第81話 当時の話 その1
途中な感じですが、一端ここで切りました。
家の修復を終えたティノは、翌日に家具を作り設置した後、近場の土地を土魔法で耕し、種を蒔いて過ごしていた。
「あのボロボロの小屋が、ちゃんとした家になってる……」
ティノが修復した家を見て、クランエローエのリーダーは驚きつつ呟いた。
「おぉ、リーダー……」
種を蒔き終えたティノは、家を見て驚いているリーダーに声をかけた。
「……ん? そう言や、あんたの名前聞いてなかったな?」
ティノは今更ながら、リーダーの名前を聞いた。
「……今更か? ……アドリアーノだ」
リーダーはティノの質問に、少し呆れつつ答えた。
「そうかい。じゃあ、今日は何の用だい? アドリアーノ……」
ティノは早速名前を呼びつつ、用件を訪ねた。
「約束しただろ? フランコ様達の最期の事を話すと……」
「…………あっ! そうだった!」
初めてクランの拠点に行った時、オルチーノ家の嫡男の首を取ってきたら、教えて貰う約束をしていた事をティノは思い出した。
「まぁ、中で話そうか?」
ティノはアドリアーノを、家の中に招き入れた。
「はい、お茶」
ティノは、家の中へ招いたアドリアーノにお茶を出した。
「あぁ、すまん」
今日ティノが作った椅子に座り、同じく目の前にある出来たてのテーブルに出されたお茶に、アドリアーノは感謝の言葉を告げた。
「……さて、どこから話そうか?」
少し間を開けた後、アドリアーノは話し出した。
リンカン軍がトウダイに攻めてきた時、アドリアーノはトウダイを守る自警団の団長をしていたらしい。
リンカン軍の襲撃に対して、フランコ率いる自警団が交戦していた時、アイーダとマルコがいる領主屋敷に火が上がり、フランコと現在のエローエの幹部達は領主屋敷にアイーダとマルコの救出に向かった。
屋敷に着くと火の回りが速く、屋敷は火に包まれていて救出は困難だと思われた。
しかし、フランコはアドリアーノ達が止めるのを聞かず、中に入り妻と子を救出に中に入っていった。
アドリアーノ達も屋敷の中に入り、フランコを追いかけた。
しかし、アイーダ達がいるはずの部屋に着く手前で、先行していたフランコの頭上へ瓦礫が落下してきてフランコは下敷きになってしまったらしい。
アドリアーノ達が駆け寄ると、
「ア、イーダ、と、子を、頼む……」
フランコは最後までアイーダとマルコの事を案じて息を引き取ったと言うことだった。
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翌日は学校が休日だったので、マルコはロメオを連れて冒険者ギルドに向かった。
「これが良いかな?」
マルコは依頼書が貼り出された掲示板を一通り眺め、1つの依頼書を手に取り受付に向かった。
「この依頼をお願いします」
「はい、畏まりました。冒険者カードを表示して提出して下さい」
受付の女性に依頼書を渡すと、カードの提出を求められた。
「はい」「はい」
“ピクッ!”
「承りました。では、お気をつけて……」
マルコとロメオが冒険者カードを提出して、受付の女性がマルコのカードを見た時一瞬動きが止まったが、すぐに書類にメモを取った後2人にカードを返し、受け付けたとの言葉を受けて、マルコとロメオはギルドから出て、近くの森に向かって行った。
『ちゃんとした受付の人だったな……』
マルコはギルドを出て行く途中、そのように思っていた。
何故なら、マルコのカードにはAランクと印されているのを、大声を出さず受け入れた事である。
冒険者カードは、持ち主の魔力でしか内容の表示はされないようになっている。
新人などの受付が、マルコの年令でAランク等と表示されたカードを見た場合、驚きで声を出してしまう場合がある。
ギルドの受付は、ギルド職員以外に冒険者の情報を秘匿しなければならない。
冒険者の情報は、内容次第で大金に代わる。
命をかけて手に入れた情報を、思わずとはいえ話されたら、冒険者は死活問題である。
その点、先程の女性は一瞬止まったが、何の反応もせず対処していたので優秀だとマルコは思ったのである。
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近くの森に来た時、ようやくロメオはマルコに尋ねた。
「何の依頼なんだ?」
「ロメオの鍛練を兼ねた依頼だよ」
そう言ってマルコは森に入っていった。
「!? いた!」
「!? ゴブリン?」
森の中を進むと、1匹のゴブリンが歩いていた。
「ロメオ! 倒したことは?」
マルコはゴブリンを指差しつつロメオに尋ねた。
「何回か……、兄貴と一緒に……」
「じゃあ、今日は1人で!」
「ええ!?」
ロメオの言葉に、マルコはゴブリン討伐を指示した。




