Xmasチャレンジ3回目 3
とりあえず、菓子作りは完了して配る相手の相談を済ませていざ出発!
地元アインズヘイルは皆に任せつつ、俺は遠くの人達へとプレゼントであるお菓子を、男用のサンタ服を着て配る事にしたのだが……。
「あー! もうー! 無理です! 嫌です! お姉さまとお義兄様にお会いしたいです! 甘えたいですー! お仕置……んんんっ!」
「コレン様……あまり無茶を言わないでくだされ」
「癒しが! 癒しが欲しいんですよう! なら、これが終わったらアインズヘイルに遊びに行ってもいいですか?」
「……まだまだお仕事が溜まっておりますので……」
「ああああー! もう嫌です! 女王辞めます! お姉さまとお義兄様の元に行きますー!」
「だから、無茶を言わないでくだされ……はあ。少し休憩に致しましょう」
「爺の馬鹿! もう知りません!」
……相当な状況に来てしまったな。
凄く……タイミングが悪かった、いやむしろ良かったのか?
「はあ……む?」
「おーす……」
「おお! これはこれは主殿! 今日はカサンドラ様に会いにですかな? 出来ればコレン様にもお会いしてくだされ!」
「あー……うん。そうするよ」
「では、暫く人払いをしておきますぞ。……2時間ほどで良いですかな?」
「いや、この後まだ行くところがあるからそんなに長居出来ないんだよ……」
「そうですか……。いえ、お会いできるだけで重畳でしょう。人払いは一応しておきますゆえ、よろしくお願いいたします……」
「あー……うん? あ、そうだ。これ、クドゥロさんにも」
「む? この匂いは……お菓子ですかな? ありがたくいただきましょう」
クドゥロさんの顔にも疲れがにじんでいるしな……。
恐らく甘い物も久しぶりだろう。
クドゥロさんも少し休んでくれればいいのだが……。
とりあえず、扉をゆっくり少しだけ開いて中の様子を覗き、ゆっくりと室内へと入る。
「……なんですか? もう休憩は終わりですか? ふん。いいいですよわかってますよ……やりますよやりますとも……」
「あー……そのー……おいっす?」
「へ? お、おおお、お、お義兄様!?」
前のめり!
というか、執務机を前転して越えてきた!
「お義兄様! お義兄様じゃないですか! どうしたんですか夜に訪問だなんて……お一人ですか? あ、もしかして……!」
「もしかしてではないんだよなあ……。ちょっと友人知人にプレゼントを配ってるんだけど……」
「プ、プレゼントですか!? わあ! 嬉しいです! なんでしょう? 開けてもいいですか?」
「いいけど、大したものじゃないぞ? お菓子だよお菓子」
俺の許可を得るとすぐさま梱包を開いて中身を確認するコレン。
中から出てきたのは、一人用の小さなケーキである。
「嬉しいですよう! はぁぁぁぁ……あれ? もしかして手作りですか?」
「ああ。皆で作ったんだが……」
「という事はお姉様も! はぁぁぁぁぁ……嬉しいです。とてもとても嬉しいです!」
「そっかそっか。喜んでくれたなら、こっちも嬉しいよ。それじゃあ、俺は次へ……」
「待ってください!」
……まあ、捕まるわな。
袖をきゅっと掴まれて、逃げるにも逃げられない。
「あ、あのですね。もしかして、先ほどの会話を聞いておられましたか?」
「……まあ」
「そ、そうですか。ああ、恥ずかしい。私としたことが飛んだ失態をお見せしてしまいました……」
「まあ、あれくらいは誰にでも……」
「いいえ! 私は女王です! 弱音などはいてはいけないのです! だからここは、私を叱れる方に叱って頂かないと……!」
「……なんで期待した目をしてるんだよ」
「き、期待した目などするわけがないじゃないですか!」
いや、してるよ?
凄くキラキラした瞳をしているよ?
スカートの裾を摘まんで、この後どうするのか俺にはもうわかっているよ?
じゃあ、手を上げてみようか。
「っ!」
ほらね。瞬時に机に手をついて後向くんだもん。
お尻を突き出して、スカートをまくりやすいようにたくし上げてるもん。
「はぁ……はぁ……。お仕置き……お仕置きされちゃう……。女王なのに、庶民のお兄様に、またお仕置き……」
もう入ってるわあ……。
俺の声などきっと届かないんだろうな……。
「きっと、ぐにょんと掴まれて……赤くなるまで……」
「……はあ」
ぺしん。
「はぅあ!!」
仕方ない。仕方ないんだ。
もうこれが一番早く帰る方法だろう……。
「コレン?」
「ひゃい! 自分でまくりますぅぅぅ!」
「お仕事は?」
「これが終わったらすぐにやりますぅ! だからぁ!」
ぺしん。
「はぅぅぁ! はぁ……はぁ……! もっとぉ……お願いしますぅ……。駄目なコレンを、もっとぉ……お兄様ぁ……」
……こうなってしまった責任は俺にもあるんだもんなあ。
せめて責任は取って仕事に影響がないようにしないと……。
……人払い、してもらっていて良かったな。
というか、お菓子よりもこっちの方が喜んでいる気がするのは……気のせいであってほしいけど、望み薄だよな……。
※
「……」
「……」
暗い執務室。
机の上のランプが目の前の男の悪い顔を照らす。
「……おかしいな。この部屋の前には護衛がいたはずなんだが……」
「ん? 寝てる」
目頭を押さえて何か考えた顔をする悪い顔をした男、ダーウィン。
考えていても悪い顔をしている。
「……寝かせたの間違いだろう? おかしいな……あいつら、冒険者ならAランクでもおかしくないはずなんだが……」
「まあまあだった。襲ってきたから返り討ち」
「そうか……まあまあか……。次からは普通に部屋に入れてやれって言っとくよ……。で、俺に何の用だ?」
「ん。主からプレゼントを持ってきた」
魔法の袋をがさごそして、ダーウィン用のお菓子を探す。
取り出した時に逆さまにならないように気を付けて取り出す。
「……は? それだけか?」
「ん」
「……次からは先に用件を言ってやれ。お前さんが来たら暗殺にでも来たのかと護衛が警戒しちまうわ」
「ん?」
「なんでもねえよ……。で、プレゼントってのは?」
「主特製お菓子」
「甘い物かよ……」
「んーん。大人向けのビターな奴って言ってた」
「……相変わらずそういう気は回る男だな。人選は間違っているが……まあ、ありがとよ?」
「ん。ではさらば。シロサンタは次へ行く」
任務完了。
次は孤児院の子供達。
もう寝ているはずだから、マザーに渡しておくとする。
「……マジで菓子だけ渡して行っちまいやがった。しかし、菓子ねえ……ってか、でけえよ……一人で食いきれねえよ。ちっ、おい、誰かいるか? ダーマとメイラを呼んでくれ……お父様がらしくない家族団欒をするってよ……」
こうして、この日はダーウィン一家にとって、色々な意味で恐ろしい出来事が起こったのだった。
ダーウィン一家で、まさかのケーキを切り分けて食べるという……一部の養子の間では、これが行われると一人前と認められる儀式だとか勝手に噂になってしまったのだった。
短め!
相変わらずの人。




