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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
7章 ハーフエルフと願望と
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7-8 幸せ・願望 もてなす相手は

いやー座標転移(ポイントゲート)は素晴らしいね……あっという間に王都だよ。

全員で来てるからMPの消費は激しいけども……。

さて、ここは……隼人の家の錬金室扱いの部屋か。


「いらっしゃいませお客様」

「よう、フリード。お邪魔するね」

「はい。どうやら、お疲れのようですが、早速休まれますか?」

「そうさせてくれると助かるな……今日は朝からずっと特訓してたから、くたくたなんだ……」

「頑張っておられるのですね。お風呂の用意は済んでおりますので、まずはお部屋でごゆっくりお休みください。お食事の時間になったらお呼びいたします」


フリードが珍しくにこりと笑い、俺達を部屋へと案内してくれるのだが……。


「さて……という事は主君との部屋割りを決めねばだな」

「じゃあクジにする? それとも主様に教わったじゃんけんにする?」

「じゃんけんは……動体視力に左右されますので、クジにして欲しいです」

「いや、今日は……一人で寝させてくれると嬉しいんだが……。明日はアイリスのお願いだし、寝不足で粗相があったらまずいだろう?」

「「「「「ええっ!?」」」」」


いや、そんなショッキング! って反応されても……。

お相手は多分お貴族様だろうしな。

下手に不興を買ってまた面倒な事になっても困る。


「ああ、ご安心くださいませ。皆様同じお部屋にお通ししますので」

「え?」

「隼人様からお客様専用のお部屋をご用意せよと仰せつかっておりますので、私含め、メイド達も気合を入れてご用意させていただきましたよ」


と、自信満々に言うフリードが案内した部屋は……とてつもなく広い部屋だった。


「ベッドは特注で、皆様で寝ても問題の無い広さと強度を誇っております。この先多少人数が増えても問題ありません。この部屋の付近には使用人の部屋もありませんし、隼人様方のお部屋とも離れております。お風呂もお部屋に付いておりますし、準備は済んでおります。トイレも最新式の物を付属しております。お呼びの際はこちらのボタンを押していただければ、使用人室の光の魔石が光って知らせるようになっております。それではごゆっくりおくつろぎください」

「ちょっ!」


早口でこの部屋の説明を済ませ、俺が質問を繰り出すよりも早くいなくなってしまうフリード。


いや、ちょっと待てっての!

沢山物言えば説明完了だと思ったら大間違いだぞ!

専用ってなんだ専用って!

あとその無駄に気を使った部屋の位置取りとか、後ほど多少人数が増えてもとか、しっかり説明しろー!


「ベッド……大きいですね。特注……ですよね」

「ん。しかも高級? ふっかふか」

「これならば皆で一緒に寝られるな。次の問題は誰が主君の隣で寝るのかという問題か……」

「おおお……トイレも水洗っすよ……。これ工事したんすかね……?」

「わ、お風呂も広いわよ! 皆では流石に無理だけど……」

「お前等……あちこちいじくって壊すなよ……?」


隼人気を使いすぎだ!

何だってこんな部屋を用意してんだよ……。

あーあー……インテリアまで高そうなもん置きやがって……。


メイドさん達も気合を入れてって……多分前回のプリンのお礼か、はたまたもう一度を期待してといったところか。

いや、用意するけどさ……。


「はぁぁぁ……とりあえず、風呂入って少し寝るか……」

「ん。主、お風呂入ろ?」

「ちょっとシロ! 抜け駆けは禁止よ!」

「早い者勝ちっすか!? なら自分が行くっすよー!」

「こらレンゲ! 服をいきなり脱ぎ散らかすな!」

「ご主人様。お脱がせ致しますね」

「いや……今日はゆっくりって……聞いてねえな……」


結局、全員無理矢理……もとい洗い場と風呂場で分かれつつ入ることになり、ゆっくり休んだのは夜飯を食べた後、皆で横並びになって眠る頃だった。



「ふわぁぁぁああ……ああー」

「なんじゃ大きなあくびじゃな。昨夜はお楽しみか?」

「おう。夜中までたっぷりな」


最終的に広いベッドの中心に俺が寝る事になり、その俺を囲むように円になって眠るという、慣れない環境下で一度目の眠気を逃してしまったのだ。

時間的には問題なく眠れたのだが、それでも少し眠さが残ってしまった。


「不潔ですね。死ねばいいのに」


アヤメさんその笑顔は素敵ですが、ちょっと青筋たっていて怖いです。

シロ、警戒しなくていいから……。冗談ってわかってるから。

……冗談だよね?


「それにしても……まさか王城だとはな……」


今俺が歩いているのは王城の中の廊下だ。

すれ違う人たちは脚を止め、姿勢を正して頭を下げていくのだが、改めてアイリスが王族である事を理解せざるを得ない。


「かしこまる必要は無いぞ。叔父上に会うわけでもないし、お主は楽にするがよい。菓子は頼むがな」

「わかってるけど……で、相手は誰なんだよ?」


アイリスからは未だに教えてもらえていないのでちょっと不安なんだが……。

予想では貴族のお嬢様か、それともアイリスが贔屓にしている大商人本人、またはその娘さんか。

もしかしたらアイリスの想い人……という線もあるかもしれない。


「まあそれは気にせんでよい。下手に緊張されても困るからな。それに、言わぬ代わりに護衛を許可したじゃろ?」

「それはそうだけど……」


今俺とアイリスの後ろを歩くのは、メイド服に着替えた5人。

しかもこのメイド服……持ち帰ってよいとの事で、完璧な仕上がりの本場(?)のメイド服が貰えるのならと了承したのだが……。


「でも、なんで俺だけ普段着なんだよ……」


さっきからすれ違う人たちが頭を下げつつ俺のほうをチラリと見ているのは間違いなくこの格好のせいだろう。


「なんじゃ? メイド服が着たかったのか?」

「なわけあるか……。執事服とか、もっと畏まった服は無いのか?」

「あるにはあるが……。その服でも問題ないと思うぞ? よく似合っておる」

「似合ってるかどうかの問題じゃないと思うんだが……」


だが、この服でもいいという事はそこまで位の高い相手ではないのだろうか?

まあアイリスどころか、アヤメさんが何も言わない以上もう知らん。

不敬とか言われたら全責任を押し付けて知らん顔して逃げよう。そうしよう。


「ところでじゃが……お主、今日は何を持って来たのじゃ?」

「ん? 普通にバニルアイスと、ジャム各種。焼き菓子と、デザートソースに果実がいくつかって所かな」

「ふむ……新作は無しか?」

「あるにはあるけど……。部屋の中で盛り付けくらいはいいんだよな?」

「うむ。火を使わねば構わん。ただし、毒見が入るが気を悪くせんで欲しい」


それはしょうがないだろう。

アイリスだって王族だし、いくらアイリスが連れてきた男だとはいえ今の俺はどう見ても平民だ。

そもそも平民が作った物などお偉いさんが口に入れられるのか?


うーん。やっぱり相手の位はそこまで高くないのかもしれない。

少し気を楽にして、アイリスに振舞う時と同じくらいで、ただし礼を欠かないようにだけ注意すればいいかもしれないな。


「よし、着いたぞ。わらわが呼んだら中に入ってまいれ」

「わかった。このワゴンは使っていいんだよな?」

「うむ。魔法空間から出せば怪しまれるからな。先に出しておいた方が良いだろう。ただし、アイスは直前に出すのじゃぞ!」


わかったと返事をし、部屋の前で小さくため息を一つ。


「ん……中に一人強い人がいる」

「そうね。でも……アイリス様達以外は二人かしら?」

「うむ。一人は普通だが、もう一人は私よりも強いかもしれないな」

「でもまあ、危ない雰囲気ではないっすね」

「……俺には全くわかんないんだが……」


別次元のお話だあね。

鍛えてはいるが、この領域にたどり着くまで一体どれほどかかるんだろうか……。


「ご主人様ご主人様」

「ん? どうしたウェンディ」

「えへへ。どうですか?」


ウェンディがくるりと一回転。

ふわりと浮き上がるスカートから伸びるのは、ガーターベルト。

ウェンディの色白な肌と黒いガーターベルトのコントラストはお互いを強調し、高めあう素晴らしいものになっていた。


「似合ってる。凄く可愛いよ」

「えへへ。今度、この服でいっぱいご奉仕しますからね?」

「それは楽しみだな」

「ちょっと、ウェンディだけ褒めないでよ!」

「わかってるよ。皆凄く可愛いよ」

「なんだかおざなりっすけど、でも褒められるのは嬉しいっすね!」


一人一人感想を述べてもいいが、流石にここでは時間が足りない。

それに、そういうことは夜にすればいいさ。

その方がたっぷり時間も取れるからな。


「よし、入ってきてよいぞ」


さて、お呼びですか。

それじゃ、気合を入れすぎない程度に頑張りますかね。

どうか下手を打ちませんように!


ノックをし、魔法空間から取り出した御菓子をワゴンに乗せて押して部屋に入る。


「失礼しま……す……」


思わず段々と語尾が弱くなっていってしまう。

え……。

な……なななな……。


「どうした? 何故固まっておる」


う、嘘だろ?

そんな……こんな事ってあるのか?


「おーい……?」

「ふむ。あれがアイリスのお気に入りか……」


そりゃ、固まりもするっての……。

こんなの……どうしたって釘付けになってしまう。

瞬き一回が勿体無い。

脳内フォルダに名前をつけて何枚も保存するように、目の奥に焼き付けざるを得ない。

何故なら……。


「わ、私よりも大きいです……」

「あんなのって……世の中不公平にも程があるわよ……っ!」


ウェンディよりも大きなおっぱいの同い年くらいの大人の女性が、わざわざ胸を強調するようなエロスなドレス姿だったのだ。


おそらく彼女がアイリスの友人なのだろう。

一目でわかる。彼女は、間違いなく高貴な人だ。

途中一度でも身分がそこまで高くないかもと思ったことが馬鹿らしくなるほど、位が高い事がわかりやすい。


隼人が伯爵だとして、侯爵か、それとも公爵か……ともかく、余計に粗相など出来ないと緊張が高まった。

一体、何者なのだろうか……。


「ふむ。部屋に来た事だし言っておくか。こやつは帝国の皇帝の姉。シシリア・オセロット。皇族じゃ」

「シシリア・オセロットだ。我の友たるアイリスのお気に入りよ。今日は楽しませておくれ」


…………は?

いや、え? おい、待て。帝国の……皇族?

なんで帝国の皇族相手に、普段着で接客せねばならんのだ!

アイリスてめえ……全然問題なくないじゃねえかよ!

俺のこの場違い感、どうしてくれるんだ!?

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