イケメン妖怪ハンターリックの冒険リターンズ3〜遊魔が不倫したにゃん!の巻〜
リックは古今無双のスケべな妖怪ハンターです。
いつものように美人幼妻の遊魔と共に妖怪退治の旅をしています。
そんなある日、二人がある村に着いた時です。村の掲示板に賞金首の人相書きが貼られていました。
決して、某○ちゃんねるではありません。
況してや、斉藤○六さんも関係ありません。
「おお、遊魔、すごい賞金首にゃん! 金五千枚だにゃん!」
金と女には目がないリックは、両目が円記号になる昭和な演出で喜びました。
「ぼ、僕は遊魔一筋だにゃん! デタラメを言わないで欲しいにゃん!」
真実を語った地の文に理不尽に切れるリックです。
「そうなんですかあ」
遊魔は笑顔全開でゆっくりとした口調で応じました。
「あ」
しかし、リックは賞金首の人相書きを見て、途端にやる気がなくなりました。
賞金首がイケメンだったからです。
(男を捕まえても、何の得もないにゃん。やめとくにゃん)
金よりは女のリックは、すぐに興味を失いました。
「お前様、今、手続きをしてきましたよ」
ところが、事務処理が光の速さの遊魔が、笑顔全開で告げました。
「にゃにー!?」
もう少しで餅つきを始めてしまいそうになるリックです。
「賞金首の名はケスウヨリ。何人もの女性を誑かして、夫婦になると嘘を吐き、お金を騙し取っていたようです」
遊魔の説明を聞き、血が出そうなくらい耳が痛くなるリックです。
(どこかで聞いた事がある名前にゃん)
ふとそんな事を思うリックです。そして、
「遊魔、せっかく手続きしてもらって悪いにゃんけど、気が進まないにゃん。キャンセルして欲しいにゃん」
気まずそうに言いましたが、
「キャンセル料は金一万枚だそうです」
遊魔が笑顔全開で告げたので、危うく顔芸の土下座をしそうになるリックです。
(倍返しって酷過ぎるにゃん)
「まだ続きがありますよ、お前様。そのケスウヨリという男は、実は魔物で、クッサ・カンベーという西洋の悪魔だそうです」
遊魔が言うと、リックの顔つきが変わりました。
「クッサ・カンベー?」
スケベ顔を封印して、真顔になるリックです。
(その名を聞いて、思い出したにゃん。どれ程の深窓の令嬢も落としてしまう史上最悪の女たらしにゃん)
リックは、ずっと以前からクッサ・カンベーを探していました。
何故なら、その悪魔に弟子入りして、女の子の落とし方を教わろうと思っていたからです。
「違うにゃん! 断じて違うにゃん! やっつけてやろうと思っていたんだにゃん!」
心にもない事を言って反論するリックです。
「そんな事ないにゃん! 僕は女の子を騙す奴は許せないんだにゃん! しかも、クッサ・カンベーに捨てられて、何人もの女の子がシングルマザーになっているんだにゃん!」
自分は義憤に駆られているのだと主張するリックですが、要するにクッサ・カンベーがいると、自分が口説きたい女の子の絶対数が激減してしまうからなのは内緒にしてあげようかなと思う地の文です。
「内緒にして欲しいにゃん!」
何でも結局はバラしてしまう地の文に血の涙を流して切れるリックです。
「お前様、行きましょう。この先にクッサ・カンベーの城があるそうです」
遊魔が笑顔全開で言い添えました。
「そうにゃんですか」
リックは引きつり全開で応じました。
リックと遊魔は、村の奥にある森のそのまた奥にある山へと向かいました。
その山の頂上にクッサ・カンベーの城があるのです。
「遠いにゃん」
あまりにも城までの距離があるので、うんざりしてしまうリックです。
「大丈夫です、お前様。お爺ちゃんにいいものを借りました」
遊魔が笑顔全開で言ったので、
(まさか、また鴻均道人のジイさんに大型きんと雲を借りたのかにゃん?)
嫌な予感がして、嫌な汗が出てくるリックです。
鴻均道人とは、仙人界の頂点に立つ者ですが、リックも引くくらいスケべなジイさんなのです。
「誰が○沢富○男だ!」
どこかで具体的な不倫常習犯の名前を出して切れる鴻均道人です。
「遊魔がお爺ちゃんの面倒を見るのを条件に只で貸してくれましたよ」
純真無垢が服を着て歩いているような遊魔は、道人の悪巧みに気づいていません。
(また仕事がすんだらとっとと逃げるにゃん)
リックはいつも通りです。
そして、二人は道人の大型きんと雲に乗り、森を超えて山の頂上へと向かいました。
道中、何事もなく山頂まで辿り着きました。
「早かったですね、お前様」
遊魔が笑顔全開で言いました。
「とっととクッサ・カンベーを退治して、金五千枚をもらうにゃん、遊魔」
何故か鼻の下を伸ばして言うリックです。
(クッサ・カンベーは、城に何人も女の子を住ませているって聞いたにゃん。助け出せば、感謝の印にあんな事やそんな事をしてくれるはずにゃん)
獲らぬ狸の皮算用だと思う地の文です。
「はい、お前様」
リックのスケベ心を知らない遊魔は、笑顔全開で応じました。
二人は周囲を見渡して、警戒しながら城の門を押し開けて中に入りましたが、襲いかかってくる妖怪や悪魔はいません。
(どういう事にゃん? 誰もいないのかにゃん?)
リックが不思議に思っていると、
「ようこそ、我が城へ」
そこへ人相書きのままの顔の富○郎さんが現れました。
「違いますよ。僕はそんな顔ではありません」
全身白のスパンコールを付けまくった服を着た長身のイケメンが地の文の描写を完全否定しました。
「出たにゃんね、クッサ・カンベー! 僕が退治してやるにゃん!」
リックはビシッと右手の人差し指でクッサ・カンベーを差しました。するとクッサ・カンベーはフッと笑って、
「そこの美しいお嬢さん。僕の妻になってくれませんか?」
強烈な流し目を放ってきました。
「遊魔は僕の妻にゃん! そんなヘンテコな術にはかからないにゃん!」
リックがドヤ顔で言い返しましたが、
「はい」
遊魔はすぐにクッサ・カンベーの術にかかり、うっとりとした顔で彼に近づいて行きました。
「ゆ、遊魔!」
ショックのあまり、血の涙を流すリックです。今までの報いを受けているのだと思う地の文です。
「クッサ様」
遊魔は嬉しそうにクッサ・カンベーに抱きつきました。
「はわわー!」
その光景を目の当たりにして、リックは滝のように血の涙を流しました。
「美しい人、お名前を教えてください」
クッサ・カンベーは遊魔の耳元で言いました。
「遊魔です」
トロンとした瞳で、遊魔はクッサ・カンベーを見上げました。
「素敵なお名前ですね、遊魔さん。是非、僕の子供を産んでください」
クッサ・カンベーは遊魔の顎をクイッと上げて言いました。
「はい。何人でもお産みします」
遊魔は笑顔全開で応じました。
「ダメにゃん、遊魔! 遊魔は僕の妻にゃん! そんな悪魔の子供を産んじゃダメにゃん!」
リックはありったけの大声で叫びました。
「ありがとう、遊魔さん」
クッサ・カンベーは妖艶な笑みを浮かべ、遊魔と熱烈な口づけを交わしました。
「ムキャー!」
それを見たリックは、嫉妬の炎を燃え上がらせました。
「許さないにゃん、クッサ・カンベー! 僕の妖術で、消し炭にしてやるにゃん!」
リックは得意の紅蓮の炎を出して、クッサ・カンベーに放ちました。
「リックさん、炎はこういうものですよ」
クッサ・カンベーはニヤリとして、リックの紅蓮の炎の当社比五百倍の業火を放ちました。
「にゃにゃーん!」
リックの紅蓮の炎をクッサ・カンベーの業火が飲み込み、そのままリックに襲いかかりました。
そして、リックは消し炭になり、世の中に平和が訪れたのでした。
めでたし、めでたし。
投稿するボタンをポチッと押す地の文です。
「違うにゃん! この物語のヒーローは僕にゃん! 僕が死んだら、この物語はおしまいになってしまうにゃん!」
勝手にストーリーを改竄した地の文に切れるリックです。
別におしまいになっても誰も困らないと思う地の文です。
「ダメにゃん! そんな事をしたら、僕の一千万人のファンが黙っていないにゃん!」
更に妄想を暴走させて切れるリックです。
まあ、札幌のあるおじさんが激辛感想を送ってくるかもしれないので、お話を進めようと思う地の文です。
業火に包まれながらも、得意の幻術で身を守ったリックは、大型きんと雲に飛び乗り、その場から一時撤退しました。
(悪魔には勝てないにゃん。どうすればいいにゃん?)
すると、
「命があるじゃないか」
どこからともなく、某艦長の恐ろしい声が聞こえてきました。
「嫌にゃん! 命は捨てたくないにゃん!」
では、遊魔の事は過去の楽しかった思い出として諦めて欲しいと思う地の文です。
「それも嫌にゃん!」
滅茶苦茶な事を言い放つリックです。
「あ、そうにゃん!」
リックはない知恵を絞って、ある事を思いつきました。
(道人のジイさんに助けてもらうにゃん。あのジイさんも、遊魔がクッサ・カンベーに盗られてしまったら、困るはずにゃん)
相変わらず、悪知恵だけはよく働くと思う地の文です。
リックは、大型きんと雲で鴻均道人が住む切り立った山へと向かいました。
そして、道人に事情を説明しました。
「何じゃと!? 遊魔に自分の子供を産ませるじゃと!?」
鴻均道人は驚愕しました。
「ですから、道人様のお力をお借りして、クッサ・カンベーを退治して、遊魔を助け出したいのです」
リックは愛想笑いをして言いました。
「よし、わかった。わしがクッサ・カンベーを退治してやろう」
道人が胸を張って言いました。
「よろしくお願いしますにゃん、道人様」
リックが言うと、道人は苦笑いをして、
「と言いたいところじゃが、相手が悪い。流石のわしも、あいつには敵わぬ」
唖然とするリックです。
「道人様が敵わないなんて、そんなにあいつは強いのですか?」
リックは納得がいかないので、道人を問い詰めました。すると道人は、
「奴は強くはない。しかし、奴は何百人もの女を囲っておる。その女達が一斉に襲いかかってくるのだぞ。どうすることもできんではないか」
身震いして言いました。リックは恍惚とした表情で、
(桃源郷のような光景にゃん)
道人とは違う光景を描いているスケベです。
「しかし、お前なら勝てるぞ、猫。お前はわしが唯一認めるドスケベじゃ。必ず、遊魔ちゃんを助け出してくれ」
逆に道人に懇願されてしまうリックです。
(ダメにゃん。自分で何とかするしかないにゃん)
リックは諦めて、もう一度クッサ・カンベーの城に向かいました。
(今まで、一回も使った事がない術で対抗するにゃん。この術だけは使いたくなかったにゃん)
リックはギュッと右拳を握りしめました。
どんな秘術なのかとワクワクする地の文です。
大型きんと雲はクッサ・カンベーの城の上空に着きました。
「今度こそ、退治してやるにゃん、クッサ・カンベー!」
リックはきんと雲を城の中庭に着陸させて飛び降りました。
「しつこいですね、リックさん。貴方程度の妖怪は、私が相手をする事もないでしょう」
クッサ・カンベーが言うと、ゾロゾロと美しい女性達が現れました。皆、目が逝ってしまっています。
「リックさんを骨抜きにしておあげなさい」
クッサ・カンベーが命じると、女性達は無言のままリックに向かって駆け出しました。
「来たにゃんね! 待っていたにゃん!」
リックは身体の毛をむしり取ると、フウッと息を吹きかけました。するとその毛一本一本がリックに変化し、女性達に襲いかかりました。
分身したリックは本物と同じようにスケベ丸出して、女性達に抱きつきました。
「何と!」
それを見たクッサ・カンベーは目を見開きました。
(この術はあのバカ猿の術にゃん! でも、背に腹は変えられないにゃん)
大嫌いな孫左京という石猿の妖術なので、使いたくなかったリックです。
「あとはお前だけにゃん、クッサ・カンベー!」
リックはクッサ・カンベーに駆け寄りました。
「そうはいきませんよ、リックさん。貴方の相手はこの方がします」
そこに現れたのは、遊魔でした。遊魔も目が逝ってしまっています。
「遊魔!」
リックは悲しみのあまり、涙ぐみました。
「はあ!」
しかし、遊魔は容赦なく真空飛び膝蹴りやかかと落としを繰り出して来ます。
(気のせいか、遊魔の技がいつもよりキレキレにゃん)
リックはかろうじて攻撃を避けながら思いました。
それは、遊魔が本気で貴方を仕留めようと思っているからだと断言する地の文です。
「そんなはずないにゃん! 遊魔は操られているだけにゃん!」
自分の悪行を全てなかった事にしようとするリックが、理不尽に地の文に切れました。
「はあ!」
再び、遊魔の真空飛び膝蹴りがリックに向かいました。
「遊魔、愛してるにゃん!」
リックはそれをかわして、遊魔を抱きしめました。
「遊魔、正気になって欲しいにゃん」
リックは遊魔に無理やり口づけをしました。それも表現をはばかるような激しくて濃厚なものです。
「お前様、遊魔は嬉しいですう」
遊魔が正気に戻りました。これぞご都合主義、いえ、愛のなせる業だと思う地の文です。
「おのれえ!」
クッサ・カンベーの顔が醜く歪みました。
「遂に正体を現したにゃんね、クッサ・カンベー。早く、その男から離れるにゃん」
リックは遊魔をかばうようにして立ち、数十秒しか保たない凛々しい顔で言いました。
「そこまで見破っていたか。だが、この俺様は負けぬ! 必ずリベンジに来るぞ!」
クッサ・カンベーの本体が、ヌルッと現れました。そのせいで、取り憑かれていた男が顔面から倒れました。
「もうお前の顔は見たくないにゃん。地獄に落ちるにゃん」
リックの両手から紅蓮の炎が噴き出しました。
「効かぬ!」
クッサ・カンベーは高笑いをして、業火を放ちました。
「効かないのはお前の方にゃん!」
よく見ると、分身したリック達も一斉に紅蓮の炎を放っていました。
「うへえ!」
炎の塊をいくつも喰らい、悪魔クッサ・カンベーは燃え尽きてしまいました。
「お前様!」
遊魔が泣きながらリックに抱きつきました。
「遊魔」
凛々しい顔の限界が来てしまったリックは、スケベな顔で遊魔を抱きしめました。
こうして、クッサ・カンベーは退治され、監禁されていた女性達は救い出されました。
「ところで、こいつは誰にゃん?」
リックは倒れている男を見て呟きました。でも、ツイッターではないので、拡散はされません。
「ああ、私は一体?」
起き上がったのは、元の通りのイケメンです。
「ケスウヨリ様、大事ありませぬか?」
助け出された女性達が、男に駆け寄りました。
「え?」
リックは仰天してしまいました。
ケスウヨリは村を治める領主で、監禁されていたのは彼の後宮に住んでいる側室達でした。
事情を知ったケスウヨリはリックと遊魔に礼を言いました。
「おもてなしを致したいので、ごゆっくりしてください」
ケスウヨリが流し目で告げたので、
「遠慮しますにゃん!」
リックは遊魔を引きずるようにして逃げ去りました。
「謙虚なお方達だ」
何も知らないケスウヨリは微笑んで見送りました。
めでたし、めでたし。