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誰かの夢

今回は短いです。


夢を見た。


儚く、そして朧げな夢。


大切な兄弟と、大切な母の夢。


私は真っ白な空間に居た。

何処までも白くて何もない、真っ白な世界。

そこで私は母と兄妹と共に暮らしていた。


母は私達兄妹に言った。

「お前達は神の元へ行かなければならない」と。

私達は母の言葉に従い、それぞれが神の元へと向かう事にした。

そんな時、兄妹の内の一人が私の元にやってきた。


「やぁ■■■、君はどうするんだい?」


どうするとは何をだろうか?。

私は彼に聞き返す。


「何って…神の元に行く事だよ、君は嫌じゃないのかい?」


嫌とは何を言っているのだろうか?。

母が私達に行けと言ったのだ、それを拒否する権利は私達にはない。


「そうだね、確かにそうかも知れない…僕たちは所詮それだけの存在だ…だけど――」


そう言って、その一人は私に向かって両手を伸ばし、私の頭に触れる。


「僕は君に■■になって欲しくない」


その瞬間視界が歪み、酷い吐き気に襲われる。


「ごめ――だけど―――僕にできる――」


耳鳴りがして、目の前の彼の言葉が頭に入らない。

喉が震え、声が出せない。


何故?何故こんな事を?。

そんな疑問を浮かべながら私は彼に向かって右手を伸ばし――











そこで俺は夢から覚めた。


「あ…ぐぅぅ…」


酷い頭痛と耳鳴りに襲われ視界が歪む。

まるで先ほど見た夢が続いているかのような錯覚を覚えたが、それもすぐに収まる。


(今の夢は…)


普段、俺が見る夢と言えば自身の過去の出来事に関する物ばかりだった。

しかし、今回見た夢はそうではない。

俺に兄妹なんて居なかったし、あんな真っ白な空間も記憶にはない。

そもそも、あの時の夢の主は俺ではなかった。


あの時俺は誰かの視点であの夢を見ていた。

視点の低さから恐らく夢の主は子供だったと思う。


(あの夢に出てきた子供たちの恰好、ティアと同じ物だった…まさか)


俺は振り返り、ベッドで寝息を立てているティアに視線を向ける。

相変わらずティアの右手は俺の袖をギュっと握っており、心なしか俺が寝る前よりも強く握られている気がする。


あの夢はティアの夢だったのだろうか?。

ティアが覚えている数少ない記憶に関する夢、でも…何故だろう。

状況だけ見ればティアに関する記憶だと言うのは間違いないのだろうが、あれがティアの記憶だとは俺には思えなかった。


そもそも何故俺はこんな夢を見たのだろうか?。

分からない…そもそも、普段俺が見ている過去の夢でさえ、何故見ているのか分かっていないのだ。

だがもし、この夢が俺が普段見ている夢と同種の物であるのなら俺の身の回りで何かが起きる可能性は高い。


俺がそんな事を考えていると、アリスが起きたのか声を掛けてくる。


『テオ?起きてるのか』

「あぁ、アリスか。悪い起こしたか?」

『気にするな、元々寝る必要がない身体だ、暇だから意識を落としているだけに過ぎん…それよりも何かあったのか?』

「ちょっと…変な夢を見てな」

『夢?こんな短期間にまた夢を見たのか?』

「いや、それが普段見てる夢とはなんか違って…なんつーか自分の夢じゃないっていうか、他の誰かの夢って感じなんだよ」


そう言って俺はアリスに見た夢の内容をそのまま伝えた。


『なるほど…話を聞く限りではティアの記憶に関する夢のように感じたが…テオはそうじゃないって思うんだな?』

「あぁ、何でかは分からねぇけど、あれはティアじゃないって感じたんだ」

『私はその夢を見た訳じゃないから何も言えないが、夢を見た本人がそう感じたならそうなのかも知れないな』


アリスはそういうと少しの間黙っていたが、何か思う事があるのか次のような事を言った。


『テオ、ティアの事を気にかけてやってくれ』

「なんだよ急に…一度首を突っ込んじまったんだ、最後まで面倒は見るさ」

『そうか…済まないな』

「なんでアリスが謝んだよ、ほら俺も寝直すからアリスも寝ちまえ」


そう言って俺は再び瞼を閉じ、眠りに落ちる。

眠りに落ちる直前、俺はアリスの声を聞いた気がしたが、何を言っていたかを聞き取る事が出来なかった。

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