閑話 これぞ! 混浴だ!
混浴話。
ローションとか、マットとかね。
出そうと思ったんだけど、何回書き直しても消される未来しかなかったの……。
だから……ごめんね?
天高く登る太陽が、いくら輝きを放っていようとも、目の前の光景に比べれば幾分も劣ってしまうだろう。
「シロ! 今回は譲りなさいよ!」
「主の膝上は誰であろうと譲る気は無い。犬は……あそこがちょうどいい」
シロ、あそこは砂利なんだが……。
「お風呂の外じゃないの!」
「主の膝上を賭けた戦いが激しくなってきましたっす! 果たしてどちらの手に渡るのかー!」
バシャバシャと風呂内で暴れる二人、それを煽るレンゲ。
温泉のマナーとしてはよろしくないが、見ている分には眼福である。
「はぁ……落ち着いて入れないのか?」
「全くです。風情に欠けますね」
俺の右側にはアイナが、左側にはウェンディが、俺の腕を取って大人しく寄りそうように鎮座している。
腕に当たるのは当然柔らかいおっぱいの感触だ。
「そんな事言うならあんた達がその場所を譲りなさいよ!」
「断わる」
「お断りします」
「アイナ! あんた前はもっと仲間想いだったじゃない!」
「それはそれだ。んん……主君? 腕を動かしたいのか?」
いや、そういうわけじゃないんだが……。
いつの間にか谷間の間に腕が入り込んでおり、約360度幸せに腕が包まれてしまっているんだが……いいのか?
「あ、私もやります」
ウェンディまでアイナの真似をして、俺の腕を谷間へと挟んだんですけど!
シロとソルテがおっぱいへの憎しみをぶつけるかのように鋭い視線で睨みつけてきている。
「……シロ。ちっぱい連合よ」
「ん。協力を了解する」
「あ、じゃあ自分は中立ということで、ご主人の真ん中をいただくっすね」
さり気なくレンゲが俺の膝上に腰を降ろすのだが……。
そこ、タオルで隠しているとはいえ、エレクチオン中でエキセントリックなわけですよ。
「あ……」
それに気づいたのか、レンゲが小さく声を漏らす。
いや、仕方ないだろう?
タオルを温泉につけているのも、今回ばかりは仕方ないんだ!
「あは、ご主人たらー!」
ぱしゃぱしゃと嬉しそうに体を動かして水を跳ねさせるレンゲ。
あ、う、お、その刺激はいけない!
「わぷっ!」
レンゲの顔に容赦のない量のお湯がかけられる。
それを行ったのはソルテとシロであることは間違いないだろう。
幸いにも俺にはかからないようにうまく調整してくれたようだ。
「レンゲ……いい度胸ね。私達の場所をさり気なく奪っていくなんて」
「ん。連合にも所属しない一小国風情が……笑わせてくれる」
「こ、これは危険っす! 援護要請をおっぱい同盟に申しこむっす!」
「ウェンディ、どうする?」
「そうですね……確かにレンゲさんのポジションは羨ましいところもありますが、この位置に不満があるわけでもありませんし……援護してもこちらにメリットは無さそうですので却下しましょう」
「そうだな。それに原因はレンゲのようだし、健闘を祈る」
「要請失敗!? こうなったら……案内人さあああああああん! 自分とぱい連盟を! カムバアアアアアアック! あ、シロ? ソルテ? ちょ、冗談っすよね?」
当然の如く案内人さんが現れるわけもなく、シロとソルテにがっちりと両腕を捕まれたレンゲの叫びが無常に響くのだった。
「はぁぁ……気持ちいいな」
「それは温泉が? それとも私?」
「どっちもだよ。こんな贅沢が許されていいのかねえ」
最終的に全員が引っ付く事となったのだが、流石に汗がじんわりして暑苦しかったので、ローテーションを組むこととなったのだ。
今はソルテが俺の膝上に座り、俺の両手を肩から出させてぎゅっと抱きしめているという状態だ。
それ以外の皆は石のベッドや、親方の作った休憩所で休むなど好きに過ごしている。
「いいんじゃないの? 主様が頑張った結果でしょ」
「そう……だな。ソルテとこうしたくて、頑張った」
「ふふ、そっか」
ソルテは寄りかかる力を強くし、俺の手を頬に当てる。
「思いもしなかったわ。あんたとこうなるなんて」
「そう……だな。ソルテは俺のこと嫌いだったろ?」
「嫌い……ってほどじゃ……ううん。嫌いだったかも。アイナが知らない男に取られちゃう! って」
まあ、それは至極当然のことだろうな。
いきなり現れた怪しい流れ人に大切な仲間が取られそうになれば、相手を嫌うのも頷ける。
「でも、今はこの温もりが愛おしいの。放したくないわ」
きゅっと、俺の腕を掴むソルテの指に力が入る。
本当にこいつは……。
「乙女だねえ……。俺から放す気はないよ」
「うん。放さないでね。私はずっと付いて行くから」
この後、少しの間をお互い沈黙して過ごしていたのだが、レンゲと交代するまでの時間、近づきがたいほどのピンク色のオーラを出していたと聞かされた。
「もう凄かったっす! ピンクピイイインク! って感じだったっすよ!」
「そんなにか?」
バシャバシャと身振り手振りで体を揺らすレンゲの腰を掴んで落ち着かせつつ、話を聞く。
「ウェンディと、あれエッチしてるんすかね? って話してたっすよ!」
「あほか……するわけないだろ」
「でもぉ……ここは臨戦態勢じゃないっすかぁー」
悪戯心満載で人のエクストラをつんつんとつつくレンゲさん。
「ほらほらー。浴場で、欲情してきたんじゃないっすかー? 浴場で! 欲情!」
「あ、萎えたわ」
「ええ!? あ、本当っす!!」
いやー……ないわ。それはないわレンゲ。
それだけは言っちゃいけないんだよ。
「あーあー……残念っす……」
「人の股間が残念みたいな言い方するなよ」
「ま、大事な初めてをこんなところでっていうのも風情がないっすし、いや、だからこそ忘れられない思い出に……ご主人! 一発やるっすか!?」
「落ち着け。あとお前本当に男嫌い設定は何処にいったんだ」
「なんすかー!? 設定ってー! 自分、本当に男は嫌いっすよー! ご主人だから特別に決まってるじゃないっすかー!」
いや、今のお前は天真爛漫エロエロキャラだ。
とても男嫌いキャラには思えない。
「普通の男とはこんなふうに密着なんて出来ないっすよー! 即行でぶっ飛ばして終わりっす!」
「はいはい。光栄ですよー」
「おざなりっす……。もう、ご主人には本当に感謝してるんすよ」
「ん?」
「自分、最期は笑って死ぬって決めてるんす。これだけは何があってもーって思ってたんすけどね。でもまあ、犯罪奴隷として知らない誰かに買われていたらそうもいかなかったと思うっす」
「んー……」
「あ、でも恩返しとかって訳じゃないっすよ? ご主人との赤ちゃんは本気で欲しいっすし、ご主人の事は大好きっすから! だから、自分の願望を叶えられるようにしてくれたご主人に、いっぱい喜んでもらって、自分を助けてよかったって思ってほしいんすよ」
最期は笑って死ぬね……。
レンゲらしいと思うし、俺もそれには同意だ。
「最期は笑ってか……。いいなそれ」
「お、ご主人も笑って死ぬっすか?」
「そうだな。俺もそうしたいって思うよ」
「ならアレっすよ! 死ぬ時は自分の太ももで挟んであげるっすね!」
「いや、老衰で死ぬ場合はもっと若い子の太ももがいい!」
「浮気者っす!」
レンゲとは、終始こんな感じで馬鹿話を続けていた。
本当に、こいつといると笑顔が絶えないんだ。
レンゲの楽しそうな笑顔に釣られて俺も笑顔になっていて、それを見てまた嬉しそうにレンゲが笑うんだ。
レンゲと一緒なら、きっと最期の瞬間だって笑って死ねる。
「ちょ、ちょおおおご主人!? そこは! そこは流石にだめっすよ! まだこっちもまだなのに!?」
そう確信めいた何かを胸に、レンゲの体をまさぐっているのだった。
さて……お次はアイナの番となったわけなんだが……。
「はぁ……主君。いいお湯だな」
「そ、そうだね」
「主君? 何故顔を逸らすんだ?」
いや、あのー……前向いていいの?
本当に?
「ほら! ちゃんと目を見て話そう」
アイナに両頬をつかまれて無理矢理正面を向かされる。
何で俺が横を向いていたのかって? アイナが膝上に乗ってるからだよ!
更には後ろ向きではなく向かい合う姿勢なんだよ!
「ふふ、やっと見てくれた」
いや、違うものに釘付けなんですよ……。
チラチラと視線をおっぱいとアイナの顔で高速で移動させていますよ。
見ないなんて無理です。
「む。遠慮はいらない。好きに見てくれていいんだぞ?」
「え……っとー……」
あ、ばれてますか。
まあ、ばれますよね。
「ふふ、私はもう主君のものだ。主君が喜ぶのなら……いつだって見てもいいし触れてもいいんだぞ?」
うーん……あのね……いや、嬉しいよ?
そりゃあもう。いつだってアイナの胸を見てよくて、触れてもいいなんてとんでもないご褒美だと思うんだよ。
だけどさ……。
「アイナ……顔が尋常じゃないくらい紅いぞ……」
「な、なんのことだ?」
言葉だけはなんとか平静を頑張って保っているようだが、もうね、真っ赤なの。
髪色と同じくらい真っ赤なんだよ。
「のぼせてるんじゃないか? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ……。大丈夫だから……」
いやでも、なあ……。
いくらなんでもこれは心配だ。
「ちょっと石のベッドで休んだ方がいいぞ」
「断わる!」
「いや、でも」
「いやだ!」
「い」
「やだー!」
久々に頑固なアイナだ。
俺の頭を抱えて、絶対に離れるものかとしがみついている。
しかしこれは……素晴らしい。
顔というとても敏感な場所を覆うこの繊細な絹を張ったようなきめ細かい肌の触感とハリ。
そして押し返しつつも包み込んでくれるこの圧倒的なおっぱいでしかありえない柔らかさ……。
顔で触る……頭の中ではいくらでも想像は出来るが、実際にしてみると想像を遥かに凌駕する気持ちよさだ。
なるほど、これだけでパフパフがどれだけ素晴らしいか理解できそうだ。
今度実際のパフパフをアイナとウェンディに頼んでやってもら……お……う……あ、れ?
「ちょっとアイナさん!? ご主人様が! ご主人様が死んじゃいますよ!?」
「ん、アイナ手を放す!」
「え? ええ?」
「ご主人の力が抜けてきてるっす!」
「アイナ! 手! 手!」
騒がしい……ああ、なるほど。息が吸えていないのか。
だが俺は、ここから離れられない!
この顔が、離れたがらないんだ!
ならば仕方ない。たとえ死んだとしても、おっぱいに埋もれて死ぬのなら本望…………だ……。
その時の俺はきっと笑顔だったと思う。
その後、目覚めた俺はアイナに謝られたのだが、今度はしっかりとお互いに放す合図を決めてからもう一度挑戦しようという事になった。
『いや、でも……』と、今更恥ずかしそうにしていたが俺の力説によりしっかりとアイナも挑戦することを決意する。
……俺の言葉を何でも信じてくれるのは嬉しい。
だけど、俺が頼めば何でもしてくれそうで、少し心配になるのだった。
主に、俺の歯止めがきかなくなりそうで……。
2巻作業中につき、
7章はもう少々お待ちを……。




