14-25 イグドラ大森林 伍被緑麒麟
話じゃないのも含めてだけど400話目だー!
シロを不可視の牢獄に乗せて見送ったのだが……精霊樹が遠すぎてシロの活躍は見えそうにないな……。
まあ、精霊樹の全体が見える位置となると遠いし、視力1.0くらいじゃあ見えないよなあ。
目を細めて何とか見ようとすると小さい影がちょろちょろっとしているのだが……あれはシアンさん達だろうか?
「お館様お館様」
「ぬおっ! びっくりした。シオンか……」
お前気配消しながら現れるなよな……心臓に悪いだろう。
あー……ドキドキしてる。
「はい。いつでもどこでもお館様のお役立ちする美少女シオンちゃんです。まったくもうお館様ったら昨日の夜からどこに行ってたんですか? 流石にシオンちゃんもぐっすりでしたから気づかなかったですよ」
「ああ、妖精に夜中に起こされてな……月精の――」
「なんですか? 妖精さんに性的なサービスでも受けていたんですか? 噂では小さい上に何も着ていないそうですけど、裸なら何でもいいんですか!?」
「んなわけあるか」
何でこいつはなんでもかんでもすぐそういう方向に持って行くのだろうか?
俺の全神経がそういう方向に向けられているとでも思っているのだろうか?
一度しっかり正座させてお話合いをするべきだろうか。
「で、いつでもどこでもお役立ちする美少女シオンちゃんはいつ役立ってくれるんだー?」
「うわ酷い。まるで信用していないような視線と棒読みじゃないですか! や、やりますよ? 今すぐにだってやれますよ!」
ほうほうほう。
それじゃあ今すぐ役立ってもらおうじゃないか。
うりうり、早くやってみろよう。
「んんっ……お館様はどうやら視力があまり良くないようですね」
「良くない訳じゃあない。流石にあの距離は見えないってだけだぞ」
「ふっふっふ。良いでしょう良いでしょう。シオンちゃんにお任せですよ! お館様もびっくりのスキルをお見せします!」
んんー? なんだろう?
本当にお役立ちなのか?
知らないスキルだと大抵驚くとは思うんだが……。
「いきますよー! 『視覚共有』!」
あ、知ってるスキルだったわ。
でも驚いたな。シオンも使えるのか……。
「ふふふ! 驚いたでしょう! どうです? このスキルは私と視覚を共有できるんですよ! そして私はスキルで視力を強化できますからね! これでばっちり見えますよ! 流石シオンちゃんお役立ち!」
「ああ、うん。凄い凄い」
「あれぇぇ!? もっと驚くと思ったんですけど!? こんな感覚初めて……っ! ってならないんですか!?」
「あー……いや、以前一度受けたことがあってな……。いやでも、凄いとは思ってるぞ?」
なんといってもアトロス様と同じスキルだからな。
神様のスキル使えるんだ……って、一瞬驚いたよ。
一瞬だった理由は、アトロス様も元々この世界で生きていたのだから、当然普通のスキルは使っていたと予想出来るわけで別に女神様専用スキルではないんだよなって思ったからさ。
まあ……流石に透けないよな。
あれは『全てを見通す祖の神眼』あってのものだしな。
いや、うん、でも本当に凄いとは思ってるぞ?
「えええ……このスキル割と取得条件がややこしいレアスキルなんですけど……。一体どこの泥棒猫がお館様の初めてを……!」
……女神様かな?
お前、知らぬとはいえアトロス様を泥棒猫呼ばわりとか、恐れ知らずだな……。
あの人の戦闘力、半端ないんだぞ?
木の矢でクレーター作るんだからな? 千本の矢を一斉掃射するんだからな? クロエミナ様の口ぶりを聞くに、千本よりももっとたくさん出せそうなんだぞ。
「それより俺の顔ばっか見るなよな……。鏡でもないのに自分で自分を見るって、なんか変な感じするんだよ」
俺の顔よりもシロの活躍を見たいんだよ俺は。
「わかりましたよう……。お役立ちしなくてはですからね! ……チラ」
「……おい。なんで胸元開いた? なんでそこ覗き込んだんだ?」
「やだなあ。ただのサービスに決まっているじゃないですかぁ」
うん。時と場合を考えようね?
あと……なんで下着着けてないんだよ。
「こんなこともあるかと思って!」
「心を読むな。あと、何があると思ったらそうなるんだよ……」
下着は大事なんだぞ。
シオンだって、立派なぱいなんだから大事にしなさいよ!
「ええー……それは勿論――ッ!」
「うっ……」
何に反応したのか分からないが、会話の途中でばっと突然視点が変わり、シロ達の方へと目が向けられる。
視力が強化されたのか、遠くに見えていたシロが望遠鏡を使ったかのように大きく見えるようになったのは良いんだが、急な視線移動は酔いそうになるからやめて……。
クラっと来たがシロの方を見ると何やら緑色の靄がシロの腕を包み込んでいくところで、初めは精霊樹の葉の様な鮮やかな緑色だったのがだんだんと濃い緑色へと変わっていく。
それと同時にキィィィィィン! っと、甲高い音が鳴り響いて俺達の居るところにまで届く。
「うわあ……シロさん怖ぁ……。絶対に逆らわないようにしよ……」
「怖いって……シオン? 説明してくれるか?」
ドン引きしてるじゃないですか。
なんで? あと、わざわざ俺の方は向かなくていいからシロの方を向きながら説明してくれ……。
「はーい。ええっと……緑の靄は見えてましたよね? あれはシロさんのスキルの被装纏衣だと思うのですが、その力を一点集中させているようです」
「一点集中……ああ、だから腕だけなのか」
普段の被装纏衣であれば、シロの身体全体を覆っているものだもんな。
肆衣鈍蛇の時もナイフの底からオーラの様な靄が延びていたが、シロの身体も覆っていたものな。
そう言えばクロエミナ様も壱被黒鼬を脚だけに使っていたな。
シロも出来たのか……いや、出来るようになったのか。
「腕……と、言いますか、正しくは手首から先ですね。手首から肘までは保護しているのだと思いますよ」
「保護?」
言われてみれば、緑色のアームカバーのように腕にぴったりとまとわりついているな。
でも何で保護なんだ? ただ単に強化しているじゃないのだろうか?
「ええ。シロさんのナイフの付近の空間が若干歪んでいるのが分かりますか? 間違いなくスキルの力を凝縮している影響ですが、恐らく空間が歪む程に凝縮している力に対抗するために腕を保護しているのかと。当然と言えば当然です。あれほどの力、ノーリスクで振れる訳がないですし。ですよね隼人卿」
「そうですね。あれほど力を籠めるとなると……触れずとも余波だけで圧力がかかるでしょうね。シロさん凄いなあ……まだまだ伸びますね。あはは」
えっと……笑いごとじゃないんだが?
つまりアレだろう? 下手すると自分の威力に負けて大怪我しそうな技って事だろう?
ちょっと後でシロとはお話合いをしないといけないな。
「ほらほらお館様注目です! シロさんがナイフを振り下ろしますよ。流石にゆっくりですね。速度を乗せたら保護をしていても腕がベキベキに折れるでしょうし。わっ、わっ、触れる前からベコンって! 来ますよ来ますよ、一気に…………うわあ……」
シオンの言う通り触れる前から圧力がかかるようにしてゼノハクイドリの羽根を剥ぎ取られた背中が凹み、ゆっくりと振り下ろされるナイフが触れた瞬間にゼノハクイドリが綺麗に縦に真っ二つとなった後、黒い灰のようになって消えていく。
「威力の調整も行っていたんですかね? あれ以上の威力だと精霊樹へのダメージもありそうでしたし」
宣言したとおり、精霊樹には傷一つ付けていないようで隣でイエロさんのほっとした声が聞こえて気を抜いてしまったのだが、シロがそのまま落ちている事に気が付いた。
あれ? 不可視の牢獄が全部消えている!
もしかしてシロのスキルの余波で全部壊れたのか!?
ちょ、視覚共有中は座標がわからないのか!?
「シオン! 視覚共有の解除……を……へ?」
早く、不可視の牢獄を張り直さねば! あ、でも視覚共有を解除すると遠すぎて座標が、いやシロを基準に……とか考えていると、精霊樹の幹から枝が延びシロの落下地点で渦を巻いて葉を生やして籠のようになっていくのが見えた。
一瞬にして成長した……?
いや、だとしても的確にシロを受け止めるように成長するなんてあり得るのか?
「ふふふ。ご主人様様。植物も生きているのは知っていると思うけれど、精霊樹は特殊でね。意思を持っており、大地から吸い上げる力を自由に使えるんだよ。ああして枝を伸ばし、葉を生やす事くらいは容易い事という訳さ!」
「おお……そうなのか。いやでも、おかげでシロが助かった。ありがたい」
「いやいやお礼は私から言わせて欲しい。ゼノハクイドリは精霊樹の葉を食べる厄介者でね……。分厚い羽毛のせいで攻撃が通りにくく、満腹になるまで食べ続けるから精霊樹も疎ましく思っていたんだろうね。それを討伐してくれたシロちゃんへ、感謝の気持ちを込めて受け止められるように枝を伸ばしてくれたんだと思うよ」
そっか……それにしても、凄い成長速度だったな。
シロの近くへ守り人の人達が集まってきたのにも対応していたようだしな。
「いやあ! 疑っていたわけではないけれど、凄い子だねえ! たしかあの子はお肉が好きなんだよね? 今日の料理はお肉料理を沢山用意するように言っておくね!」
「それは喜ぶと思うからありがたいな」
「任せておいてくれ! あ、一応ご主人様様と隼人卿には伝えておくけれど、少しの間精霊樹の調査をするから近づけなくなると思う。結果が出たらお知らせはするから、それまではよろしくね」
といって、駆け出して行ったイエロさん。
慌ただしいが、理由が理由だしなあ。
「調査……ですか?」
「ああ。どうやらあの精霊樹の寿命が近いらしくてな。その調査をするんだって」
「そうなんですか!?」
「あのう。なんでそれをお館様が知っているんですか? もしかして、またお館様のトラブルメイカーですか……?」
「だから俺はなんもしてねえよ……」
またとか言うなまたとか。
この後、シアンさん達と一緒に戻ってきたシロを出迎えて労い、夜の食事はシロは目を輝かせて肉を貪っていた。
シロ曰く『消費が激しかったから沢山栄養補給しないと』との事で、シアンさん守り人達が追加の肉を上機嫌で狩りに行ってくれたのだった。
ゼノハクイドリの肉も食べてみたかったみたいだが、今回は諦めたらしい。
また出た時は樹にとりつく前に狩ると言っていたんだが……またあの技をやるつもりなんだろうな。
隼人達の話を聞いた後だと心配なんだけど、きっと大丈夫って言うんだろうなあ……。
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