13-10 和国アマツクニ アマツクニ美食ツアー
さあ! 今日はアマツクニ巡りっだー!
遠足前の子供ではないので夜眠れない事はなかったが、起きるのはとても早かった!
そして朝食は取らずにシオンに連れられて早朝から開店前のお店に並ばされたのだが、このオカキにはそれだけの価値がある。
出来立てほやほやで温かく、カリッ! サクッ! と歯ごたえが良くて、お米の味とほんのり風味程度に効いた塩味があとを引くのだ。
さらに団子も美味い! 団子自体がほんのり甘くてもっちもちだ!
餡子のたっぷり乗った草団子も良い! これは材料を買って、みたらしも作らねばなるまい! なんせ俺には醤油があるのだから!
当然だが、食べ歩きとは別にお土産におせんべいと共に確保しましたとも!
「んふー……幸せ」
まあシロったら、指の間に4本ずつ挟んでお団子をバル〇グ持ちですよ。
でもパクパク頬張ってしまう程に美味しいもんなー! わかるわかる。
シロなら大丈夫だとは思うが、のどに詰まらせるんじゃないぞ?
「アマツクニは美味しい物が多いわねえ。オカキも噛み応えがいいわあ」
「個性的で面白いっすよねー!」
なんとびっくり獣人用の大きなオカキなんてものがあったんですよ。
一つ貰ったものの俺には噛み砕けそうもなかったのだが、そんなオカキを美味しそうにかみ砕くソルテとレンゲ。
……一瞬、ほんの一瞬だけ骨っ〇に見えたのだが、二人とも気に入ったようで、どんどん食べ進めているようだ。
「オカキ美味しいでしょうー! あのお店のオカキは絶品なので、朝一で行かねばならなかったんですよ! そしてその後はお団子を買うのが黄金ルートです! あ、串はお預かりしますー!」
「流石は地元、美味い店を知ってるっすねえ。自分達の後、すぐ売り切れてたっすもんね」
「大人気ですからね! あっという間ですよ! まあ、すぐ再販しますので急ぐ必要はありませんでしたが、しょっぱいものと甘いものを交互に食べると最強ですから仕方ありませんね!」
朝からテンションが高いシオン。
まあ、自分の地元の良い所を紹介し、それに俺らが大満足なのだから嬉しいのだろうな。
かくいう俺もテンションは上がっているしな!
「そうですね。最強ですもの……ああ、これは止まりません……」
「ウェンディ、あまり食べ過ぎると……」
「大丈夫です。今日は朝ごはんを食べていませんし、栄養は全ておっぱいにいきますので!」
「そ、そうか。……それなら、私ももう少し食べるか」
「……なーんでおっぱい同盟は栄養が全部おっぱいに行くと思ってるんすかね? 普通に腹に行くっすよ?」
「言わないでくださいっ! これからまだまだアマツクニの美味しい物を食べるんです! 美味しい物を食べるのに太るとか太らないとかそういう事は考えたくないんですっ!」
うんうん。
まだまだきっと美味しい物はあるだろうからな!
『せっかくだし』という魔法の言葉で気にせずどんどん食べて行こう。
なあに、少しくらい太った所で俺は気にしない。
というか、俺も心配なので一緒に運動しような!
「いやあ……和服の皆とアマツクニの美味いもの……いいなあ……」
「んふ。主楽しそう」
「ああ! すげえ楽しい!」
まだ二店舗しか回ってないのにもう凄く楽しいよ!
次はなんだろうなー!
アマツクニは海も近いそうなので、珍しい干物とかあると嬉しいな!
「んふふふ。次は珍しいものですよー! ふふふ。計画通りこの時間ならまだ空いてますね! では、食べ歩きにはもってこいのぉぉおおお!」
「サツマイモか!」
「サツマ……モイチップスですぅぅ! イモじゃなくてモイですぅう! お館様! 良いところを邪魔しないでください!」
ああ、ごめんごめん。
おーけーおーけーシオンの出番を奪わないよ。
そう言えばこの世界の芋はモイだったな。
甘い芋……といえば、この世界にはゴールデンモイがあるが、こいつは形が違って、よりサツマイモっぽい。
たぶんこいつも足はあるんだろうなあ……。
「全くもう。で、ですね。サツマモイの特徴は糖度の高さです。何とその糖度はバナナナと一緒! 薄切りにしたサツマモイを油で揚げて、ほんの少し塩を振っただけですが絶品ですよ!」
「これは……モイは太るんですが……うう。でも食べちゃいます!」
「ああ、甘い香りがたまらないわね」
「サツマモイってモイなのにこんなに甘いんすね! ゴールデンモイみたいっす!」
「ああ。だが、ゴールデンモイよりも蜜が多い上に、でかいから食べ応えがあるな」
縦切りに輪切り、更にはけんぴのような細切りまで……。
一つ一つがボリューミーなので、買うのは1つずつにして皆で食べる事にしよう。
ああ……チップスは水あめを纏わせたわけでもないのにパリパリ、ホクホクで、ほんのわずかな塩味がサツマモイの甘さを際立てている。
これはお土産候補だな。
サツマモイ自体を買いたいところだ。
シンプルな物も良いが、サツマモイを使ってモンブラン風のケーキにしても美味しそうだな。
そう言えば、サツマって、薩摩だろ?
サツマが……あるんだろうか?
なんか過去の流れ人が関係してそうな気がするな……。
「さてさて、お次は……って、シロさんは何を食べてるんですか?」
「ん。コロッケ。甘々美味美味」
おお、サツマモイのコロッケか。
中身が綺麗な黄金色だ。
サクサクホクホクで美味そうだ……よし。俺も買おう。
「あー! シロ、どこで売ってたんですか?」
「ん。すぐ隣。美味しい」
「私も買います!」
「じゃあ私も買うわ」
「ソルテ、自分の分も頼むっすー!」
「俺のも頼むー」
「では、私のも頼む」
「ちょ、私が知らない情報を……。み、皆さんまだまだ色々ありますからね!? サツマモイだけじゃあないですからね!? 次はアマツクニと言えばですから! とっておきもまだ控えていますから! まだ満足しないでくださいよ!?」
もう完全にアマツクニ美食ツアーとなっているが、皆も俺も楽しんでいるのでこれはこれで楽しいので良しだろう。
だが……こいつは、ちょっと次元が違ったな……。
「んふふふ。これはずるい。反則だろ……」
「ふっふっふー。お館様~? お口が緩んでおりますよ~? それすっごく美味しいでしょう?」
「そりゃあ緩むよ。美味すぎる……水だろこれって、思うほどに飲みやすいのに物凄い旨味が襲ってくる。厭味も雑味も無さ過ぎて飲みやすすぎるぞこれ」
『二十四代』か……こんな美味い清酒があったんだな……。
ああ、今まで飲んだ清酒だって美味いと何度も思ったのに、これだけはレベルが違いすぎる……。
一升だって余裕でごくごく飲んでしまえそうな程である。
「はぁぁぁ……これはやばいわ……。すいすい飲んじゃうわね……」
「昼間からこんないい酒を飲むなんて贅沢っすねえ……」
「良いお水を使っていますね……。とても美味しいです!」
「うむ。何杯でも飲めてしまうな」
「ツテを使って確保してもらっておいた私をさあ褒めてください! これ手に入れるのには有能な私でも数日を要するんです! あ、お土産用にもう一升ありますから、そちらは遠慮せず飲んじゃってくださいな!」
「うん。これは誉めるよ。シオンがいて初めて良かったって思えた」
「初めて!? え、あ、そういえば私まだ大して役にたってなかったですね! ま、まあ喜んでいただけたなら嬉しいですけど……やばい、もっと活躍しなくちゃ……」
更につまみは干した海の幸に、漬けられたねっとり感とシャキっとした歯ごたえのある山芋なんて、合わない訳が無い。
「シオンは飲まないのか?」
「私は護衛も兼ねていますし、今日は案内人ですからね。皆さんがアマツクニを楽しんでくれている姿を見るのが嬉しいので、今日は我慢しますっ!」
この味を知って我慢出来るのは凄いな……。
そして、それだけ俺達をもてなしたいという心遣いに感謝しないとだな。
「むうう。シオン、シロのは~?」
「流石にお酒は飲ませられませんからね。お米のジュース! ……と、思ったのですがシロさんはお肉の方が喜ばれるかな? と思いまして、お隣のアマツモームの串焼き屋にご案内します!」
「んー……ん。良きにはからえ」
「凄く偉そう……。ま、まあいいですけどね。ブラックモームも美味しいですが、アマツモームは更に一味違いますよ!」
「ん……ウマー。脂が甘い。これはタレより塩」
おお! それも美味そうだなー!
「はいこちらがお館様の分になりますー! 串から外して山葵とお塩で召し上がってください! あ、山葵はわかりますよね?」
「ああ勿論。山葵か……それも何本か買って帰ろうか」
チューブではなくすり下ろした本わさび……。
お刺身……醤油でお刺身……そして、この『二十四代』という半端なく美味い酒……くぁぁぁあああ! やばい。何かのお祝いまで取っておきたいが、この衝動は止められなさそうだ。
これで異世界の魚は生食できないとかやめてくれよ?
最悪、剥き身にしてでも食べてやるからなー!
※※※
はぁぁぁ……いい気分だ。
まだ太陽は空高く上ったままだというのに、いい具合に酔っぱらってしまってぽわっとしている……。
いやもう今日のシオンの案内に大満足である。
「はーいお館様。大丈夫ですか?」
「ああ……大丈夫~」
「しっかり捕まってていいですからね? お次は……絞めのだし茶漬けのお店に行きますからねー」
おいおいおい、ここで出汁茶漬けなんて食べたら俺の今日が終わっちゃうぜ?
もう一日の締めになって、夜までノンストップでぐっすりお休みして昼夜が逆転しちゃいますよ?
ああ、でも食べちゃう。満腹だけど絶対食べちゃいますわ。
今日シオンが紹介してくれたお店は全て美味しかった。
だから最後の締めに持ってきた出汁茶漬けも絶対美味しいってわかるんだもの!
ああー……アマツクニ、最高だ!!




