茶店を切り盛りしている。
常連客はそこそこいて、
売り上げも普通に切り盛りするのに十分な額だった。
佐々木 ミアは夜間学校に通う高校生で、
ある出来事がきっかけでここで働いている。
そして今の時間はもう閉店だった。
影島は、閉店後にある人物とあう約束していた。
カランカラーン
再びベルがなり、入り口の扉が空いた。
「お待たせ!影島!!」
「山田、遅いよ・・・・・・」
入って来たのは男と少年だった。
男の名前は山田 尚志。
影島の古くからの友人であり、[青脳]の常連客である。
そしてその内気そうな息子、山田 竜介は
数日前から学校に行かずに部屋の中で引きこもっていた。
そこで尚志は影島に頼んで、閉店した後に相談に来たのだった。
「君が竜介くん?」
影島は竜介に名前を確認した。
竜介は影島の言葉を無視するように言った。
「・・・・・・僕に近づかないで。」
尚志が説明する。
「3日前からこんな調子だ。
恐らく、[あれ]じゃないかと思うんだが・・・・・・」
「[あれ]か・・・・・・わかった。
立ち話もなんだから、カウンターに座りなよ。」
影島は、二人にストレートティーとメロンソーダを出した。
「うーん、やっぱり紅茶はストレートが好きだな・・・・・・。」
尚志はそう呟きながら紅茶を飲んだ。
一方、竜介はじっとメロンソーダの中の氷を見ていた。
尚志は説明を始めた。
「竜介が引きこもる5日前、俺が仕事から帰ってくると、
女房が心配そうな顔で言ったんだ。
あなた、竜介が帰って来ないんです、てね。
あいつは帰宅部だから、帰りは早いはずなんだ。
俺は最初は心配はしていなかった。しかし8、9時にもなるとさすがに心配になってね、
電話しようかと考えた時に帰ってきたんだ。
それから3日後、竜介は突然学校に行かなくなり、部屋に引きこもったんだ。」
影島は答えた。
「ということは竜介くんの帰りが遅くなったのは・・・・・・
今日から8日前・・・・・・
どう見ても[あれ]だね・・・・・・」
「ああ、ニュースによれば8日前に[あれ]が落ちたと観測されているらしい。」
二人が言っている[あれ]とは、
30年前から時折各地で起きている青黒い雷のことだ。
青い雷は普通の雷とは違い、音がなく、人間に向かって落ちる。
打たれた人間は気を失うものの、命に別状はない。
しかし、その雷に打たれると、体にある変化がおきるのだが・・・・・・
「すみません・・・・・・スマホ忘れちゃって・・・・・・
あれ?山田さん?」
忘れ物を取りに来たミアが部屋の奥から現れた。
「よっ!ミアちゃん、
ちょっとこいつのことでな。」
尚志は竜介を指差して言った。
竜介は先程と同じ格好のままメロンソーダを見ていた。
氷はもう溶けていた。
ミアは心配そうに竜介を見ていた。
「ねえ・・・・・・大丈夫?」
「おい、どうしたんだ?竜介・・・・・・!!?」
尚志は驚いて椅子から落ちた。
「ど、どうなっているんだ!?」
ミアが竜介に近寄って言った。
「ひゃ!?冷たい・・・・・・?」
影島も竜介に近づいた。
竜介の周りは冷房の聞いた部屋の様に冷たかった。
「これが・・・・・・竜介くんの[サイクター能力]か・・・・・・」
影島が呟くとそれに答えるように竜介は顔を上げた。
内気な雰囲気はもう漂わせてなかった。
まるで別人の様に・・・・・・
いや、もう彼は別人であった。
「皆の者、驚かせてすまない。
我は熱を操れし者・・・・・・名前はまだない。」
後半へ続く