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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
11章 帝国満喫
308/444

11-21 シュバルドベルツ帝国 私がバニーですよ!

はあ……はぁ……。


「あれ? なんでお店に入っただけで疲れているんですか? はぁはぁするような事はこれからですよ?」

「見てただろ……。もみくちゃにされたからだよ……」

「あはは。凄かったですね。でもお客さん的には気持ちよかったのでは?」

「あのなあ……何でもかんでもエッチであれば良いという訳じゃないんだよ。俺にだってこだわりはあるの!」

「なるほどなるほど。それでは私のこの姿はどうですか? お客さんのこだわりに入れますか?」


そう言うと案内人さんは立ち上がり、俺に見せびらかすようにポージングをして見せる。

谷間を強調した後は、タイツに包まれた上等な太ももを見せつつ後ろを向いて体を捻り、バニー服と網タイツに包まれたお尻を強調するようなポーズである。

正直、ありかなしかで言われれば……。


「……似合ってるよ。ありだあり」

「おお! 素直な反応は意外でした! でも嬉しいです!」


振り向いて喜んでみせると、ぎゅううっと自分の谷間に顔を押し付けるようにする案内人さん。

ああ、もうこうなったらとことん楽しもう。

ベリーダンスのお店も楽しかったのだし、こちらもステージはあるようなのできっとショーもあるのだろうしな。


「あら、本当にお気に入りだったのね。貴方が自分から抱き着くなんて……」

「勿論です! 私の初めてはこの方に捧げると決めてましたからね!」


先ほどの店長らしき兎人族のバニーお姉さんがお酒やフルーツ、小さめの骨付きのお肉などを持ってきてくれてテーブルに並べていく。


「そう。なら、その方をたっぷりとおもてなしになってね。じゃないと……他の子に取られちゃうわよ?」


ちらっと視線を向けた方を確認すると、ステージの横の暗幕の方からバニー耳を付けた子達がずらり……。

俺の視線に気が付くとさっと頭を引っ込めるのだが、耳だけ残っていた。


「ふふふ。英雄チケットの持ち主だもの。皆興味津々なのよ。勿論、私も。だから私を選んでくれてもいいのだけれど……VIPルーム、一緒に行きます?」


VIPルーム?

そこに行くとどうなるのでしょうか?

妖艶な兎人族のお姉さんがぴょんぴょんしちゃう感じですか!?

お姉さんまだ若そうなのになんか淫靡な雰囲気がむんむんなんですけども!


「だーめーですー! 行くなら私と! 私と行くんです!」

「あら? 決めるのはお客様よ?」

「ね? ね? お客さん! 私がいいですよね? 私でいいですよね!」


ぱいに押し付けられた顔を引き上げられて両頬を抑えられると泣きそうな顔で懇願する案内人さん。


「あー……可哀相なので案内人さんにします……。あと、VIPルーム? は、なんか怖いのでとりあえずこっちで……」


ステージ正面の最前列にあるこの席よりも上のVIPルームでは一体何があるのか気にはなるが、おそらくこれ以上は18禁な展開が待っていそうだから遠慮しておこう。

俺、楽しむとは決めたけど理性はあるからね。

この後帰ったら皆で食事やお風呂なども待っているのを分かっている男だからね。


「残念……。では、存分に楽しんでらしてね」

「うわーい。なんか哀れみで選ばれましたけど良しとしましょう。あ、ちなみに本日のお代はサービスらしいです!」

「え、いいのか? 普通に料金は払うつもりだったんだが……」

「勿論です。英雄さんが街に来たのに店に訪れなかったという不名誉に比べたら全然良いらしいですから。好きなだけ食べて、好きなだけ飲んで、好きなだけ女の子……私と遊んで楽しんじゃってください!」

「へえ……じゃあ、フルーツ頂こうかな」

「無視!? 酷い! 相変わらずお客さんはお客さんですね! あ。わかりましたよー。フルーツを食べさせて欲しいんですね? もう。あ・ま・え・た・が・り」


お、このマスカト美味しいな。

こっちは……デポコン?

……紛らわしい!


「あ、ショーが始まったみたいだな」


目の前のステージには数十名のバニーさんが現れ、ダンスではなく各々がそれぞれ扇情的に踊っている。

そして視線はこちらに向けられており、お客さんへ向けてアピールをしているようだ。

なるほど。ここでアピールをしてお客さんが気に入った子を横につけるのか。


「ちょいちょいちょおおおい! 何無視してるんですか! 甘えたがり。とか言っちゃった上にウィンクまでして恥ずかしいじゃないですか! あーもうデポコンくらい私が剥きますよ!」


おお、あっという間にデポコンが剥けてしまった。

皮が厚い系の柑橘類って剥くの大変なんだよな。

あ、白いの取ってくれてる。


「はい。出来ましたよ」

「お、ありがとうー」


案内人さんが剥いてくれたデポコンは中の皮も剥いてくれていて中身を出して食べやすくしてくれていた。

あれ? 中を出すのなら白いの剥かなくても良かったんじゃ?

しかし、それを受け取ろうとしたのだが……さっと避けられてしまう。


「お店なんですからサービス受けてくださいよう。そうしないと帰してもらえませんし、あーんです」

「……あーん」


郷に入っては郷に従えというか、有無を言わさずこの方法以外では食べさせないという気がしたので、諦めるように口を開ける。


「ん……っ」


案内人さんが指を引いてくれず、指先に唇が触れてしまう。


「んふふ」


それを分かっていて案内人さんは自分の分を食べ始め、見えるように自分の指先も唇につけていた。


「やーん。間接チューしちゃいました。これはもう既成事実という事で、直接してしまっても変わりないのではないでしょうか?」

「あるだろ」

「ですか……相変わらず堅いなあ。ちぇー。あ、何か飲みますか?」

「あーじゃあ、ラガーを頼む」


結局ラガーはあの店以外のは飲んでいないんだよな。

まあ、あれだけ美味い店のラガーを飲んだら、なかなか他所のラガーに手を出せなかったのだが、高級店だというこのお店のならばきっと美味いだろう。


「はーい! 私も飲んでいいですか?」

「ああ。飲みな飲みな」

「わーい! ありがとうございますー! どうせお店持ちですし、高いお酒を飲んでしまいましょう! あ、お客さんも一口飲んでくださいね? 後で私しか飲んでないと請求されても困りますので!」


本当、そういう辺りは相変わらず肝が据わってるよなあ……。

ほらほら、店長さん顔引きつってるよ。


「わはー! 来ました来ました! ああ……クリムゾンルビーラガー……幻の紅い小麦、『レッドルビークリムゾン』100%の超高級ラガーですよ……。ああ、美しい……」

「凄いな……」


紅く透明な色のラガーがシャンパンのようにガラスのグラスに注がれて、泡がゆっくりと昇っている。

まさしくルビーのような輝きに、思わずどんな味か気になってしまった。


「さあさあ、お客さん。まずは一口私のをお飲みくださいな!」

「え、いや、俺のもあるじゃん……」

「私はお客さんの飲みかけを頂くだけですから!」


ああ、徹底して料金を払わないようにしているのね……。

仕方ない……。


「ん……。おお……」


濃厚で口の中に広がる芳醇な麦の香り、胃に落ちてなお存在感のある重厚さ。

思わずおお、と声に出してしまう程の衝撃を感じる。

生命力にあふれている……そんな感覚を味わうようなラガーだ。


「生きてるみたいだ……美味い」

「ふふふ。良く気づきましたね。収穫され、加工されてなお生命力にあふれた麦。それがレッドルビークリムゾンです。美味しいだけではなく貴方の血肉となり、体を活性化させてくれる薬効もあるんですよ」


酒は百薬の長とは言うが、まさしく薬効まであるとは……。

言われた通り、酔いではなく体がぽかぽかしてきたな。


「ちなみにそれ、一杯時価です。今日は安めで大体20万ノールくらいですかね」

「20……安めでも高いなあ……。その価値が無いとは言わないが、それでも普段じゃあなかなか手が出せないな……」

「えへへへ。私も流石に飲んだことはなかったんですよー。自分のお金を使ってまで飲みたくなかったですし! 流石になかなか奢ってもらえませんし。それじゃあ、私にもくださいなー! あ、口移しでもいいですよ? しちゃいます?」

「しません……。ほら」

「ちぇー。わーい!」


本当、コロコロと表情の変わる豊かな子だな。

案内人さんはグラスを受け取り、まずはグラスを揺らして目で楽しむとくいっと一口。


「んんー……はぁぁぁ……ああ……体に染みわたります……熱くなっちゃいますね」

「そっちも美味そうに飲むなあ……」

「いやあ、だって美味しいですもん……。あ、お客さんの飲み口から飲んでしまいました。間接チュー二回目ですね。これはもう直接チュー一回分扱いでは?」

「そんな制度はないよ」

「ちぇー。んふふふ……ああ、何故でしょう。ぞんざいに扱われているのに、やっぱりお客さんと話すのは楽しいですねえ。あはは」


グラスを持ったまま俺へと寄り掛かってくる案内人さん。

横顔を見ると、俺が向くとわかっていたのか視線を合わせて微笑んでくる。

何故か少し照れてしまって、俺は視線をショーへと向けた。


「それにしても英雄チケット……英雄ですか。私が去った後にロウカクで何があったかは知っていますが、まさかお客さんが解決なさっていたとは……」

「俺は何もしてないよ。シロ達皆の活躍だって」

「んふふふ。その主さんはお客さんでしょう? やはり、私の目に狂いはなかったですね。目を付けておいて正解でした」


酔っているのか密着度がどんどん高くなっており、膝の上に手を置かれる。

また、つい視線を向けると今度は少し熱がこもったような瞳で俺をじいっと見つめていた。


「……ねえ。本当にVIPルームに行きませんか? ベッドもありますし、今なら……誰も邪魔しに来ませんよ?」


上目遣いで少し紅く上気した頬で誘う案内人さん。

男ならばここまで据え膳を用意されれば、断るのは失礼……なのだがな。


「酔ってる……?」

「ええ。勿論酔っています……だから、雰囲気に流されたい気分なんですよ。でも……勇気を出してドキドキはしています」


そういうとグラスを置いて俺の手を取り、自分の胸に当てさせて鼓動を手に響かせてくる。

ドッドッと早鐘を鳴らしているのは流石に、偽れないだろう。


「……案内人さんは、俺の事が好きな訳ではないんでしょう?」

「うーん……少し意固地になっているところはあるかもしれませんが、お客さんの事は嫌いじゃないですよ? どちらかと言えば好きと言えます」

「それはお客さんとして?」

「意地悪な質問ですね……。そうですね……今はどれだけ貴方が他のお客さんとは違うと思っても、どれだけ楽しくて、お別れした後またお会いするのを楽しみに思っても、お客さんとしてです……」


俺の手からそっと手を放し、もう一度グラスを手に取ってゆっくりと揺らし、それを見つめて案内人さんが続ける。


「私、人生をかけてでも手に入れたい物があるんです。それを手に入れるためにお金を稼いでいるのですが、まだまだ遠く、お仕事を続けなければいけません。だから……どうあっても、やはりお客さんとしてになってしまいます」

「そっか……」


微笑んで見せる案内人さん。

何故だろう。

少しだけ、悲しそうに見える。


「お客さんは……お客さんでは嫌ですか?」

「割り切った関係っていうのもあるとは思うし、そこに偏見とかはないんだけどね……。ただ、案内人さんとはそういう関係ではしたくはないかな?」

「……もう。口説いてるんですか? 私は……お客さんとしてだって言っているじゃないですか」

「今は……って言ったよね?」

「……耳聡いですね。あーあ……知りませんよ? 勿体ぶって他に良いお客さんを見つけて、その人に捧げちゃうかもしれませんよ?」

「そうなったら、流石に諦めるかな」

「……駆け引きがお上手のようで。私も見習いたいですね。弟子入りしたら、教えてくれますか?」

「教える必要もないと思うけどな……。案内人さん、酔ってないだろう?」

「……本当にいけずですね。……今日だけ。一瞬だけはお客さんではなく特別にしますから……それでは、駄目でしょうか?」


ゆっくりと、案内人さんの顔が近づいてくる。

薄らと開いた瞳と唇に、何をしようとしているのかは分かっているが俺はそれを止めず――そっと……。


「……主」

「「っ」」


シロの声が聞こえ、反射的に離れてしまった。

そして、声のした方を向くと……やはりシロが……。


「遅かったから心配した……と、思ったら……。はあ……また他の女に(うつつ)を抜かしている……」

「いや、その、これは……」

「し、シロさん……どうやってここにっ! ここは超厳重な警備がしいてあり、窓一つなく侵入経路も無いはずですが!?」

「ん? 正面突破。それよりも案内人……ロウカクでも主に手を出していたよね」

「ギクゥ! 手、手は出していませんよ!? 勿論全部冗談ですし! 今だってギリギリでしたし……! あ、私用事を思い出した気がします!」

「逃がさん……」

「ぎゃああ! 逃がしてください! 後生ですから! まだ何もしていませんからー!! お客さん助けてー!!」


ああー……すまん案内人さん。

助けようにもその速さに俺は対応できないよ……。

合掌して無事を祈ります……。


「主。外、皆いるから」

「あ、はい……」


他人事ではなかったようだ……。

言い訳を考えながらお店を後にするのだが、言い訳が……。

とりあえず、買ったバニー服の参考にするためにと苦しい言い訳をするのだった……。




ひぃひぃ……シロさん苛烈すぎますって……。

あの人なんであんなに強いんですか? 攻撃全く当たりませんし、超スピードで接近しておいて柄で突つくだけとか、いつでも殺せるって言われているみたいで凄く怖いんですけど……。

戦っても絶対勝てない相手っているんですね……。

私これでも結構やり手だと自負していましたのに、自信喪失してしまいます……。

これからは脱兎の如く逃げねばなりません……。


あーあー……それにしても……あと少しのところでしたのに……ううう、悔しいですね……。

時間をかけすぎてしまいました。

とっととVIPルームに連れて行ってしまえば……。


でも……ちょっとだけ、触れましたよね。

自分の唇に指を触れ……なんて、乙女チックな事をしてしまいました!!


やー! なんでしょうね。この達成感と高揚感!

私実は結構乙女だったんでしょうか?

やー大きな一歩前進じゃないですか! キャー!

チューでこんなとかもう、私超乙女! やー!


「……」


……はあ。


「なんですか? 私今とても気分がいいので邪魔しないで欲しいんですけど」

「……」

「わかりますよ貴方達の気配くらい。衰えてなんていませんし。はいはいわかってますよこのまま直接行きますよ。まったく……王国に入った途端これですか……。相変わらず陰気臭い連中ですね」


って、もういないし……。

やれやれ……せっかく楽しい余韻に浸っていたのに次のお仕事は古巣の一つとの共同ですか……。


お姉ちゃんからも依頼がありましたけど、申し訳ありませんが、先約優先が商売の常ですので……。

例え報酬的にお姉ちゃんの方が魅力的で高くとも、商売は信用です。

業界に広まるとお仕事無くなっちゃいますからね……。


まあ……『オボロ』との共同のお仕事なのはネックですけどね。

あいつらこそこそしていて気配も薄いですし暗くて陰湿ですから嫌いなんですよね……。

そのくせ義理堅く任務に忠実な人形のようで面倒くさいですし……。

どうせ古巣との共同任務なら『シノノメ』のお姉さま方に房中術のおさらいをしていただきたかったですよ。

そうしたら次に会った時にもっと上手く誘惑できるのに……。

はあ……次はいつ会えますかね……?

約束を取り付けていない辺りがいいですよね。

会えた時……思わず運命を感じて、喜びが増えますからね。

……運命とか私は乙女ですか!


……とはいえお仕事はお仕事ですからね。

私の夢……あの二振りの刀はお金さえあれば手に入るのですし、もう少しの辛抱だと頑張りますか!

わりと重要なお話。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしかして陰陽刀…?
[一言] お金を出しても手に入らない方、イツキさんが隼人から借りてる中にあったりして。
2021/03/17 16:22 退会済み
管理
[一言] あれ? シャラララには、『愛の蜜』の二人はバイトで入ってないんですね。
2021/03/17 16:12 退会済み
管理
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