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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第4章
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第95話 2貴族

 ティノが言ったように、町の城壁は5日で出来上がった。

 その事によってなのか、ハンソーに動きは無くダイトウの町は平穏に過ぎていった。

 数日後、漸くルディチ家と親交のあった元リンカン王国貴族の2家が、ダイトウの町に到着した。


「カセターニ様、グリマンディ様、ご到着お待ちしておりました」


 クランエローエの幹部達は、全員揃ってこの2家を片膝を付いて招き入れた。


「君は確か自警団の団長をしていた……」


 魔法が得意な家系の40代の男性、カセターニ家の当主チリーノ・ディ・カセターニは、アドリアーノの事を覚えていたらしく、話しかけていた。


「覚えていて頂けて光栄です。現在はクランエローエのリーダーを勤めています」


 話しかけられたアドリアーノは、自警団団長ではなく、今はクランリーダーという立場であることを遠回しで説明した。


「それにしても良くやってくれたな。フランコ殿も領地に帰れて喜んでおられることだろう」


 武術に長けた家系の体格の良い50代の男性、グリマンディ家当主ダニオ・ディ・グリマンディが、町の様子を眺めながら話に入ってきた。


「そうですね。それにしてもあの城壁……」


「あぁ、随分手間をかけたのだろう?」


 チリーノもダニオも、町の周囲に張り巡らされた立派な城壁に感心した声を上げた。


「……えぇ、まぁ……」


 アドリアーノは、1人の男が5日で作ったなどとは、とてもではないが言い出せず、言葉を濁した返事を返した。


「あの城壁ならば、ハンソーの軍が攻め込んで来ても簡単に侵入することはできまい」


「そうですね」


 そうダニオが言い、チリーノが笑顔で返事を返した。


「御二方、大した造りではありませんが、こちらの家をお使い下さい」


 アドリアーノは、クラン幹部達が集まることに使っている家を、この2家に提供して今後の事はまた後日話し合うことになった。


「……と言った感じだ」


 アドリアーノは、そうなった事を町外れのティノの家に来て話した。


「……ふ~ん。で? どうするの?」


 リンカン軍の驚異は去り、ハンソーも動きが無い今、今更この2家が来た所で余り意味がない。

 折角援護に来てくれた、しかも元とは言え貴族をこのままにして置く訳にはいかない。

 この2家の処遇の対処を、ティノはアドリアーノに尋ねた。


「…………、どうするべきか……?」


 2家の対処に、アドリアーノは頭を抱えて悩み出した。


「……ヤタ、ツカチの領地を与えて再建させたら?」


「!!? そうか! しかし……」


 元ルディチ家領地であった、ヤタとツカチの領地を与えれば、2家からしたら文句など無いだろう。

 2家とも、以前の領地をリンカン軍に攻め込まれる前に捨てたので、その時と同じ位の領地が手に入るのであれば、喜んで再建に乗り出すだろう。

 だが、ハンソーがまだどう動くか分からない中、瓦礫の山になっている町の再建は渋る可能性がある。


「あぁ、大丈夫! ここほどの城壁じゃないけど、ヤタとツカチに簡単な城壁を作っといたから……」


「………………、えっ……?」


 しれっと言ったティノの言葉に頭がついていかず、少し無言になった後、アドリアーノは漸く疑問の声を出した。


「あぁ、ここの城壁作った後、ついでにやっといた。無駄にならなくて良かったよ」


「ついでにって……」


 ティノも2家の対処が面倒になると思っていたので、先読みして2つの町の城壁を急ピッチで作っておいたのである。


「……まぁ、助かった。礼を言う」


 ティノの毎度の常識はずれに少し耐性が出来てきたのか、アドリアーノはティノの案を受け入れる事にした。






────────────────────


「くっ!」


“ガンッ!”


 マルコの攻撃の手数が増え、一つ一つの攻撃の威力が上がり、とうとうロメオは堪えきれなくなりつつあった。

 今もマルコの剣の威力に圧されて、防いだ六尺棒が弾かれそうになった。


『分かってた事だけど、全然隙なんて出来ねぇじゃねえか!』


 何とか距離を取ったロメオは、心の中で愚痴っていた。


『隙さえ作れば……』


“バッ!”


 休む間も与えないとばかりに、マルコはロメオとの距離を詰める。


「ハッ!」


“ボウッ!”


「!!?」


 近付くマルコに向かって、ロメオは掌大の火球を放った。


“サッ!”


 マルコは今まで、ロメオが魔法を使ったのを見たこと無かったので、火球を放った事に驚いたが、地面を横に蹴って火球を避けた。


「!!?」


 マルコが避けた先を読んでいたロメオは、今まで以上に魔力を高めて身体強化した体で襲いかかった。


「たー!!!」


 ここが勝負どころと感じたであろうロメオは、全身全力の突きをマルコに放って来た。


『いい攻撃だよロメオ。でも……』


「甘い!!」


“ガンッ!”


 しかし、マルコは高速で迫り来るロメオの突きを下から切り上げ、ロメオから武器を弾き飛ばした。

 この瞬間マルコは、勝負あったという思いが頭をよぎった。


「!!?」


“バキッ!”


 だがその直ぐ後、ロメオの右の拳がマルコの頬を撃ち抜いた。


『ヘヘっ、やってやったぜ!!』


 武器をわざと飛ばされ、勝負あったとマルコに思わせた瞬間の隙を狙う最終作戦が成功して、ロメオは拳を撃ち抜いた瞬間、心の中でガッツポーズを取った。


“ギロッ!”


 ロメオがマルコの頬を撃ち抜いたその直後、マルコは高速で振り返り、ロメオを睨み付けた。


“ゾクッ!”


 その目を見た瞬間、ロメオは寒気がした。


“ガッ!”


 マルコは、ロメオの撃ち抜いた直後の腕を掴み、


“ブンッ!”


“ドサッ!”


「グハッ!」


 片手でロメオを背負い投げして、地面に叩きつけ、


“スッ!”


 倒した直後、ロメオの目の前に剣を寸止めした。


「……参った」


 意識が追い付かないほど素早いマルコの行動に、驚愕の表情になりつつロメオは降参した。


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