15-10 ギゴショク共和国 第24回究極クッキングバトル
『第24回究極クッキングバトル! サラグリム杯の出場メンバー紹介だあああああああ!』
マイクを持ったテンションの高い司会者である『チョーヒ』さんが次々とステージの上にいる出場者を紹介しているのだが、俺もそのステージの上にいるんだよね。
……どうして、こうなったんだっけ?
えっと……確か冒険者ギルドには行ったんだよ。それで情報収集をしていたんだよな。
そうしたら何故か俺がアインズヘイルから来た流れ人だってのが伝わって、料理はそこそこ出来るという話をさせられ、あれよあれよといううちにあっという間にステージの上に立たされたんだった。
まあ大会名から分かるのだが、話を聞いた限りこの大会で優勝すればサラグリム王に料理を試食していただけるようなので結果オーライではあるんだけどさ。
ただ、街の様子をもっと見たり、色々情報収集とかしたかったなあ……と。
いやうん、今回は遊びで来ている訳じゃあないのと、色々解決してからゆっくり回る方が良いだろうしサラグリム王へと繋がる大会にギリギリ出られたのだから良しとしよう。
『お次はこちら! アインズヘイルからやってきた謎の流れ人! ある人は言う。彼の料理は最高だと!(byシロ)ある人は言う。彼の作るお菓子は王族もメロメロになったと! ええっと名前は……あれ? 飛び入りだから書いてないんだけど…………アインズヘイルAだあああああ!』
まあ急げ急げもう始まるからと連れて来られたから名前も何も書いてないんだよな。
そして俺がAと呼ばれた理由なんだが……。
『お次はこの方! ナイスボディは見ればわかる! この美しさで料理も得意とか天は彼女に何物を与えるつもりなのか! 先ほどのアインズヘイルAの奴隷であり、恋人! 将来は当然奥さんか! ご主人様の胃袋は掴んでいるだろうな羨ましいー! アインズヘイルBぃぃぃ!』
「えっと……が、頑張ります! ……うふふ奥さん。んふふふ」
ウェンディも別チームで参加することになってるからなんだよなあ。
最初は一緒に出て手伝ってもらおうと思ったのだが、別チームで参加した方が優勝できる確立が上がるのでは? って事で別チームとして参加する事になったんだよ。
『なお! 24回もやっているので分かっているとは思うが、この大会で優勝した暁には現王であるサラグリムに料理を献上することが出来るぞー! そして美味いと認められれば1つ願いを叶えてくれるそうだ! ちなみに23回駄目だったって事で、マジで頼むぞ。俺達の『リュービ』様を取り返してくれえええ!』
あれ? リュービ様を取り返してくれって、そうなると俺達の目的は果たせなくないか?
目的はアインズヘイルとの同盟の破棄を考え直してもらいに来てるわけだし……。
「あの……その願いって、リュービ様? を助ける以外は駄目なんですかね?」
『んんー? いやいやそんな事はねえよ。これは俺達の問題だし、他国から来たあんたにそんな事は頼めねえさ。勝った者の権利だから、あんたが勝って認められたら好きなもんを頼めばいいとも! まあ24回もやってるとマンネリでね。他国の料理人でしかも流れ人ってスパイスが欲しかったんだよ。っていうか、もう勝った時の事を考えてるのか? 今日の出場者はショクでも指折りの料理人だらけだぜ? いいねいいね強気だねえ!』
あ、いやそういう訳じゃあないんですけども……。
もし勝てた後に条件がそれしか駄目だと情報収集の続きをしたいなと思っただけなんだが、わあ……出場者の皆がこっち見てるぅ。
違うんです。
本場の料理人に勝てるなんて思ってないんで、『大した自信じゃないか。流れ人の料理とは……面白い。見せてもらおうか貴様の腕を』みたいな視線を送ってくるのはやめてください。
『開始の前にルール説明をするぞー! ある程度食材は用意してあるが、それ以外は自力、または協力者を探して食材を集めてくれよ! 勿論妨害は無しだぞ! 制限時間は三日間! 究極、だから時間はたっぷり使ってくれな! それぞれ究極の料理を頼むぞ! ちなみに出来た順から審査していくぜ! それでは試合開始ぃぃぃいいいい!』
三日間って……結構な時間をかけるんだなあ。
まあ料理によっては数日かけて作るものもあるし、王様を満足させるためならば何日かけても美味い料理を作ってくれってことなのかねえ。
「ご主人様。負けませんからね!」
「……やる気だなウェンディ」
「勿論です! ご主人様! 私が勝ったら、共和国のお洋服屋さんを一日中回りますからね!」
「わ、分かってるって。一日中かぁ……」
ウェンディとチームを別れる際にどうせなら何か賭けた方が面白いでしょう! と、シオンから提案があったんだよな。
一応協力者としてウェンディにはアイナ達が補助についており、俺の補助はシロとシオンなんだが……。
『私はウェンディにつくわよ。料理の腕で言えば主様のも美味しいけど、ウェンディの方が腕は上だしね』
『自分も勝ち馬に乗らせてもらうっすー!』
『私は主君を応援したいのだが……勝ったら一日自分の望んだデートと聞いてはな……。すまない主君。私も主君と二人でデートがしたいのだ』
『ん。シロは主に賭ける』
『んんー私はどうしますかねえ。無難に勝ちを狙うのであればウェンディさんなんですが、賭け事は穴に賭けた方が面白いですし私もお館様にしまーす!』
と、いった感じである。
俺が勝っても負けても誰かしらと一日デートに付き合うのはまあいいんだけど、俺が勝ったら負けた側は一日俺の望んだ衣服を着るとかってご褒美があっても良いと思うの。
そしてシオーン? ウェンディの方が料理は上手いと俺も思うが、穴扱いとは良い度胸だ。
こき使ってやるから楽しみにしておけよ。
「それではご主人様。お互い頑張りましょうね!」
「じゃあね主様」
「ウェンディ! 何でも取ってきて欲しい物を言うっすよー!」
「うむ。冒険者ギルドでこの周辺で取れる物を聞いておいた方が良さそうだな」
と、4人が去って行ってしまった。
他の出場者もそれぞれ動き出したようだし、それじゃあ俺達も動くとしますか。
とりあえず運営が用意してくれている食材を見に行くとしよう。
「究極料理……シロさんは何が究極の料理だと思います?」
「ん。主と食べるご飯」
シロぉ……。
俺もシロと食べるご飯が究極だと思うぞ!
もうそうしようか。
シロと食べるご飯が究極の料理だ! って、自信満々に言い放ってみようかな。
……サラグリムが満足する料理という名目だから流石に駄目か。
「や、そういうのじゃなくて料理でですよ料理で」
「んーお肉。大きいお肉。お肉が大きいと皆幸せ」
「あはは。シロさんはお肉が好きですね~。私はやっぱり高級食材をふんだんに使ったお料理が究極ですね。高いお肉やお野菜を使えば使うだけ究極になると思ってます!」
……まあ結局究極の料理なんて人それぞれだよなあ。
お肉は勿論使う予定だが、牛、豚、鳥等々肉と言っても色々あるし、それぞれ特徴も違うからなあ。
サラグリムは女性なのでヘルシー路線? いや、欲深さも見えるからがっつりか? など、考える事は多いんだよなあ。
そして高級品か。
確かにこの世界の高級品は美味い。
この世界は安かろう悪かろうではないものの、高かろう美味かろうはほぼほぼ間違いないともいえる。
とはいえ高級品をこれでもかと入れたところで旨味は強いだろうけど、調和は……あー……肉も野菜も色々入れて、か。
一つ思いついたな。
以前元の世界で本格的な物を食べた際にはシンプルな見た目ながらも味わいの奥深さに驚き、一口目の余韻が消えるまで呆けてしまう程に堪能したアレ。
その後気になって作り方を調べたものの、はっきりとは思い出せないのだが何とかなるとは思う。
というか、思い出したらこっちの世界の材料で作った物を俺が食べたいしこれにしよう。
「よし。とりあえず運営が用意したもので作り始めるとするけど、シロとシオンは周辺で取れる美味い物を片っ端から集めてきてもらっていいか?」
「ん。マカセロリン」
「はーい! 何か作るものは決まったようですけど、何を作るつもりなんですか?」
「それはまだ内緒。どうせなら完成品を味見してもらいたいしな」
「ええー! 気になりますようー!」
「まあまあ完成したら味見はお願いする予定だし、その時を楽しみにしてくれよ」
……まあ、色々朧気なのでどうなるかは俺も分からないんだけど多分不味い物にはならないと思う。
最悪優勝できるかは出来栄え次第ではあるが、この手の料理対決は漫画知識だと見た目のインパクトと味が大切らしいから、ワンチャンスはあると思う。
というか、プロ相手に奇抜さも無ければ勝てないだろうし、やるしかないだろう。
「ん。主、お肉は使うの?」
「ああ。勿論使うぞ。牛と鳥の美味いのがあれば頼めるか?」
「分かった。じゃあシロはお肉取ってくる!」
「では私は野菜系ですかね。香草なども必要な物を言っていただければ取って来ますよ」
「おーう。とりあえず色々取ってきてくれ。使うかどうかは物を見てから決めるからな」
この世界の野菜は特殊なものが多いし、見てから使えるかどうかを判断しないといけないものも多いからな。
世界が違うので正式には作ろうと思っている物と同じになるかはわからないが、臨機応変に行こう。
「んんー? 使う材料は決まっている訳じゃないんですか? 一体何を作るんですか? ああー! 気になりますー! ちょっとくらい教えてくれても良いじゃないですかー!」
はっはっは。
別に教えても良いのだが、多分え? ってなると思う。
見た目は物凄いシンプルで驚くだろうし、味にもきっと驚くだろうな。
だからどうせならより驚いてもらいたいという訳だ。
だから内緒。まだ内緒だ。
「まあヒントくらいはいいか。作るのはスープだよ」
「おおー! スープですか! 確かにそれなら色々な食材を使えますね!」
まあそうだな。
確かに色々食材は使うぞ。
そしてとんでもなく作るのに時間がかかるので、覚悟しておくように。
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