第89話 あっちこっち
オルラルドの殺害はセコンド達に任せて、ティノは砦内の帝国兵を片っ端から消して行った。
「おっと!?」
砦内の廊下を走り、人の気配がするところへ向かうと、3人の反乱軍が傷だらけで帝国兵達と戦っていた。
「まだ生きてたか……」
その事に気付いたティノは、更に加速してその場に向かった。
“シャ!!”
その場に着くと、ティノは剣で反乱軍を囲んでいる帝国兵達を切り刻んだ。
“ドサッ!ドサッ!ドサッ!……”
そして、その場の帝国兵を倒し終えると、
「……回復薬は持ってるか?」
と、怪我をしている反乱軍の男に声をかけた。
「あっ、ああ……」
その男は、今起きた出来事に理解が追い付かない状態ながら、ティノに返事を返した。
「そんじゃ!」
ティノは一言告げて、もう一組の反乱軍のメンバーの所に向かった。
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“タッタッタッタ……”
「……ヤバイ!」
廊下を走りつつ気配を探ると、こちらの反乱軍のメンバーはほとんどやられて、最後の1人が止めを刺される寸前だった。
その事に気付いたティノは、足だけ身体強化をして、音速並の速さで走った。
「!? ハッ!」
帝国兵が、反乱軍の生き残りに剣を振り下ろす姿が見えたティノは、その帝国兵に向かって魔法を放った。
“パンッ!”
ティノが放った高速火炎弾が帝国兵の頭に当たると、その帝国兵の頭が弾け飛んだ。
「!!? 何だ!?」
頭が弾け飛んだ姿を見た他の帝国兵は、慌てて魔法が飛んできた方角を見た。
“シャ!!”
しかし、そちらに顔を向けた瞬間、現れたティノを認識する間もなく命を落とした。
「…………あっ!? …あ、…んた、…は?」
反乱軍の生き残った女性は、体中傷だらけの片足を失った状態で、途切れ途切れに言葉を呟いた。
「……待ってろ!」
その女性の足が離れた場所にあったので、ティノは一言告げてその足を拾って持ってきた。
「…何、…を?」
ティノのその様子を見て、女性は疑問の声を出した。
「……繋げる! ハー……」
ティノは言葉少なに返し、魔力を集めて、切り離された女性の足を繋げるイメージで回復魔法を放った。
「…………フー! 後は深い傷を……」
足を繋げる事にかなりの魔力を使い、一息ついた後、体の内臓近くまで切られた深い傷を回復させた。
「……よし。後は回復薬ででも飲んで直しな!」
回復魔法によって一命をとりとめた女性に対して、ティノはそのように一言告げた。
「リリアーナ!!?」
ティノが回復を終えて立ち上がると、そこに反乱軍のセコンドが現れた。
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「全く……、楽勝かよ!?」
マルコが西口から控え室に戻ろうとしすると、ロメオが少し呆れ気味に話しかけてきた。
「ははっ……、まぁね」
マルコは苦笑ぎみに返事を返した。
「ロメオもそろそろ準備したら?」
2人で話している間に、第3試合が開始されていた。
ロメオは第4試合なので、マルコは軽く忠告した。
「……そうだな」
その言葉の返事に、ロメオは少し間が空いた。
「……ロメオ、もしかして緊張してるの?」
それほど長い付き合いではないが、これまでの付き合いから、マルコはロメオの顔が固くなっているように思えた。
「……ちょっとな」
図星をつかれたロメオは、正直に呟いた。
「大丈夫! 力を出し切れば勝てるって!」
これまでの訓練で、ロメオの実力は上がっている。
それを側で見てきたマルコは、ロメオに太鼓判を押した。
「……おう! じゃ!」
まだ固いながら気合いが入ったようなロメオは、軽い挨拶をした後、準備をするため自分の控え室に入っていった。
「……さてと、荷物取って客席に行くか?」
ロメオを見送ったマルコは、自分の控え室に戻って荷物を取ってロメオの試合を観るために、客席に向かった。




