閑話 一方その頃…
主人公が一人で王都に行っていた際のミゼラ視点
これは、旦那様が王都へ行く事となった時のお話。
旦那様の護衛を買って出てくれたフリードさん。
確か旦那様をボコボコにしていた人よね……。
その為アイナさん達はクエストに、シロはいつもどおりふらりとどこかに行ってしまい、ウェンディ様は家の掃除や洗濯、お買い物へ。そして私はウェンディ様のお手伝いをした後に錬金室を使わせてもらって日々精進!
……のはずだったのだけれど……。
「では、これより『第24回ご主人様を平和的に分かち合う会議』を始めます」
ぱちぱちと拍手が鳴り響く。
普段皆で食事を取るはずの場所で、なぜか明り取りの窓には黒いカーテンが引かれており、真っ暗な部屋の中で光の魔石ではなく蝋燭がぽつぽつとした明かりをつけ皆の顔を照らしていた。
「さて、いきなり本題ですが……近々アインズヘイルではお祭りがあります。そこで、今回も平和的に誰がご主人様とお祭りデートをするかを決めましょう」
「お祭り……特別なデートっすけど、全員が回るには時間が足りないっすからね」
「そうなんです……。しかも今回ご主人様は出店なさいます。おそらくお昼休憩の時間しか、私達とお祭りを回る事が出来なくなると思われます」
「更に不測の事態が起きれば回れなくなる可能性も出てくるわけか」
「そうね……主様はトラブルに巻き込まれやすいし、優先順位が後の方はなかなか難しいかもしれないわね……」
「ん。主とお祭り回りたい……」
……えっと。
「ご主人様とお祭りを回る……こんな一大イベントを当日までそのままにしていては間違いなく醜く言い争ってしまいます。なので、今この場で後腐れなく決める事にしましょう」
そうウェンディ様が言うと、皆さんがごくりと息を飲むのがわかった。
それほどまでに、真剣なのでしょうね。
でもなぜかしら。真剣になればなるほどに、内容が酷く滑稽に思えてしまうのは……。
「あの、質問いいでしょうか?」
「はいミゼラ。どうしましたか?」
「この話し合いはなんなのでしょうか……?」
私がそう言うとウェンディ様は一瞬きょとんとした顔をした後、普段どおりの素敵で柔らかな笑みを見せてくれた。
「ご主人様を平和的に分かち合う会議です!」
言っている意味はわからなかったけど……。
いや、多分読んで字の如くそのままの意味なのでしょうけど……。
「この会は主君とのスキンシップを誰が取るかを決めるものだよ。例えば外食の際に誰が隣に座るか。外泊する際には誰が同じ部屋になるかを順番づけして争わないようにしているのだ」
「もちろん突発的なものの場合は争うけどね。あとは主様が決めた時はそれに従うの。今回みたいに事前に決まっている場合は、こうして私達が前もって話し合って決めているのよ」
「まあそれ以外にも色々なことを話し合うっすから、その時その時で変わるっすけどね」
「ん。シロの膝上に座る権利だけは、誰にも渡さない」
「こういうのもありっす。ご主人にあーんする権利を独占とかも可能っすね! でも、そうすると他の権利の優先度は低くなるっすよ!」
「あと、優先度が高い時にその権利を放棄するとポイントを手に入れられるわ。そのポイントはずっと継続して、ここぞって時に使用すれば優先度が上げられるのよ」
……。
どうしよう。とても、熱く語られてしまったのだけれどよくわからない。
スキンシップの権利? 優先度? ポイント? 使用?
……至って真面目なのでしょうけど、これが世の中の普通なのかしら……?
「まあ、進めてみれば大体わかってくるっすよ」
「そ、そうね。はい。それじゃあ、私は聞きに徹しますので……」
そうよね。
全容がわかっていないのに、勝手に判断してはいけないわよね。
もしかしたらとても建設的で有意義なお話なのかもしれないのだし。
「それでは各自希望の順番と密告とアピールをしていきましょうか。まず一番は……」
「「「はいっ!」」」
ウェンディ様が言い終わる前にアイナさん、ソルテさん、レンゲさんの三人が勢いよく手を上げた。
「わかっていると思いますが、一番で手を上げると他の優先権は下りますよ?」
「勿論だ。だが、一番が一番デートにいける可能性が高い!」
「どうしても主様と行きたい所があるのよ。その時間だけでも確保したいの!」
「わかりました。それでは、アピールタイムと行きましょうか」
「はいっす! この前ミゼラとアイナとソルテと冒険者ギルドに向かう際に、ソルテたんがご主人の腕を取ってラブラブしてたっす!」
レンゲさんが机に手を置いてもう片方の手を勢いよく上げ、ぴしっと手を伸ばして前のめりに答えていた。
「なっ……はっ! だからあんた気づいてないって言ったのね!」
「当然っすよ……! お祭りが近いって言うのに無邪気にはしゃいじゃって……。可愛いっすねえソルテたん?」
「ぐぬぬぬぬ……! レンゲだって……あれ?」
「ふっふっふ。気づいたっすか? 自分は最近最低限のスキンシップしか取ってないんすよー。この日のために! ちなみに、もう片方の手はアイナが取ったっす。その間、自分は周囲を警戒していましたっす!」
「なっ……だが、私はソルテと違って二人きりでもないし、甘い空気を出してもいなかったぞ!」
「そうっすけど……。ねえ、シロ」
「ん。最近主と二人だけの特訓が多い。それに、その後のお風呂も……」
「ぐなっ……。それは、主君との約束……がっ……」
アイナさんが言いたいけど言えないのだ! という空気を出しつつぷるぷると震えたあと、力なく椅子の上に座る。
「はい。よろしいでしょう。それでは、今回のお祭りデートの権利一番はレンゲさんです」
「異議は無い」
「やったっすー!!」
「ん。シロはいつもどおり真ん中で。膝上の権利を放棄するほどの事じゃない」
「はい。シロはまだ夜伽が出来ない分スキンシップの優先度は高めなので良いですよ。ミゼラも……まだでしたね。希望の順番はありますか?」
「あ、いえ……私は無しで良いです」
なんというか、この熱さの中に私みたいに中途半端な気持ちで入ってはいけないと思う。
うん。私の言葉を聞いて、アイナさんとソルテさんがぱぁぁっと表情を蘇らせていたし、これでいいはず。
「い、いいのミゼラ?」
「はい。私は普段錬金室で旦那様を独占してしまっていますし……。わたあめ機を作るときもご一緒させていただいていますから」
「そうか……確かに羨ましいことだが……お祭りだぞ?」
「まだまだ余裕もありませんから。皆さんで楽しんでください」
こんな会議があるなんて知らなかったし、そうなると私が普段一番旦那様と二人きりが多いのよね……。
私の錬金にいつも付き合ってもらっている分、皆とのコミュニケーションが減ってしまっているわけだし……。
それに、私の気持ちはまだはっきりとしたものでもないしね……。
『一生の誓い』を使ったわけでもないし……今回は我慢ね。
……あれ? 『今回は』……?
「となると、私は三番ですね。日数は三日間なので、一番が一日目、二番と三番は二日目、四番と五番が三日目ですかね。勿論、トラブルが発生した場合はずれ込みますのでご了承くださいね」
「はいっす!」「ん」
「はーい……」「ああ」
それぞれがそれぞれのテンションにあった返事をし、会議が終っ――。
「それでは次の議題です。今晩のご主人様の夜伽の相手と、今後のご主人様とのスキンシップ権、それと朝のお風呂に入る順番など、まだまだ決める事は多いですよ」
「フリードが請け負ってくれてよかったわね……。今日はじっくり話し合えるわね」
「ああ。お祭りの順番は残念ではあったが、それ以外ではぬかりなく攻めていこう」
「あの、私は次回からの参加で……今からやらないとポーションの作成が間に合わないので……」
今日の分のノルマも終っていないし、冒険者ギルドからはありがたいことに発注も増えているので明日の分を済ませておきたいのだ。
「そう……ですか。わかりました。それでは次回からよろしくお願いしますね」
「はい。それでは……」
真っ暗な部屋から出ると光が少し眩しく感じてしまう。
背後から早速白熱した旦那様とのスキンシップの権利を勝ち取る争いが繰り広げられているようだった。
本当に、皆旦那様が大好きなのね……。
理由は……まあ、私もよくわかっているけれど。
それにしてもモテモテよね……。
今頃、王都でも私の知らない女の子といるのかしら?
まさかね。こんなに器量のいい女の子達に囲まれているのに、他所で女の子を作っていたりはしないか。
……しないわよね?
「…………よし。今日も錬金頑張ろう」
早くレベルを上げて、もっと効率よくポーションを作れるようになりたいわね。
今はまだわからないけれど、いつか、私があの会議に参加したいと思った時に困らないように、もっともっと、いっぱい成長しておかないとよね。
次は9章ですね。
ちょっと練り直しが必要なので、もしかしたら一週間投稿が難しいかもしれません。
いつもどおり行き当たりばったりでもいいかなと思ったのですが、詰まりそうで……。
最近妄想力が落ちてきているので、どうにか回復したいところ……。




