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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
13章 アマツクニ巡り

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13-26 和国アマツクニ 陰陽刀の行方

『くれてやる。持って行きな』?

はて? ……聞き間違いか? いや、間違いなくそう言ったはずだ。

えっと……なんで? 本気でなんで?


「どうした?」

「……いやいやいや、それ一本3億ノールするんでしょ? 貰えませんし、貰う理由も無いんですけども……?」

「値段なんてのは俺が勝手につけただけでそんなしねえよ。この性能なら……高くても1億ぐらいだろうな」


いや、1億ノールでも十分お高い代物ですよ?

実は呪われてますとか言われたら、くれてやるってのもわかりますけど、呪われてたらいらないです。怖いです……。


「いやそれでもそんな高価な物を貰う訳には……というか本当に何故……?」


アイナに奴隷になる! って言われた時くらいの何故だよ。

あっちは結果カルチャーショックだったけど、こっちは単純に理解出来ないよ!

いきなり刀をくれる男……嬉しい気持ちよりも怖さが際立つよ!


「値段はなんでもねえんだがな……。まあ単純な話だ。陰陽刀は二振りで一つ。それが当然であり完成形だ。片方だけじゃ真価は発揮されないし、武器が浮かばれねえ。俺の気分も悪い。それだけだ」

「いや、だとしたら俺から買い取るって手もあるんじゃないのか?」

「売る気があるのか?」

「いや、ないけどさ……」

「だろう? それに、あったとしても俺じゃあ駄目だ。俺は武器を使えないからって言っても、納得できないなら……そうだな。双子の姉妹がいたとしよう」


突然なんです?

えっと、双子の姉妹? 仮定の話だが、ラズとクランが浮かんだんだが。


「二人は大変仲睦まじい双子であり、二人共元気で明るく、生まれた時から二人でいる事が当然と言わんばかりに行動を共にしていた」


……うん。やはり天真爛漫なラズとクランだな。

あの二人は絶対にセットだ。

とりあえずあの二人に置き換えれば、想像も容易そうだ。


「ところがある日、二人は奴隷となりそれぞれ別の主に買われる事になった」

「なんと……」


いきなりラズとクランが引き離されてしまっただと……?

そんな可哀想な事が何故できるんだ……っ。


「お互いの引き取り手はどちらも悪い主ではなかった。だが、片方は家の奥で外に出す事は無く、丁寧ではあるがただただ無意味な時間を過ごさせ、もう片方は旅から旅をして主は娘の力も借りながら外の世界を眺める事が出来ていた。だが、どちらも不自由はないがどこか欠けているような印象を覚えた」

「……」


ラズかクランが……いや、どちらをどちらに置き換えるのも出来ないんだが、多分きっと元気はどちらもないのだろうな……。

特に家の奥ってのは……二人のどちらも耐えがたい苦痛じゃあなかろうか。


「そんなある日、二人は再会する機会に恵まれた」

「っ……」

「お互いの主はどちらも悪い奴ではない。だが、片方は部屋の奥で隠されるようにひっそりと暮らし。もう片方は人らしく生きている。……どちらの主も、二人は一緒にいる事が正しいと認識した訳だが、お前はどちらが引き取る方が正しいと思うかね?」


……ずるい!

ラズとクランを想像したから、確実にお外だよ!

お部屋で飼い殺しなんて出来ないよう!

っていうか、これ元々刀の話だよね!?


刀の本分は武器。

俺は武器を使わないから使ってるお前が持って行けって事でしょう!?

それをラズとクランに置き換えるだけで……くっ、なんて説得力だ! 大金を叩いてでも買い取るべきだと思わせるじゃないか!


手に入れるためにお金も使った事だろう……だが、それでも二人の為に手放すというのだからこの男も良い奴じゃないっていうのがもう……もうだよ!


「……わかった。引き取らせてもらうよ」

「そうか。よろしく頼む」


ラズ……クラン……良かったな。

これからも二人で元気な姿を見せておくれ……陰陽刀の話だったけども。


ま、まあ、ありがたい事には変わりないしな。

単純に強い武器を貰えたって事だし、とても感謝しておけばいいのだろう!

そして二人……じゃなかった、二つを離さなければいいのだろう!


「それじゃ、まだ見ていくなら適当に見ていけ。勿論偽物もあるが、一応全て本物も揃っているからな。……見極められたら本物を出してやるよ」


そういうと踵を返し、後ろ手に手を振って店の奥へと向かう店主ダイコクさん。

残された陰陽刀-陽-に視線を向けて手に取り、もう一度ダイコクさんの背中を見送――。


「いやいやいや! ちょっと待って! 私を置いて話を進めないでくださいよう!」

「あ? ああ、いたのか」

「ずっといましたよ!? というか、まだ私との商談中でしょうが!」

「あー……それ買うのか? そういえば見惚れたんだったか。偽物だけど。じゃあ5億ノールな」

「買いませんよ! 偽物でもしょうがないとはいいましたが、偽物だと完全に分かった今買うわけがないでしょう!」

「そうか。割と良い出来だと思うんだがな……側だけだが」

「そりゃあ……鍛冶レベルの高い副局長が作ったんですから、良い刀だとは思いますし、見た目だけで言えば遜色もない程ですけど……」


え、この偽物ダイコクさんが作ったの?

って事は、もしかしてこの店にある偽物は全部ダイコクさんが……?

……もしかして、偽物も置いている理由って自分の腕試しも兼ねてません?


「見た目が同じならばやはり本物が良いです……っ!」

「まあ、当然だわな。だが、その刀はもう俺のものじゃねえからな。一緒の所にあるってんなら俺は構わねえから、交渉は自分でするんだな。それじゃ、俺は研究に戻る。後は任せた」


そう言って今度こそダイコクさんは部屋の奥へと引っ込んでいってしまい、残されたのは俺とシオン、そして陰陽刀の二振り……。

さて……どうしたもんかね。


「お館様ぁぁぁ~~ん」

「……」


甘い声で甘えるようにしだれかかってくるシオン。

胸元をわざと開いて、裾をなんとか上にあげてから首に手を回し、足すらもあげて絡みついてくるのだが……ちょっと鬱陶しい。


「うう、お願いしますよう……お館様ぁぁん」

「うーん……」

「くっ……この手は悪手でした。お館様は皆さんで慣れているんでしたっ! かくなるうえは!!」


色仕掛けの反応が鈍いと見るや、直球で土下座。

あらまあ、とても綺麗な土下座だな。

美しいまである土下座なのだが……ふむ。


「お願いします! お金も勿論お返ししますからー! なんでもしますからああああ!!」

「ん? 今なんでもって言った?」


なんでもセンサーはいつだって逃がしませんよ。

なんでもって、なんでもなんだから気軽に使っちゃいけないんだぞ!


「言いました! 本当に何でもしますから! どこでもお相手しますから! お外でも構いません! 脱げと言われたところで脱ぎますからぁぁぁああ! なんでしたら今すぐにでも!」


……いや、本当に何でもする気だったんだな。

しかも俺からの要求が全てそっち方面だとでも思っているというのがなんともな……。


「いや、今脱ぐなよ……。そうか。なんでもするのか……」

「はい! 尻尾を生やせと言われれば生やします!」


やってもらおうじゃないか。


「……すぐにという訳にはいきませんが、なんとかしますからぁぁあああ!」


……物凄い情熱だな。

ふーむ。本当にいつか叶えそうな勢いと思えるほどに熱いなあ。


「んんーそうだな……」

「ううう……お館様ぁ……」

「……じゃあ、さっきないがしろにしちゃった件を許して貰おうかな」


ずっと付いて守ってくれていたのに気付いてあげられなかったし、ちょっと扱いがぞんざいすぎたかなと思っていたのだ。


「へ? も、勿論ですよ」

「そうか。じゃあはい」


手に持っていた陰陽刀-陽-を手渡すと、キョトンとしながら受け取り、目をパチクリしながら困惑した顔をこちらへと向けるシオン。


「え? あ、ありがとうございます……というか、あれくらい別に怒ってないですけど、それはお館様だって分かっていると思……あ、もしかして、最初から私に……?」

「んー?」


まあ仕方ないだろう。

なんせシオンが半生をかけてきたと言っても過言ではない欲しいものなのだ。

それをたまたま陰陽刀-陰-を持っていただけの俺がもらい、シオンの前でそれを使うというのはいくらなんでも可哀そう過ぎる……。


「お、お館様ぁぁぁ……私、お館様にお仕え出来て幸せですっ! どこまでもついていきますぅー!!」


飛び込んできたので受け止めると、足を背中側で搦めて抱っこするような形となったものの、一向に離れる気配などはなく力を込めて抱きしめられる。

うん。刀持ったまま抱き着くのは危ないからやめようね?


「喜んでるなら良かったよ。ただ、陰陽刀-陰-を使うのはちょっと待ってな。これ一応隼人からの借り物……まあ、貰っちゃってくださいとは言われたけど、筋は通しておきたいからさ」

「そっちもいいんですか!? でもそれ、お館様の愛刀なんじゃ……」

「まあ今までお世話にはなったけど、一人が両方使った方が良いだろう?」


ダイコクさんから貰った経緯を考えれば当然というものだ。

ダイコクさん的には別に俺でもいいんだろうが、シオンから取り上げるのは可哀想すぎる。

それに……。


「ううう……お館様ぁ……ああ、もう好き……出会えたことに感謝しますっ! というか、お館様がいなかったら私偽物買ってましたもんね……ああ、運命とか信じてませんでしたけど、これは信じちゃいますよ……んんぅー!! ちゅ、ちゅ!」


首に啄むようなキスをちゅんちゅんする程に喜んでいるのだから、シオンの為にも隼人にはしっかり説明しておかないとだな。


しかし、そうなると困った事が一つ。

俺の武器どうしよう……。

二刀流になれてきてたから、今更変えるってのもな……。

うーん……せっかく武具屋にいるのだから、色々見てみるか。

とはいっても、偽物もあるから見るだけね、安易に手は出せないよ。


その後、本当に見るだけになった訳だよ。

なんせ俺にとって武器の大事な部分は重さだからな!

この店持たせてくれないし! 重さがわかんないから買えないんだよなー!


……はあ。アインズヘイルに帰ったら、隼人に説明がてらまた相談させてもらおうかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 陰陽刀擬人化フラグ? そんな展開もしあったら……陰が陽キャで陽が陰キャくさい気がするのはダイコクの話のせいかww
[一言] 陰陽刀って、陰がイツキで陽がシオンで本物を手に取る予定だったなら、陰陽刀が引き合わせたようにも見えるな。案内人の時から好印象だったのも頷けら話。
[一言] 変化の術的なのか不思議なお薬かククリに相談か。ククリが一番実現性が高いなww
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