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異世界でスローライフを(願望)  作者: シゲ
6章 温泉といえば
159/444

閑話 Xmas4

連続更新中です! 4/4

クリスマスパーティー、決行当日。

時間は空が暗くなり始め、周囲の明かりが魔道ランプや月の光、周囲の家々から漏れる光がメインになってきた頃。

続々と参加者が集まってきた。


まず一番に現れたのは、ダーウィンとダーマ、それにメイラであった。

ダーウィンは普段着だがメイラはサンタ服……ではなく、ドレスのような服で着飾っており、普段より数段大人っぽく見える。

ダーマはビシっと決まった服装で、ちらちらと俺や隼人の反応を気にしているようだがノーコメントである。


次に現れたのはヤーシス家族。

奥さんがもの凄い美人だった。

それに子供達の礼儀正しい事……。

お土産にと、花束を渡されたのでせっかくだからとテーブルの真ん中に飾らせてもらう事にした。


レインリヒは遅れてくるそうなので、最後に登場したのは孤児院の子供達と、保護者さん。


「「「「「「「お招きありがとうございます!」」」」」」」


と、練習したのだろう皆が揃って声を合わせて言ってくれる。

そして一人の代表が、俺に木の実なんかを集めた品を渡してくれた。

せっかくなので、これを使って追加でお菓子を作ろうと思う。

保護者さんには何度も頭を下げられたが、子供達は早くも料理に目が行ってしまい、それを見てまた頭を下げられてしまう。


うちのシロも最早我慢の限界みたいなので早速はじめるとしようか。


「それじゃあ皆、掛け声はメリークリスマスだ。いいな?」


俺達の文化である開始の合図を教え、タイミングを合わせるように「せーの」と言うと――


「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」」


大きな声で、俺達のクリスマスパーティーが始まったのだった。


立食形式のパーティで、中央には大きなテーブル。

ビュッフェのように好きな量を好きなだけ食べられるようにしてある。

まだケーキは出していないので、一番目を引いているのはやはり鳥の丸焼きだろう。

今回は肉屋のオヤジから最も丸焼きに適した、セブンレッグスバードを数匹購入した。

この鳥、なんと脚が7本もあるのだ。

どうやって歩くのかは不明な上、生のままの姿は気持ち悪かったが、焼いてみると美味しい腿の部分が沢山あるので、孤児院の皆が喧嘩する事無く分け合えるのである。


皆、頬や口周りを汚しつつも美味しそうに頬張り、そこに混じるようにシロやレンゲ、ミィも食べ始めている。

大人たちは空いている野菜などから取る人もいれば、早速プリンに手を伸ばしているリートさんもいた。

勿論リートさんの格好はサンタ服だ。

当初は恥ずかしそうにしながらも、アイナ達もサンタ服を着ているので今では平気なようだ。


そう。

サンタ服である。

アイナもソルテもレンゲも皆一様に可愛いのだ。

遠めで見ているだけでも眼福である。

特にアイナは、紅蓮の髪色とマッチして美しい芸術的なレベルであった。

シロも似合ってはいるのだが、子供らしさの残る可愛さとなっている。


「イツキさん!」

「隼人!」


ちなみにイエーイ! と隼人とハイタッチを交わしている俺の格好は、トナカイだ。

鼻には赤い鼻を着け、まるで道化の如くトナカイの格好に甘んじた。

当初は隼人も、


『イツキさんだけにそんな格好をさせるわけにはいきません!』


と言っていたのだが、


『英雄に衆人環視の中でこんな格好をさせるわけにいくか』


と断わらせてもらった。

子供達の夢を、壊すべきではないのだ。

そして俺、トナカイだからか子供達に大人気なのである。

全身茶色の服で、頭にはトナカイの角をつけた赤鼻の大人、大人気である。

これが主催者だっていうんだから、驚きだろう。


「おや、もう始まってたのかい」

「レインリヒ、いらっしゃい」

「……あんた、どうしたんだい?」


レインリヒに心配された。

そんなに変かな?


「まあ楽しんでいってくれよ。料理もデザートも沢山あるからな」

「そうさせてもらうよ。リート! 私の分のデザートまで食べつくす気かい!?」

「ふべ!? しょ、そんなことないですよ!?」

「おや、あんたもその服なのかい?」

「に、似合いませんかね?」

「いいんじゃないか。可愛いと思うよ」

「え? ええ!? そ、そうですか? うわあ、レインリヒ様に褒められるなんて思わなかった……」


いや、レインリヒは自分の分のデザートを確保する為に適当に応えただけだと思うよ。

その証拠に手の動きが早すぎるし……。

ちょっと、子供達の分まで食べるなよ?

それに、デザートならまだ特大のが残っているからな。


「あー……美味い飯、美味い酒……それにべっぴんな女がエロイ服を着てるとか……最高かよ」

「お、わかるかダーウィン」

「当たり前だろ? あれ、お前のセンスか?」

「まさか。元の世界の知識だよ。エロさと可愛さの織り成す美しいバランスがたまらないだろ?」

「あらあ、子供には刺激が強すぎねえか? ほらみろ、あの坊主なんか凝視しちまってるぜ?」


あー。

自分の事しか考えていなかったから、そこまで回らなかったな。

これをきっかけに性の目覚めを促してしまったかもしれない。

だが少年、悪いがその女は俺の女だ。


「お」


「そうですよ。私達の子供も来るのですから。もう少し露出は抑えていただかないと。特にウェンディ様は危険なレベルですよ」

「いやー。でもさ、可愛くない?」


「に」


「確かに可愛いですけど……。少し派手すぎませんか?」

「いやでもあの赤い服が重要だからな。それは譲れないぞ」


「い」


「あーでも、上着くらいは着せてくるか。この後雪も降らせる予定だし、夜も寒いからな」


「ちゃあああああああああん!」


ブルルルルルルルルルル!!


「うおわ! なんだ!?」


ひょいっとオリゴールを避け、ギルドカードを取り出すとアイリスの文字が光っていた。

ええ……このタイミングって……。


『酷いではないか!』

「酷いじゃないか!」


ハモってます。

現実とギルドカードからの声に挟まれるように文句を言われる。


『随分と楽しそうな催しに、何故わらわを呼ばぬ!』

「こんな楽しそうな事にどうしてボクを呼んでくれないのさ!」

「あー……いや、忙しいかなって……」

『わらわの忍からの報告を聞いて驚いたぞ。お主にはスキルもあるから、わらわもてっきり誘ってくれるものと思っておったのに……』

「僕は驚いたよ! お兄ちゃんの家に巨大な木が運ばれたって言うし、飾りつけもしてるから何かするんだろうなあって楽しみにしてたのに!」


ああもう、二人から文句を言われるのは面倒だな。


「ダーウィン、姫殿下の相手を優先するからそいつ抑えといてくれ」

「あいよ」

「モガー! はなせー! ボクは許さないぞ! ボクも参加させてくれないと許さないからなー!!」


いや、別に参加してもいいんだけどな……。

すっかり忘れていただけだし……。


『それで、わらわは参加できるのだろうな?』

「お、おう。……わかった。じゃあ迎えに行くよ」

『うむ! デザートはたんまりあるのだろうな! 特にアイスじゃ!』

「あるある。寒いし、あんまり減ってないからたっぷり残ってるよ」

『では早速迎えにきてくれ! ん? アヤメも行くようじゃからよろしく頼む』


……ほう。

アヤメさんか。

確か予備のサンタ服が残っていたはずだ。


「あー……悪いんだけど、参加するには条件があってだな」

『む? 手土産でも持っていくか?』

「いや、着て欲しい服があるんだよ。アヤメさんに」

『良いぞ。好きにせい』

『ア、アイリス様!? あの男が用意した服ですよ!? 一体どんな卑猥な服かわからないじゃないですか!』

「大丈夫。皆着ている服だからさ」

『……本当ですか?』

「本当本当。オレウソツカナーイ」

『もし嘘だったら斬りますからね』


嘘はついてない。

嘘は! ついてない!


「じゃあ誰もいない部屋にいてくれよ。オレも家の中に入ってから行くからさ」

『わかった。わらわはいつでもよいぞ』

「あ、あと無礼講で頼むぞ。いちいちかしこまられたら雰囲気ぶち壊しだからな」

『わかっておる。公の場でもないし、アイスが食べられれば構わぬ』

「んじゃ、すぐ行くわ」


家の中に入ろうと思ったら、クイっとトナカイ服を引っ張られた。

振り向くと、涙目になり鼻をすするオリゴールだった。


「ぐす……お兄ちゃん。ボクは……?」

「悪かった……。好きに楽しんでくれていいからさ……」

「べ、別にボクを省こうとしたり、嫌っているわけではないんだよね? ね?」

「当然だろ? そんな訳ないって。ヤーシスだってたまたま出会ったから誘っただけだぞ。タイミングが合わなかっただけなんだ……」


当然オリゴールに街で出会うなどすれば誘っていたさ。

ただやる事も多かったし、そこまで頭が回らなかったんだ。

いやでも、誘わなかったのは俺が悪いよな……。


「そっか……ならいいよ。今度一緒に二人きりでお風呂に入って、その後ベッドも一緒なら許してあげる」

「何もしないって条件ならいいぞ」

「意味が無いじゃないか!?」

「まあほら、早くいかないとご飯なくなるぞ? 行って来いよ」

「ブー! お風呂でいやらしいことをしてやるからなー!」


子供がいるところで何言ってんだよ領主様。

でも、すっかり普段の調子に戻ったようで良かった……。

見た目はやはり子供だが、精神は大人なので真意がわかると許してくれたみたいだ。

子供達と……混ざるとわからなくなるな。


それよりアイリスだ。

早く迎えに行かないとだな……。


アイリスを迎えに行く旨をウェンディに伝え、迎えに行っている間に無礼講であるので変にかしこまらなくてもいいと伝えてある。

それと、当然ながら今回アイリスが来たことは秘密にしてもらう約束をした。

たまたまこの街に来ていた、ということにしてある。


「アイスはどこじゃー!」

「あっちに山ほどあるよ」

「では行くぞ! アヤメ! アヤメ? どうしたほれ。行くぞ!」

「あ、や、引っ張らないでください! スカートが短いんです! 見えちゃいます! こら、こっち見るな! やっぱり卑猥じゃない、や! 駄目ですってば!」


ふうー……。

ご満悦である。

いやあ眼福眼福。

いいものが見れた。



さて、料理も大方片付いたし、大人たちもまったりとお酒を飲み始め、子供達もカマクラで遊び始めているのでそろそろフィナーレと参りますか。


「皆、テーブルの上を片付けてもらえるか?」

「あ、もしかしてケーキ?」

「おお! ちゃんとその分のお腹は残してあるっすよー!」

「子供達にも、最後に凄いのが出ると言ってあるからな。楽しみだ」


アイナ達にテーブルの上の空いた皿を片付けてもらい、家の中で取り出したケーキを隼人達と数人がかりで持ち運ぶ。


「「「「わああああ」」」」

「「「「おっきいー!」」」」

「「「「すげー!!」」」」


カマクラで遊んでいた子供達も、今やケーキのあまりのインパクトに夢中になっていた。


「これまた……随分な物を作りましたわね……」

「ははは……流石は私が見込んだ男性ですね」


大人たちも目が釘付けになっていて、フィナーレの前にしたらばっちりだろう。


「では、切り分けますね」


隼人が大き目のケーキナイフを持ち、構えを取る。


「ハッ!」


目にも止まらぬ早業でケーキを切り分けると、拍手が生まれる。


「味を色々変えてあるのね」

「美味しそうなのです……」

「私もお手伝いしたんですよ。楽しかったです」

「シロが一番乗り」

「全員分以上あるし、焦らなくても大丈夫よ……」


レティ達も皿にケーキをとって舌鼓をうっているようだ。


「俺は甘いものは苦手なんだがな……この抹茶は美味いな」

「そうですね。適度な苦味が、甘さを引き立てていて美味しいです」


大人の男性用に抹茶味も用意したのが、幸いしたようだ。

子供達も、さきほどまでお腹いっぱい食べていたはずなのにまだ入るとは……。

だが、頑張ったかいはあったな。

次々となくなっていくケーキを傍目に、感慨深く思う。


「さて、最後の仕上げと行くか」

「はい。子供達はこちらに集まってくださーい」

「わ、雪だ!」「ええ!? でもこっちには降ってこないよ?」「ツリーのところと、カマクラのところだけ?」


子供達へのプレゼント、それと雪を降らせてホワイトクリスマスの完成である。

雪は人に当たらぬよう範囲を絞りつつ、外から見る分には美しくなるように配慮している。

最後に風邪を引かれでもしたら台無しだからな。


そして子供達にプレゼントがいきわたり、遊び方の説明なんかを終わらせ、全ての工程が終了となったのだった。


夜も遅くなってきたので、そろそろお開き……となったのだが。

皆を見送っていた際に、子供達の中で一番大きな女の子が一歩前に出ると、後ろにずらっと子供たちが広がるように並ぶ。


「今日は、とっても楽しかったです。美味しいご飯、それに高級なお菓子やケーキ。最後にプレゼントまでいただいて、本当に」

「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」


……そういうのに弱いんだよな俺。


「こちらこそ……楽しい一日をありがとうな」


皆が見えなくなるまで見送ったのだが、最後まで手を振り続けている子達が沢山いた。

ああ、やってよかったなって思えたよ。

楽しかった。

子供の時ぶりに、クリスマスが楽しいと思えたな。

皆のおかげで素敵な、一日になったよ。


「ご主人様」

「ん?」


ウェンディに呼ばれて振り返る。

片づけなら明日にしようぜ。

今日はほら、いい気分のまま眠りたいし。


ん……?

振り返ると、五人の表情はそれぞれであった。

アイナは少し恥ずかしそうに、ソルテはもっと恥ずかしそうに。

レンゲはにやにやしていて、シロも笑っている。

最後にウェンディが微笑んで、


「今日は……皆でお風呂に入って、この格好のまま皆で寝ませんか?」


……。


「……大賛成だ! ひゃっほう! メリークリスマス!」

「「「「「メリークリスマス!」」」」」


あ、残念ながらシロがいるのでひゃっほうな展開はお預けです。

でも、この服自体は残るからまた別の機会にな……。

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