第88話 参戦
セコンド達反乱軍に、帝国兵達が襲いかかった。
“バリッ!!”
しかし、その瞬間電撃が流れ、襲いかかった帝国兵達は痺れて動きが止まった。
「!!? ハッ!」
その瞬間セコンド達反乱軍が、戸惑いつつも動きが止まった兵士を斬り殺した。
「!!? だっ、誰だ? 何をした?」
その状況に慌てたオルラルドは、電撃を放った人間を探した。
“コンッ!”“コンッ!“
「!!? 貴様は……!?」
「よっ!」
その時、開いている扉をノックして、ティノは姿を現した。
「!!? お前は……」
現れたティノを見て、セコンドも驚いた。
「!? そうか、貴様反乱軍の関係者だったのか?」
セコンドの呟きに反応したオルラルドは、ティノをそのように判断した。
「いや、俺は反乱軍ではない!」
オルラルドの言葉に、ティノはきっぱりと否定した。
「ならば何故邪魔をした!? 貴様、敵ではないと言ったではないか!!」
怒りで顔を紅潮させつつ、オルラルドはティノに怒鳴り散らした。
「……うん。あの時は味方だった。でも……」
ティノは言葉を途中で切った後、
「……今は敵だ!!」
“シャ!!”
“カチンッ!”
“ドサドサッ……!”
その言葉と共にティノは剣を振り、鞘に剣を収めると、部屋にいた帝国兵の全てが糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
「「「「「「「「……………………」」」」」」」」
あまりの速さと出来事に、オルラルドとセコンド達反乱軍は驚きで言葉が出なくなっていた。
「……さてと、セコンド!!」
「……!? えっ?」
ティノに名前を呼ばれた事で、セコンドは部屋にいる他の人より早く反応した。
「砦内の帝国兵は俺が全て消すから、お前らはオルラルドを殺れ!」
「……えっ!? !!? わっ、分かった!」
ティノの指示に、軽いパニック状態だったセコンドは、かろうじて返事を返した。
「きっ、貴様何故私を……?」
オルラルドは色々な感情を宿した顔をして、自分を追い詰めるティノに疑問を投げ掛けた。
「……何故も、何も、お前は最初からその予定だ!」
オルラルドに背を向けつつ、突き放した言葉を放った後、ティノはその場から動き出した。
「…………セコンド、彼は……?」
反乱軍の1人が、その場から去っていったティノの事をセコンドに尋ねた。
「……分からないが、今は敵ではない」
セコンド自身、思っていた以上なティノの実力が計り知れず、戸惑いつつ質問に答えた。
「今はそれより……」
そう言って、セコンド達反乱軍は全員オルラルドに目を向け、それぞれ武器を向けつつにじり寄っていった。
「……そんな、こんな所で……」
ほんの数分前は笑い声を上げていたオルラルドは、反乱軍達に囲まれ、絶望の言葉を呟きつつ、セコンド達によって命を落としたのだった。
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「始め!」
審判のアルマンドの合図によって、マルコの初戦は始まった。
“バッ!”
開始の合図と共に、ベルトルドがマルコに向かって突進して行った。
「くたばれやー!!」
体格の割りに素早い動きで、自分の間合いに入ったマルコに向けて、物騒な言葉と共にベルトルドは大剣を振り下ろした。
“フッ!”
しかし、マルコは難なくベルトルドの攻撃を横に躱した。
「!!? チッ!」
躱されたベルトルドは、舌打ちと共に大剣を横に薙いだ。
“タッ!”
その攻撃も、マルコは軽くバックステップをして躱す。
「くっ! ちょこまかと……」
それからベルトルドは、怒りの表情で大剣を振り回してマルコに攻撃を放って行った。
“スッ! スッ! スッ!……”
そのベルトルドの全ての攻撃を、マルコは躱し続けた。
その後は、攻撃をし続けるベルトルドと、躱し続けるマルコという構図が続いた。
最初、ベルトルドの攻撃を躱すマルコに、観客達は声を上げて喜んでいたが、それが続くことで次第に無言になって行った。
「ハァ、ハァ、ハァ……、この餓鬼……」
攻撃が全く通用しないベルトルドは、息を切らしてマルコを睨み付けた。
因みに、ベルトルドは魔法が得意ではないようだが、身体強化は中々の物であり、開始と同時に発動していたのだが、マルコは身体強化をしない状態でいた。
“タッ!”
「!!?」
“ドムッ!”
「ガッ!?」
疲れで身体強化が弱まったベルトルドを、マルコは一瞬で懐に入り、溝尾に拳を突き込んだ。
“ボカッ!”
大剣を落とし、両手で腹を押さえて前屈みになったベルトルドの頭に、マルコは拳を落とし気を失わせた。
「…………勝者、マルコ!」
“ワアアアァァァ……!!!!!”
ベルトルドが気を失っていることを確認した審判のアルマンドが、マルコの勝利を告げると、観客達は会場が震えるほどの歓声を上げた。
その歓声を背中に受けつつ、マルコは闘技場の西口に向かって去っていった。




