あけましておめでとうございますSS
クリスマス SSが出来なかったのでやりました。
はい!いつも通りルール説明!
時系列等無視。
ノリと衝動で書き記したのでツッコミは控えめで!
推敲少なめ!
お正月要素微!
本編進めろ等のお言葉は総スルーさせていただきます!
それでは皆様!
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!
ああー……寒い……。
なんだって、こんな寒空の夜に外に出なければいけないのだろうか……。
お家でおこたでオランゲ食べたい……。
贅沢を言うのならば、炭を使って網で餅を焼いて海苔を巻き、醤油で食べたい……。
でも、米はあってももち米じゃないんだよな……。
あとはアイスかな。
暖かい部屋で食べる冷たいアイスの絶妙な組み合わせの妙たる贅沢な美味さよ。
レイディアナ様も推奨する組み合わせなので、これは間違いないだろう。
ついでに言えば、温泉で芯まで体を温めた風呂上りが理想的だ。
もちろん皆と入るわけだが……。
だが、現実は暖かくて温かい妄想とは違って、風が吹けば思わず目を瞑ってしまうほどに寒いんだよな……。
「主君寒いのか?」
「さ、さぶ、寒すぎる……」
「こちらに来るといい。私の体は特別温かいぞ?」
「おおお……頼む……」
凍える体でアイナにゆっくりと近づくと、ぎゅっと前から抱きしめられる。
アイナの言うとおりアイナの体温の温かさもあるのだが、更に体温とは違う火のような暖かさが2重となって体を包み込んでくれた。
「ふふ。随分と冷えたようだな主君」
「あー……温い……」
「む? もっと強い方がいいのか?」
俺がアイナの体をより密着させようと力をこめると、アイナもそれに呼応して強く体を押し付けてくれる。
今日のアイナは鎧をつけていないので、おっぱいの柔らかい感触と暖かさで心も体もポカポカになりそうだ。
「むぅー……アイナさんずるいです」
「ウェンディはロウカクの際に自分の体を使って主君を冷やしただろう? 適材適所というものだ」
「それはそうですけどぉ……」
「ん。シロも子供だからきっと体温が高いと思う。適材適所」
確かに膝上によく乗ってくるシロの体はいつも温かい。
だが、残念ながら少しだけサイズが足りない……。
まだ俺も完全には温まっていないのだ。
「おー。でも、この温さからはまだ出たくない……もう少しだけ暖まってからな」
「ふむ。ならば少ししたらシロと代わろうか。主君の体と離れるのは惜しいがな」
「ん。ありがとアイナ。シロも今度なにかで分けっこするね」
「ふふ。ありがとう」
あああー……温かいし柔らかい。
周りの視線が気にならないわけではないが、今は四の五の言っていられる状況じゃない。
ポケットに魔力球をカイロ代わりに仕込んでいるのにも拘らず寒いのだ。
どうして俺が今こんなにも辛く壮絶な想いをしているのかというと、これはこちらの世界式の新年の迎え方だそうだ。
年を越す際に街の外に皆で出て、その瞬間を皆で集まって祝うのがこちら流らしい。
まあ、元の世界でもお参りなど似たようなことがあるが、俺は年越しは温かいお家でゆっくりしたい派だったからな……。
お参りなんかは人が空いた頃に行くのが俺の新年スタイルなのだ。
だが、郷に入っては郷に従えと言うし、アイナ達はずっとこの迎え方をしていたと言うので、俺も流儀に従うことにしたのだ。
出店もかなりの数が出ており、寒さ対策に温かい飲み物や食べ物が多く売り出されているのだが、皆寒そうに体を震わせているようであった。
すると、こちらに向かって三人ばかりが駆け寄ってくる。
「……ねえ、皆の分の飲み物買ってきたのになんでいちゃいちゃしてるのよ!」
「そうっすよー! なんで抱き合ってるんすか! アイナずるいっす!!」
「はぁ……寒い。はい旦那様。ホットリンプル酒よ」
「ありがとうミゼラ……。うう、温かい……やはり寒い時はこれに限るな……」
買出しに行ってもらっていたソルテ、レンゲ、ミゼラが両手にホットリンプル酒とホットリンプルジュースを手に戻ってきた。
シロはジュースの方を受け取って口をつけたのだが、思いのほか熱かったのかピッ! と言って舌を出して尻尾を逆立てていた。
やはり猫舌……。
「ちょっと、私達にも言いなさいよ!」
「そうっすよー! めっちゃ寒いし列長かったんすからね!」
いやまあレンゲとか太もも全開の普段着のままだし、そりゃあ寒いだろうに……。
『鍛え方が違うんすよー! 普段着でも動いてれば余裕っすー!』とか言っていたのにな……。
「おー。二人もありがとな」
「それだけっすかー!? もっとほら! この寒さをひっくり返すくらい情熱的に肉体的なお礼を! 具体的には今アイナにしているみたいにぎゅっと! 絡み付くくらいぎゅっとー!」
「そうよそうよ! あそこすごく風通りが良くてとんでもなく寒かったんだからね! 主様の体で温めるくらいしてもいいじゃない!」
「残念ながら次はシロの番。順番は守ってもらわないといけない」
「なんでよ! あんたなにもしてないじゃないの!」
「シロのお仕事は主の護衛。主には何もなかったのだから、シロは仕事をまっとうしている。ほぉ……甘くて美味しい」
シロはちびっと飲んだホットリンプルジュースでほおっと白い息を吐き出した。
「そうだな。シロは仕事をしていたのだし、順番的にはシロが先だろう」
「あ、その次は私ですよ? そしてその次はミゼラです」
「なんでよー! せめてミゼラとは平等でしょ!」
「ミゼラがご主人様に飲み物をお渡ししていましたからね。順番は大切です」
「私は別に最後でも……」
「本当!?」
「んー……あ! 自分が最後でもいいっすよ! 最後はたっぷりねっとり時間を取ってもらえそうっすし!」
「レンゲ? 一応言っておくが、二周目はあるからな?」
「ええ!? じゃあ駄目っす! 早いほうがいいっす!」
あー……ぬくぬくだ。
アイナからシロに代わり、後ろから覆うようにシロとくっつくとシロも温い。
温かさで言えば、アイナのほうが温かいのだが、シロは俺のコートの内側に入り顔だけを出しているので隙間風が入りにくいのだ。
さて、年越しまではまだ時間もあるようだし、テーブル付の椅子に座ってまったりしつつ、街の人たちをぼーっと見る。
皆寒そうだが、顔には新年を無事に迎えられることを喜び、夜に外に出ることが少ない子供達はきゃっきゃと寒さも関係ないようにはしゃぎまわっていた。
しかし夜なので警備兵がしっかりと目を光らせているようで、親達も安心しているのだろう。
アインズヘイルの兵士達は皆優秀だからな……領主がアレな分自分達がしっかりしないととか思ってそうだな……。
そんな風に思っていると、俺の目の前を黒い長髪を揺らしながら一人の女性が通った。
和服のような雰囲気を思わせる印象で、腰には刀と思われる細身の武器を下げている。
そして、その人の胸はおっぱいだった。
「む? おや、そこにおりますのは確か、隼人殿のご友人の……」
「っ! ん? おお、ユウキさん! お久しぶり!」
やばいおっぱいに向けた視線に気がつかれたかと一瞬あせったが、黒髪おっぱいさんはユウキさんだった。
アマツクニの豪商の娘さんで、定期的にお米を送ってくれる俺にとってお世話になりまくりの女性である。
「お久しぶりです。おや、そちらはシロ殿でございますな」
「ん? 誰?」
そういえばシロは出会ったことはなかったな。
というか、俺以外会ったことないか。
「ははは。さすがはシロ殿。某も武術大会には出ていたのですが、隼人殿に呆気なく負けてしまいましたからな。それでは初めまして。某はアマツクニ出身の冒険者、ユウキと申すものです」
「ん。アマツクニ? ああ、主にお米を売ってくれる人。シロもお米好きだよ」
「それはそれは! 米は我がアマツクニの名産品でございますからな。是非いずれアマツクニに来て輸出不可の最上位米を味わってくだされ!」
「おお……最上位米……主」
「おう。必ず行こう」
輸出不可の最上位米……なんだその日本人の心をくすぐりすぎるフレーズは。
ただでさえ貴重で、食べられるだけありがたいお米様の最上位だと……。
食べに行くに決まっているじゃないか。
アマツクニ……色々な意味で楽しみだ!
「むむ? おお! そちらは紅い戦線の皆様ではないですか。もしかして、お兄さんとお知り合いだったので?」
「いや、全員俺の恋人だ」
「なんと……!」
恋人と言われて顔を綻ばせる三人と俺を驚愕のまなざしで交互に見るユウキさん。
「もしかして、そちらのお二方も……?」
「はい。そのとおりです。私はウェンディと申します」
「あ、ミゼラです。その……一応、はい……」
「おおお……恋人が5人」
「ん。シロも。……まだ子ども扱いだけど、いずれなる」
「6人ですか……。なるほど。確かに欲望に忠実な方なのですね」
「……それ、たしか言ってたのオリゴールだったな。……他に余計なことは言っていなかったですかね?」
「あーえっと……私に接近してくれるなと……落としにくるぞと……」
「……にゃろう」
会ってもいない頃から猜疑心を埋め込んでくれやがったのか……。
確かにユウキさんはいいおっぱいだ。
更には間違いなく黒髪の美少女である。
だからといって俺は誰かれかまわずちょっかいを出すような軟派な男という訳ではない!
「その……私の好みは強い男性なので……ごめんなさいっ!」
「何もしてないのに振られたんだが……。ん? つまり、隼人は好みって事か?」
「なっ! いや、そういうわけじゃ! 確かに隼人卿には負けてしまいましたし、容姿端麗な上に英雄と呼ばれていますし、お優しいですし、憧れはありますが、そんな好きだなんておこがましいといいますかその……」
あー……うん。
これはもうばっちり好きだろう。
あっという間に頬を押さえ、この寒空に蒸気が上がるんじゃないかってくらい顔を赤くしているのだ。
「……あ、隼人」
「なっ!? そ、そそそんな訳ないでしょう!? ここはアインズヘイルですよ!? 隼人卿がアインズヘイルにいるわけ――」
「イツキさーん!」
「ななーっ!」
本当なんだよね。実は隼人も呼んでいたのだった。
思った以上に寒かったらしく、防寒具を皆で買いに行っていたのである。
「あれ? ユウキさんじゃないですか。こんばんは」
「こ、ここここんばんは……」
おー……隼人の爽やかイケメンスマイルに見事に真っ赤である。
今度こそ頭から蒸気が発生している。
「どうしたんですか? 具合でも悪いのですか?」
「いい、いや、そんな事は! だだだ、大丈夫です!」
「そうですか……?」
「そうです! そうですとも! いやあ、それにしても寒いですね。こう寒いと温かい七輪でお餅など焼きたくなりませぬか!? たまたま持ち合わせているので焼きましょうか!」
あははは。
見事なまでに焦っている……餅?
「お餅があるの!?」
「はあ、えっとありますが……! 焼きますか!?」
「いっぱい?」
「え? ええ、まあいっぱいですね……」
「焼こう。すぐ焼こう。七輪は俺が用意する!!」
錬金・土こねこね・炭ぽい・火入れ・完成。
「よし!!」
「……早すぎるでしょ」
ミゼラの突っ込みはスルーだ。
今はお餅を焼くのが最優先!
他の人達も街が用意した暖房魔道具や焚き火に集まっているし、人によっては簡易調理道具も持ち込んでいるのだから七輪くらいは許されると思う。
というか、オリゴールに怒られても餅を分ければ許してくれるだろう。
「お餅ですかぁ。確かに新年にお餅はいいですね」
「隼人卿もお好きなのですね……。では、私から提供という形をとらせていただきましょう。皆様お好きに召し上がってくだされ!」
「ありがとうございます。ユウキさんにはお世話になりすぎてますね。今度何かお礼をさせてください」
「お、お礼なんてそんな……」
「いえ、必ずさせていただきます。何がいいですかね?」
なにやら二人の雰囲気がいい感じになっているのかもしれないが、そんな事よりも餅だ!
さて、何を作ろう。
醤油で磯辺餅は確実として、大福屋から以前分けてもらった大福用のあんこでお汁粉……それと出汁で作る雑煮もいいな。
団子じゃないが、みたらしもできるか……。
あーこうなってくるときな粉も欲しいが、これ以上は贅沢かー!
七輪の炭が熱を帯び、餅を焼き焦がしながら膨らませていく。
その隙に別で調理用に七輪のようなものを用意し、こちらには薪をくべる。
「だから早いってば……。参考に出来ないじゃない……」
いやミゼラさん? これは別に参考にするほどのものじゃないから参考にしなくていいからね?
アイナに火を貰ってお湯を作り、乾燥した海草と干した野菜で出汁を取る。
更にもう一つ、あんこを火にかけて水を注ぎ、木べらで伸ばしながら塩を一つまみ入れておく。
「あの、何かお手伝いましょうか?」
「お、クリス助かる。それじゃあこれ混ぜといてくれ」
「はい。甘くておいしそうな匂いですね」
「ああ。あんこはこっちでも手に入るから、手に入れとくと隼人が気にいると思うぞ。ちなみに、アマツクニ産だから頼めばユウキさんが用意してくれるかもしれん」
「おおー。わかりました。今度必ず手に入れておきます」
「ご主人様。私もなにか……」
「私も……」
「じゃあウェンディは鳥肉を一口大に切っておいて貰えるか? ミゼラは人数分の皿を洗っておいて貰えると助かる」
「はい。お任せください」
「了解。結構あるわね……」
「皿洗いくらいなら手伝うっすよー!」
「そうね。それくらいなら出来るわ」
よしよし。順調だな。
その間に俺は野菜を切ろう。
新年を迎えるものなので、飾り切りである。
紅葉、星、ウサギに白鳥、象に地龍に女神様となんでもござれだ!
「なんと……器用な真似をなさいますな」
「ん? あれ、お礼の話は終わったのか?」
「っ……ええまあ。今度隼人卿のお家にお呼ばれさせていただくことになりました……」
「おー。よかったね。俺からも何かお礼したほうがいいかな……?」
「いえいえ十分です!! ええ、本当に、むしろこちらからお礼を差し上げるべき事象が起きたといいますか……。まさか隼人卿と新年を迎えられるとは……」
その表情からは喜びを隠しえない様子が窺える。
……もしかしたら、次から隼人に会う時にはユウキさんが一緒にいるかもしれないなあ。
あい変わらず隅に置けない男だねえ……。
「よっし。それじゃあお好みな方をどうぞ! 黒いのが甘いの。透明なのがしょっぱいのだからな。おかわりは全員分ないから、好きな方を取ってくれ。余ってたら早いもの順だ。あ、あと餅は少量ずつ良く噛んで食べるように。喉に詰まらせるぞ」
全員がいい返事をしたのでおそらく大丈夫だが、ちゃんと見ておこう。
餅はそうしないと危険だからな。
普段食べなれてもいないだろうし、注意喚起は大事である。
それぞれが好きなのを取っていくのだが、やはりお汁粉が人気だな。
女の子の比率のが圧倒的に多いし、女の子は甘いのがお好きと……。
俺はお雑煮だが、隼人はお汁粉だけど。
それと、磯部餅は大量にある。
「はぁ……お汁粉が温かくて甘くて美味しいです。お餅も弾力が凄いですね。美味しい……」
「そっかそっか。こっちの雑煮もいい味だぞ。しかし、真達も来れれば良かったのに。勿体無い」
「仕方ありませんよ。ダンジョンにいるのでは、連絡も取れませんしね」
真達は残念ながらダンジョンに行っているらしく、今回は来れなかった。
そんな日に限ってこうしてお餅を食べるイベントがあるのだから、真らしいというか……。
ユウキさんに多めにお餅をいただいて、今度食べさせてやるか……。
「ほう……これはうまい。ぜひレシピを教えていただきたいです」
「お、ユウキさんも雑煮派か。いいよいいよ。いくらでも教えますよ」
基本はただ出汁を取って塩で味を整えるくらいだからな。
レシピと呼べるものではないが、アレンジは自由なのでそれだけ教えておこう。
「ありがとうございます。お汁粉は祖国にもあるのですが、塩を一つまみ入れるのですね。そちらも食べたかったのですが、残念ながら今回は諦めましょう」
「あ、それなら一口どうですか? 僕の食べかけになってしまうんですが……」
「なっ……!」
隼人が餅を持ち上げると粒あんがしっかりとついた餅がうにょーんと伸び、その背後には隼人の笑顔がある。
ユウキさんは餅と隼人を見た後、なぜか俺の顔を見てどうすればいいかと問うて来るので、どうぞと手で示すと顔を真っ赤にしながら小さく口を開ける。
「はい、あーん」
「…………あーん」
聞こえるか聞こえないかほどの声で呟き、小さくお餅を齧るとしっかりと咀嚼を繰り返すユウキさん。
……おそらく、味はよくわかっていないだろうな。
「ご主人様。こちらも召し上がりますか?」
「お。ありがとうウェンディ。貰おうかな」
俺も味見程度だったし、餅と一緒に食べた感じは味わいたかったんだよね。
隼人と交換しようとも思ったのだが、今この状況じゃあ言えないもんな。
どうぞごゆっくり。
「……それなら私のでもいいでしょ?」
「自分もこっちの黒い方っすよ!」
「む。温かさならば私のが一番温かいはずだぞ?」
「ん。シロもお餅まだある。主にあげる」
「……私も。こんなには食べられないから……」
「いや待て。そんなには食えないからな? こら、やめろ。やめなさい! 全員が持ち上げるな! いっぺんに食べたら喉つまるから! 一個一個が小さくても合体したら大きい塊になっちゃうから! 順番! せめて順番にして!!」
早口で一生懸命迫りくる危険から逃れようとした。
勿論彼女達も危ないとわかっているのですぐに引いてくれたんだが……。
隼人の方はユウキさんと隼人の様子に気づいた皆で、ばっちりあーんを行っていたんだよ。
だから、その後……俺はがんばった。
列を成し、順番に並ぶ皆の期待に答えるべくなるべく早く咀嚼を繰り返してがんばったんだ。
そのプレッシャーに押され、いつの間にか新年を迎えていたわけだが……お汁粉の味はよくわからなかったよ……。
情報解禁されていたので宣伝を。
5巻は2月刊になる予定です。
また、コミックス1巻と同時発売致しますので、どちらも是非!
特典情報なんかも出せるようになればお知らせします。
……まあ、まずはその特典を書かねばならぬのです。
楽しんで頂けるよう頑張りますー!




