閑話 Xmas3
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帰宅しエミリーとウェンディの可愛い衣装を堪能した俺と隼人は、厨房へと脚を運ぶ。
手伝ってくれている皆の分も含めて、夕食の準備をしなければならないし、あとはクリスマスケーキの出来も気になるからな。
ちょうど部屋に入ろうとしたところで、クリスが廊下へと出てくる。
「あ、隼人様、お兄さん。おかえりなさい!」
クリスが頬にクリームを付けた顔で迎えてくれる。
この子の場合狙って行っている訳じゃないので強烈なほど可愛く思えてしまう。
「クリス、頬にクリームがついてますよ」
「え、あれ?」
「動かないでくださいね」
隼人がそっと人差し指でクリームを取り、それをぱくっと口にくわえる。
あーあー熱い熱い。
先ほどまで雪山にいたというのが嘘のようだ。
「は、隼人様……恥ずかしいです……」
「え、あ……」
今更気づいたようで、顔を真っ赤にしている二人。
よければ客間をお貸ししましょうか?
二時間くらいゆっくりしてきてもいいんよ?
「あ、えっと、そうだ。出来ましたよ! ケーキ!」
クリスが話をそらすように報告してくれる。
ああ、そうだった。
ケーキの盛り付けを頼んでたんだった。
既に甘甘でご馳走様な空気だったからね。
すっかり忘れてたよ……。
「あ、ケーキを作ってたんでしたね! うわあ楽しみだなあ」
「まあ、お前さんらがラブラブなのは知ってるし、無理に取り繕わなくていいんだぞ」
にやりと笑うと、二人はまたも顔を真っ赤にして顔を伏せてしまった。
この二人には、いつまでも初々しい反応を期待したいものだ。
さて、本題のケーキだが……。
「「おお」」
綺麗に塗り固められたクリーム。
上部や側面にはフルーツだけでなく焼き菓子まで貼られ、サイズを除けば女の子っぽい可愛らしいケーキが出来上がっていた。
「ど、どうでしょうか?」
「いいね! まったく問題ないな!」
「ええ、大きいですし、美味しそうです」
ブッシュ・ド・ノエルではなく、ショートケーキの巨大なホールなのだが、隼人も問題なく満足なようで安心した。
よし、それじゃあケーキは魔法空間にしっかりとしまって、今日の夕食を作りますか。
「「「「「ただいまー」」」」」
「お、帰ってきたか。おかえり」
「立派なのを持って来たわよ」
「門のところが大変だったっす……」
あー。そりゃ木をいっぽんそのまま持ってくれば、門兵さんも困惑するよな。
その辺りの配慮が足りなかったな。
「とりあえず庭に置いたままなのだが、どうすればいい?」
「あー。ウェンディに相談して庭の何処に植えて良いか聞いてみてくれ。皆お腹もすいてるだろうし、俺達はすぐに夕食の準備をするから、頼んだ」
「「「「「はーい」」」」」
疲れている中悪いけど、明日はゆっくり休めるし頼んだ!
「新人さーん。ある程度の飾りは出来ましたよ」
「あーえっと、ちょうどこの後ツリーを立てますので、飾りつけを……隼人、監修頼めるか?」
「任せてください! ではあちらのお手伝いに行ってきますね」
「じゃあ私は飾りを持って庭に行けばいいんですかね?」
「ええ、お願いします」
ふう……ちょっと慌ただしいな……。
でもまあ無理矢理二日後に詰めてやるならば、これくらいは当然か。
明日は明日でやらなきゃいけないことも多いし、今日は夕食後は早めに寝て明日に備えないとだな……。
翌日の朝、目を覚ましてすぐに向かうのは錬金室だ。
今日は子供達に配る為のプレゼントを考えて作らねばならない。
やはり子供達に配るプレゼントといえばおもちゃかな……?
でもTVゲームなんてものはないし、俺が構造を知っていて作れる玩具に限られるとなると、独楽とかヨーヨーのようなそれ自体で遊べる物がいいだろう。
だが、独楽ってあれ回せるようになるには中々の技量がいるんだよな……。
でもまあ皆で遊べもするし、その辺りを考えておこう。
女の子にはやはりアクセサリーがいいだろうか。
髪につけるような簡単で可愛いのがいいかな?
あまり高価だと、物取りなんかに狙われそうだし、それなりに抑えつつ……デザイン重視で作るとするか。
「ふんふふーん」
鼻歌交じりにおもちゃから作り始める。
独楽は紐で巻くタイプではなく、付属の棒を引っ張れば回りだして射出する物にしよう。
某玩具メーカーの商品そのままだが、ここ異世界だしな!
あとは遊ぶ為のフィールドも必要か。
それは孤児院に置かせてもらうとしよう。
あとはヨーヨーか。
やはりあれだな。
これもロングスリーパーなんかを出来るようにしなければならない。
俺の個人的な拘りだけど、ベアリングとか作るのは楽しそうだ。
だけど、全部が鉄製だと危ないよな……。
一応スライムの皮膜で周囲を覆ってケアしておこう。
それで試してみて大丈夫そうなら、問題ないか。
能力をつけるわけではないので、贋作スキルで大量に作れるし、一個一個意味深な模様をつければこれは男心をくすぐる一品だろう。
……喜んでくれたらいいな。
そう思いながら一つ一つに思いを込めて、模様を刻んでいった。
さて、次は女の子のお洒落なアクセサリーだ。
これは難題である。
先ほどと同じ、しかしあまりに同じような感じではよろしくない。
女の子は小さくても女優。
それぞれ美にもこだわりがあるだろう。
コンコンと、ノックの音が聞こえた。
振り向き返事をすると、ガチャリと扉の開く音と共に意外な人が現れた。
「新人さーん。あれ? 何してるんですか?」
「リートさん。今日も来てくれたんですね」
「ええまあ。お暇をいただいていますしね。おや? 何やらへんな物をまた作っていますね」
「ええ、孤児院の子供達が来るので、彼ら用にプレゼントを用意しようかなと」
「おお。それは喜びますねえ」
「ええ、だけどちょっと女の子向けのプレゼントに手間取ってまして……」
「へえ、今は何を?」
ひょいっと覗き込むように手元を見るリートさん。
その際に若干胸が肩に当たるが、今の俺は動じたりしない。
なんせ鍛えられているからな!
「えっと、男の子には玩具を用意したのですが……女の子用にはアクセサリーをと思いまして……」
「へえ、いいですね。孤児院の子達はあまりそういう贅沢品は持てませんし、寄付されたお金も必要な衣服などから買われてしまいますしね。なら私も簡単なお化粧品なんかを用意しましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ。新人さんの負担が少しでも減るのなら、喜んでお手伝いしますよ」
ああ、リートさんっていい人なんだな……。
なんでこんなに優しくて綺麗な人が未だに独身なのだろう。
元の世界ならば引く手あまただろうに……。
レインリヒのせいかな?
「ただ化粧品の場合はアレルギーの問題もありますので、簡単な物だけになりますけどね」
「ええ、子供用ですしあまり凝った物でなくていいと思いますよ」
「ではここで作らせていただきますね」
「はい。今日はアイナ達は子供達を招待しに行っていますし、ウェンディ達には昨日に引き続き洋服の制作をお願いしていますので、ゆっくり作れると思いますよ」
「あー……あの真っ赤なお洋服ですよね?」
あれ、もう見たのか。
ああ錬金室に来る前に確認してきたのだろうか。
「あの……もしかして、もしかしてですけど……私の分もあったり……?」
「いえ……一応身内の分だけをと思ってますけど……」
「そ、そうですか。そうですよね! 私なんて年増が着ても、面白くもないですもんね!」
「え? 似合うと思いますけど?」
リートさん普通に美人だし、それにスタイルもいいので普通に似合うと思うんだけどな。
でも、流石にお客さんにあの服を着てくれ! というのは悪いかなあと思ったのだが……。
「そ、そうですか? あは、あはは」
「えっと……着てみます?」
「えええー!? ど、どうしようかなあ。で、でも新人さんに見たいって言われたら着ちゃうかもなあー、なんて」
あー……あれだ。
年甲斐もなく可愛い服を着てみたいけど、現実問題きついんじゃないか? って気持ちがあって誰かに後押しされればそのせいにして着れるのにと思ってるパターンだ。
ここは日頃のお礼に後押しをしてあげなくてはな!
「見たいです。リートさんのサンタ姿。だから頼んできますね!」
「え、ええー? そ、そうですか? そういうならやぶさかではないですけど……。お目汚しでも良いなら……」
「いえいえ、きっとお似合いですよ。後で寸法とか測ると思うので、その時はお願いしますね」
「わかりましたー! あはは、上手く乗せられちゃったなー」
リートさんなら全然全く問題ない。
レインリヒが着たいとか言ったら止めるが、リートさんはまだ俺の中では若い方だし、ちょっとはっちゃけちゃった大人程度の認識でいけますからね!
このあとは滞りなく順調に進んでいき、昼食の際にウェンディにリートさんの分のサンタ服もお願いする事が出来た。
午後になり、メイラとダーマが来訪して家の外壁へ装飾を施してもらい後は明日、決行当日を残すだけとなったのだった。
……何かを忘れている気がしなくも無いが、思い出せないって事は問題ないのだろう。
ケーキよし、料理よし、サンタ服よし、ツリーよし、雪よし、プレゼントよし。
ほら、何も問題ない。




