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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第4章
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第83話 当時の話 その3

 団長であるアドリアーノの指示により、全員多少の火傷を負いつつ脱出に成功した。


「皆! 無事か!?」


 頭部に火傷を負ったベルナルドに肩を貸しつつ、少し遅れてアドリアーノは屋敷から脱出した。


「無事です!」


「団長! これからどうしますか?」


 一番先に屋敷から出たデボラが、アドリアーノに答えて、続いてヤコボが問いかけた。


 アドリアーノが周囲を見渡すと、辺りの家や店は壊され、道路にはリンカン軍に殺された市民の遺体が、ゴロゴロと転がっていた。


「……くっ! 全員! 出来る範囲で市民を助けつつ東の森へ避難しろ!」


 これは、町が襲われる前に決めて置いた事である。

 もしもの場合東の森に避難し、川を使ってハンソー王国へ密入国するようにフランコから話されていた。


「ヤコボ! お前は俺に付いてこい! 恐らくセバスティアーノさんは御子様を連れていて目立つ、路地を使って避難するのは時間がかかる! 余り遠くない所にいるはずだ! 見つけ出して護衛するんだ!」


 領主屋敷に火が上がってから、アドリアーノ達が駆けつけるまで、それほど時間はかかっていない。

 リンカン軍の兵士が、やたらめったらに市民の殺害と町を破壊している中、赤子を抱えて逃げ回るのは時間がかかる。

 そう思ったアドリアーノは、一番怪我が少ないヤコボを連れて捜索に向かうことにした。


「「「「「「「「「分かりました!」」」」」」」」」


 アドリアーノの指示に、全員が従い行動に移った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「ヤコボ! 2手に分かれるぞ! 俺は商業区! お前は住宅街に向かえ!」


「分かりました!」


 赤子のマルコを抱えて、避難している執事のセバスティアーノを探しに向かったアドリアーノとヤコボは、逃走の予想経路から、商業区と住宅街の2手に分かれて探すことにした。


「見つからなかったらお前も商業区に来い!」


 住宅街は、かなり破壊されていたので探す範囲は少ない為、その為アドリアーノは、言葉を付け足して指示を出した。


「分かりました!」


 ヤコボは了承して住宅街へ向かった。

 それを見てアドリアーノは商業区に向かった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……………………」


 アドリアーノと別れたヤコボは、物陰から見た風景に言葉を失った。


“ザクッ!”


「ぐあー……!」


「フハハハハ……!」


“ザクッ!”


“ザクッ!”


 そこには沢山のリンカン軍の兵士が大きな輪になり、数人のトウダイ市民を押さえ込んでいて、輪の中央の太った貴族風の男が、兵士から中央の男へ押し出された市民を1人、また1人と、愉悦の笑い声を上げながら剣で切り殺していた。


「……ベリザリオ様! これ以上は殺さず捕虜とし、奴隷にした方がよろしいのでは……?」


 この惨劇に耐えきれなかったのか、1人の兵士がその貴族に恐る恐る尋ねていた。


『ベリザリオ!? 確かオルチーニ家の嫡男の……、くそっ!』


 ヤコボは、遠くから聞こえた貴族の名前に心当たりがあった。

 ルディチ家を陥れた公爵家の嫡男の名前だった為、ヤコボは頭に血が上り相討ち覚悟で飛び出しそうになった。

 しかし、周囲の兵士の数に無駄死にに行くだけだと分かり、どうにか自分を押さえ込んだ。


「…………」


“ズバッ!”


 忠告をしてきた兵士を無言で見ていたベリザリオは、そのまま無言でその兵士の首を剣で切り飛ばした。


「……次!」


 殺した兵士をすぐに無視し、そう言ってまたベリザリオは市民を切り殺し始めた。


『くっ……!!』


 笑いながら市民を殺すベリザリオと、ベリザリオに殺される市民を助けられない自分に怒りで狂いそうになりながら、ヤコボは住宅街にセバスティアーノがいないことを確認し、アドリアーノのいる商業区に向かった。






────────────────────


「フへ~……、疲れた……、もう寝たい……」


 朝から6時間程ゴブリン退治をして、ロメオは疲労の色の濃い顔で町の入り口に入った。


「ロメオ、まだギルドに行かないと駄目だよ」


 その点マルコは、今までの経験から全く苦もなく歩いていた。


「あ~……、そうだった」


 そんなやり取りをして、2人はギルドに依頼の報告に向かって行った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……はい。確かに依頼の達成を確認しました」


 朝と同じ受付嬢に討伐したゴブリンの素材を渡し、2人は依頼完了の手続きを行った。


「あ~、終わった」


 初めて単独の魔物退治を何匹も行い、体以上に精神が疲れたロメオは寮に向かいながら呟いた。


「次の休みは今日以上の魔物退治を行うからね!」


「……え!?」


 さらりときついことを言うマルコに、ロメオは驚きで固まった。


 それからマルコとロメオは、休みは魔物退治、平日は放課後、寮の空き地で組手の訓練をして、校内戦の開幕を迎えた。


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