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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第4章
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第84話 当時の話 その4

 マルコを連れた執事のセバスティアーノを探して、アドリアーノは商業区の路地を動き回っていた。


『どこにいるんだ? セバスティアーノさん……』


 住宅街とは違い、商業区はまだそれ程破壊されておらず、アドリアーノは兵士を避けつつセバスティアーノを探しながら、心の中で呟いていた。


“ガタッ!”


「!? ……何だ、猫か……」


 不意に物音がしてアドリアーノが顔を向けると、一匹の猫が路地裏から走り去っていった。


「今は猫に気を取られている場合じゃ無いっての……」


 愚痴をこぼしつつ、またセバスティアーノを探しにそこから動こうと思った時、何故か猫が出てきた路地に目が行った。


「……団長!」


 その時、住宅街を探してきたヤコボが、アドリアーノの元にたどり着いた。


「こっちは……、いませんでした」


 ヤコボは住宅街の捜索結果を、アドリアーノに報告した。

 しかし、住宅街での惨劇を思いだし、また怒りが湧くのを押さえた為、少しの間が空いた。


「そうか……」


 ヤコボの表情が優れない事にアドリアーノは気付いたが、後で聞くことにし、捜索を優先する事にした。


「…………」


「……団長! どうしました?」


 ヤコボを連れて、捜索を続けようとしたアドリアーノだったが、まだ先程の路地裏が気になり、無言でそちらに向かって歩き出した。

 ヤコボは、その行為を質問しつつ付いていった。


「………………!!? セバスティアーノさん!?」


「セバスティアーノさん!!」


 その路地裏は、周囲の建物の壊された瓦礫が転がっており、それが壁になっていたのか、アドリアーノが奥の方に進むと、セバスティアーノが血塗れの状態で座り込んでいた。

 その事に気付いた2人は、セバスティアーノに近寄り声をかけた。


「……くそっ! 死んでる!」


 アドリアーノが、セバスティアーノの首に手を当てて脈を計るが、反応が無かった。


「……御子様は?」


 アドリアーノの言葉を聞いたヤコボが、セバスティアーノが赤子を抱いていないのを見て呟いた。


「…………遺体はまだ冷たくなってない! ……もしかしたら、どこかに隠したのか?」


 ヤコボの言葉を聞き、アドリアーノは周囲を見渡した後、そのように考えた。


「辺りを探すぞ!」


「はい!」


 そのようなやり取りをした後、2人は辺りの瓦礫の影などを隈無く探し始めた。


「くそっ! 居ない!」


「どこだ! くっ!」


 2人は、マルコの姿が見当たらないことに焦りつつも、必死に周囲を探した。


“ザッ!ザッ!……”


「「!!?」」


 路地裏を探している2人に、路地の方から足音が響いてきた。

 2人は探すのを一時止めて、瓦礫の影に入り身を隠した。

 アドリアーノが、瓦礫の影から路地を覗き込むと、リンカン軍の兵士が逃げ遅れた市民が居ないか探す人数を増やし出したようだ。


「まずい! ここももう駄目だ!」


「団長! どうしましょう?」


 路地を通りすぎるリンカン兵士が増え、この路地裏の捜索も時間の問題になってきた。


「…………くそっ! ヤコボ! 避難するぞ!」


「え!? しかし……」


 アドリアーノは状況判断をして、苦渋の決断をした。


「これ以上は無理だ! 行くぞ!」


 アドリアーノの決断に、まだマルコが見つかっていない事を言おうとしたヤコボに、アドリアーノは強い口調で指示を出した。


 そして2人は隙を見て路地裏から脱出し、その後兵士に見つからないように町から出て、東の森に向かって避難して行ったのだった。






────────────────────


 入学から2ヶ月半経ち、6月の後半に校内戦が開幕された。

 長期休暇に入る1週間前、この7日間でトーナメント制で行い、優勝者がハンソー国内の全国大会に出場できる。


「いよいよ始まるな?」


 校内戦参加者によるトーナメントの組み合わせを行う為、校内にある大広間に集まったマルコが、同じく参加するロメオに話しかけた。


「そうだな。取りあえず1回戦位勝ちたいな」


「大丈夫だよ。ロメオはだいぶ強くなったし……」


 少しの固い表情で呟くロメオに、マルコは落ち着かせる為に話しかけた。


「そうだよな……」


ロメオは(・・・・)って、自分は勝って当たり前と思ってるのか?』


 マルコの言葉に少し落ち着いたロメオは、よくよく考えるとその事に気付いた。


『まぁ、それもそうか……』


 これまでのマルコとの訓練で、マルコの実力を嫌と言う程知っているロメオは、すぐにそう思い返した。


「それでは校内線の組み合わせ抽選会を開始します!」


 司会の女性の言葉が響き、上級生の成績順に名前が呼ばれ、箱の中の番号が書かれた紙を引いていった。


「……順当に行ったら準々決勝で当たるな?」


 全員が引き終わり、決定したトーナメント表を見てマルコは呟いた。


「……いや、お前はともかく、俺は無理だろ……?」


 マルコは1回戦の2番目、ロメオは4番目、参加メンバーは全部で32人なので、勝ち上がると準々決勝で当たる。


 翌日から1回戦の半分が開始され、マルコとロメオは、A、Bの2つの競技場の同じA会場で戦うため、用意された個室の控え室で試合開始を待った。


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