表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
5章 王都一武術大会
91/444

5-6 (仮) 扇風機

朝食を終えた後、俺はウェンディと共に隼人がこの館の錬金室と定めた部屋に行く事にした。

シロは朝から鍛錬をしているレンゲたちに合流し、鍛錬に付き合うとのこと。

良く食べ、良く動くシロはきっと大きくなると思う。


とりあえず、扱うのは『回転球体』だな。

まずはどれくらいの回転数か見てみるために一度魔力を注いでみる。

すると、回転球体は初めはゆっくりと、徐々に早く回りだした。

とはいってもとても扇風機に到達するような速さではなかった。

やはり『振動球体』同様効果自体はそこまで高くはないな。


となると、別で回転する力を与える何かが必要か。

んー……。

魔石と回転球体を合成して魔力を二重に保存できるようにしてみるか。

いや、でも内容量が増えるだけで意味はなさそうか……。

内容量よりも出力を上げないといけないんだよな。


ならば風の魔石と合成したらどうだろう。

風魔法で疾さが上がるのだし、回転スピードも上がってくれないかな。

とりあえず試してみるか。

風の魔石と回転球体を合成させてみる。


『風の回転球体』


うん。まんまだな。

さて、魔力を注いでみますか。


ひゅぅぅ……。


んー……回転速度は上がらないが、微風が流れているようだ。

手を近づければ辛うじてわかるレベルである。

これならば風の魔石に魔力を普通に注いだ方がまだましな風が出るだろう。


「んー……」

「えっと、どうしました?」

「いや、ちょっと悩んでる」


微風……微風か。

もう少し風が強ければその風を推進力に変えられるかもしれないのだが、流石に弱すぎるな……。

んー次の案に行くか。


バイブレータと同様に魔力誘導板を利用して回転数を上げてみるか。

魔力誘導板は2枚使えば磁石みたいなものだし、プロペラにも魔力誘導板を利用して反発しあう力を使えば速く回れるように出来るかもしれない。

ただバイブレータ同様組み合わせ方や設置位置などでかなり難儀しそうだな。


とりあえず骨格を作るか。

普通のリビング型扇風機を……いや、待てよ……。

別に企業が出すしっかりとした商品って訳でもないし、形に拘る必要はないよな。

ならば組み合わせを優先してもいいのか。

とりあえず試行錯誤してみますか。


結果発表!


さて、見た目は扇風機だが、これを扇風機と呼んでいいのだろうか……。

いや、扇状の板が回り風が生まれるのだから扇風機で間違いはないのだが……。


扇は風の魔石を板状に再構築し、さらに魔力誘導板と合成させた『風の魔力誘導板』を使用。

軸には回転球体を再構築し、『回転輪』にする。そしてベアリングのように細かな球体を等間隔で配置し、摩擦を少なくして回転数を上げる。


更にフレームには回転数を上げさせる為に魔力誘導板を格子状に加工して使用し、側面を板状に加工することにより、『風の魔力誘導板』から生じる微かな横向きの風を前方向に変える様に工夫を施し、さらには安全面を考えてフレームには強度を増加させる為に金属も含ませている。

これで、俗に言う『中』までの速さを実現することが出来た。

『弱』にするならばツマミを捻れば魔力の供給量をカットできるので風量の調整も可能だ。

紛れも無く自信作ではある。


ただ、予想以上に疲れた……。

魔力誘導板の調整が相当だるい……。

格子状にした際に表裏を考えつつ組み合わせていくのがかなり大変だった。


だが、そんな時の為にあるようなスキル!

既知の魔法陣エクスペリエンスサークル』!

いやあ、錬金のレベルが高くてよかったね!

これで自分の分も簡単に作れるよ。


って事で、次の試作はまた今度にしよう。

今回の錬金で新たにアイディアも浮かんだしな。

『回転輪』、これは便利である。


「お茶を飲まれますか?」

「ありがとう。ごめんな、つまらないだろう」

「いえいえ。ご主人様が真面目なお顔でお仕事をしているところを見ていますから」


見ていても楽しいものではないと思うのだけど、まあウェンディがいいというのならそれでいいか。


「とりあえず問題なく、作動しているな」


目の前にあるのは先ほど作った扇風機。

早速魔力を注いで試してみる。


「そうですね。とても涼しいです」

「首振り機能が欲しいよなあ」

「首振りですか?」


ウェンディがぷるぷると首を振るが、あってるけど違う。

直接当たると体調壊すしね。

まあそこは風量調節だな。

なんのために風力を上げたのかわからなくなるけど……。


さて、扇風機といえば昨今はタワー型の扇風機もあるのだが、今回は置いておくとしよう。


「さて、とりあえず完成したし隼人に渡しに行くとするか」

「はい。ご主人様!」


扇風機をしっかりと魔法空間に収納し、その他の散らかった材料をしっかりと片付ける。

さて、隼人はどこかなあっと。


「隼人様なら、お庭の方におられますよ」

「きゃあ!」「うおっ! びっくりした!」


部屋を出て少し歩いたところで突然後ろから声をかけられ、俺とウェンディは同時に体がビクっとなる。

驚いた拍子にウェンディは俺の腕に抱きついてきており、振り返るとそこには案の定フリードがいた。


「失礼致しました」

「いや、うん、いいんだけど気配を感じなかったぞ……」

「執事の基本でございます」

「あと、何で俺たちが隼人のことを探してるとわかったんだ?」

「執事の基本でございます」


その執事の基本、絶対に俺の知ってる執事と違う!

いや、まあ確かに何でも出来る! みたいな印象はあるけど、基本的に有能なだけでここまで凄くないと思うの!


「ま、まあありがとうな。行ってみるよ」

「はい。それとクリス様にそろそろお昼ごはんの準備を始めましょうとお伝えいただけますでしょうか?」

「ああ、わかった。伝えておくよ」


はぁ、フリードの登場は心臓に悪いな。

そういえば昼飯なら俺も手伝った方が、と思い振り返ると、案の定もはや姿などない。

まあいいか、後でクリスにでも聞こうと考えて俺たちは隼人のいる庭に足を運ぶ事にした。



玄関を出て目の前の階段のところに、目的である隼人達が座っている。

横にはクリスとレティがいるようだ。

何を見ているのかと目線を先にすると、紅い戦線(レッドライン)の三人と、シロが鍛錬をしているところのようだ。


「おっす隼人。扇風機出来たぞ」

「イツキさん。もう出来たのですか?」


もう、とは言うが朝食から3、4時間は経っているはずだ。

いやまあ3、4時間で扇風機が出来るのならとてつもなく早いのだろうけど。


「錬金って……やっぱり便利だなあ」

「あはは、スキルって便利ですよねえ」


元の世界にもこういった特殊な何かがあれば、と思わないことも無いがあればあるできっとあそこまで科学文化が発展していないだろう。

無いからこそ、科学という分野が大きく発展したのだと思う。


「まあ、完成品は後で渡すよ。それより、シロ達を見てたのか?」

「そうよ。聞きたかったんだけど、あんたのところのシロって何者なの?」

「何者って言われてもな……」


シロは可愛い俺のシロだ!

としか言いようが無い。


「三対一で圧倒、一撃も受けずに回避し続けてます……」

「ほーう」


シロ達の方を見ると、ひらりひらりとかわし、避け、こっちに手を振る。

おい、危ないぞ。


「あーもう、なんでよそ見してても当たらないのよ!」

「イライラは戦っている時に最もしちゃいけない。集中力が鈍る。当たらない槍がもっと当たらなくなる」

「実際当たってないから何も言い返せない! あーっ! 絶対当ててやるから!」

「ムキになるのもダメ。犬じゃなくて本当は猪なの?」

「うるさいうるさい! 絶対当てるの!」


どうやら避けながらアドバイス……? をしているようだ。

うん、アドバイスのはずだ。


「せやああああ!」


そこに後ろからアイナの剣が入る。

だが上段から振り下ろされた剣を難なくかわし、そこから避けた方向に切り上げられても一切慌てずにナイフで軌道を逸らした。


「アイナは愚直すぎ。教本どおりが悪いとは言わないけど、フェイントまで教本どおりだと相手に避けてくださいと言っているようなもの。戦いながら工夫して自分で考えないとだめ」

「む、むう。難しいな……。型どおりに体が動いてしまうのだ」

「それが相手にばれたら間違いなく倒される。力強い一撃でも、当たらなければ意味が無い」

「ご忠告ありがたく受け取ろう」


アイナはまた剣を構え、シロの隙を窺う。

ちなみに今なおソルテの槍も突き出されていて、シロはあまり見ずに回避しながらアイナに話しかけている状況だ。


「いくっすよおおお!」


そこに上からレンゲが拳を握って舞い降りる。

当然それをひょいっと鳥の糞でも避けるようにかわすシロ。

その後着地したレンゲの連打もバックステップ一つで対処すると、今度は珍しくシロがナイフを振るう。

レンゲはぎりっぎりで仰け反って躱したようだが、そのまま後ろ回りをしてすぐに起き上がった。


「せっかくの奇襲に声を張り上げるとか、馬鹿なの? あと回避する際はもう少し余裕を持った方がいい」

「シロだってぎりぎりじゃないっすか!」

「シロのとレンゲのは違う。シロのは次を考えて避けてる。レンゲのはただギリギリで避けてるだけで避けた後のバランスが悪い」

「難しいこと言われてもわかんないっすよー!」

「じゃあ身体で覚える」


そういうとシロはレンゲをナイフで攻撃し始めた。

それをレンゲは『わ、わわわ』とギリギリで避けて行くのだが、最終的に足がもつれて転んでしまった。


「ほら、こうなる」

「い、いまのはシロが嫌なところばっかり攻めるからっす!」

「それが戦い。力で叩いて壊すだけが戦いじゃない」

「もらったあああああ!」

「あげない」


ソルテがシロの背後から一撃をお見舞いするが、それすらも読んでいたのかやすやすと後ろを向いた状態からソルテの後ろにまで回避する。


「ひああああ! ソルテ! 危ないっすよ!」

「いつまでも寝転がってるあんたが悪い! あーもうレンゲちょっと突撃してシロを抑えなさいよ。あんたごと貫くから」

「当たらないからってイライラしすぎっす! というか、捕まえられたら苦労しないっすよ!」


はぁ……。

それにしても見事なもんだ。

シロがいかに強くても三対一だぞ。

それに、俺は昨日の鍛錬の際に『黒い布』のようなものを見ている。

今シロはそれを纏っていないということは、この状況でもまだ余裕があると言う事だろう。


「という感じで、今までずっと続いてるんです」

「ほう……。うん、見ていて面白いな」

「本人達は必死でしょうけどね……」

「ご主人様、クリスさんにお伝えしなくてよろしいのですか?」

「あ、そうか。クリス」

「はい、なんですか?」

「フリードがそろそろお昼の準備をって言ってたぞ」

「あ、すっかり見入ってしまって失念していました。隼人様、行ってまいりますね」

「うん。美味しいご飯をお願いします」

「はい。腕によりをかけて頑張ります!」

「あー、何か手伝おうか?」


ただご相伴に与るだけってのは申し訳ないしな、ただでさえ今朝高い食材だって断定できたわけだし。


「いえいえ、お兄さんはシロさん達を見てあげてください」

「それでは私がお手伝いいたしますね。あの様子だとあの4人は沢山食べそうですし」


ウェンディはちらりと今なお動き続けている四人を見る。

確かにあれだけ動けばかなりの量を食べそうだ……。


「ああ、じゃあ悪いんだが、頼めるか?」

「はい。お任せください!」


ウェンディはにこりと笑顔を見せると立ち上がり、クリスと共に厨房へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ドリルを! ドリルを作ってくれえええ! 天を衝くドリルを! 天元突破なドリルを!
2021/07/06 22:18 退会済み
管理
[一言] 『回転輪』、これは便利である。 そだね。 バイブレーターのバナナ版作って、回転球体でぐにぐにさせたら、更にトンデモナイ物が作れるね。
2021/06/04 08:21 退会済み
管理
[一言] よし、わかったぁ!(金田一耕助に出てくる警部のノリ) エリオダルトとの初めての合作は、エアコンだッ! エリオダルトが空気清浄の温度調節のを作って、イツキさんが送風機。んで、二人でノリノリ…
2021/05/23 21:31 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ