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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第4章
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第78話 追い打ち

 オルラルドの水攻め作戦によって4分の1近くの兵が消えたリンカン軍は、一度態勢を整える為に自軍の砦に戻って行った。


「クククッ! 無様だな……」


 リンカン軍が慌てふためいて砦に戻って行く様を眺めつつ、オルラルドはほくそ笑んだ。


「しかし、もう少し削っておきたかったな……」


 作戦が見事に成功し、喜んでいたオルラルドだったが、突如冷静に分析し呟いた。


「……なぁ?」


「ん?」


 オルラルドがこれからの戦略を考え出した時、帝国兵士の格好をして側にいたティノが話しかけた。


「俺、帰って良いか?」


 開戦までこの砦から出るなという約束は果たされたので、ティノはさっさとトウダイに戻りたいと思っていた。

 その為、作戦成功に喜んでいるオルラルドに、帰っても良いか尋ねた。


『公爵家の嫡男を暗殺する技術に、長距離をあっという間に移動する能力、更にこの砦にすんなり侵入出来るほどの隠密力……』


 ティノの問いかけに対してオルラルドは、リンカン軍への戦略を考える事からティノの対処に思考が代わった。


『……魔力封じの腕輪を着けている今の内に、始末するべきか……?』


 オルラルドの頭の中では、ティノをこの場で殺しておくべきだという考えが沸き上がって来ていた。


「……あっ、そうだ! 帰る前にリンカンへの追い打ちの策を教えてやるよ」


「!!?」


 ティノをどうやって殺すかを考え出していたオルラルドは、ティノの言葉にその考えが停止した。


「……どんな策だ?」


「取り敢えずこれ外してくれよ」


 ティノの策に興味を示したオルラルドに、魔力封じの腕輪を外すようにティノは言った。


「…………分かった」


 ティノの殺害と、いまいち削れなかったリンカン軍への追い打ちを天秤にかけ、追い打ちの方に傾いたオルラルドは仕方なくティノに着けた腕輪を外す事にした。


「フ~……、さてと、追い打ちの策だが…………」


 腕輪が外れて、いつも通り魔力が体内を巡るのを感じ一息ついたティノは、その後すぐにオルラルドに策を告げた。





「……本当に出来るのか?」


 リンカン軍が集まる砦に対しての闇討ちをする為、馬に跨がり準備を整えたオルラルドが、側に立つティノに対して問いかけた。

 オルラルドの背後には厳選された闇討ち部隊が、オルラルドと同様に馬に跨がり待機していた。


「大丈夫だ。任せておけ!」


 そう言ったティノは川の土手の上に立ち、両手に魔力を溜め始めた。


「ハー……!!」


“パリッパリッパリッ……!!!”


 ティノは、オルラルドの策で水位が上がった川の水を水魔法で操り、それを一気に凍らせて、巨大な橋を作り出した。


「なっ? 言った通り出来ただろ?」


 橋を作り出したティノは、ドヤ顔でオルラルドに振り返った。


『こんな強力な魔法まで使えるとは……、やはり殺しておくべきだったか?』


 ドヤ顔のティノを見つつ、オルラルドは背中に冷たい汗をかきつつ、選択を間違えたと思い始めた。


「そんじゃあ、俺は帰るから闇討ち頑張れよ!」


“フッ!”


 あまりの出来事に動きが止まったオルラルドをよそに、ティノは一言告げてその場から消え去った。


「……オルラルド様、あの者はいったい……」


 闇討ちの部隊の1人が、突如1人で巨大な氷の橋を作り出し消えたティノの事を、オルラルドに尋ねるように呟いた。


「奴の事は気にするな! 今はそれよりもこの機にリンカン軍へ攻め込むぞ!」


「「「「「オッ……、オー!!!!!」」」」」


 気持ちを切り替えて発したオルラルドの指示に、戸惑いつつ兵達は声をあげ、巨大な氷の橋を渡り始めた。


 そしてティノが去った後、オルラルド達はリンカン軍への闇討ちを実行し、リンカン軍の兵を更に消し去る事に成功したのだった。






────────────────────


 翌日の放課後、マルコとロメオは、職員室で担任のアルマンドに校内戦の参加を希望した。


「ん~……、マルコは分かるがロメオもか?」


 2人の話を聞いたアルマンドは、少し考えた後思わずロメオに問いかけた。


「はいっ!」


 アルマンドの言葉に、ロメオは何の迷いも無い返事を返した。


「……まぁ、参加人数が少ない場合もあるからな。……取り敢えず申し込んで置いてやるよ。」


「はい! お願いします!」


 アルマンドが言ったように、校内戦に参加する人数は年によって多かったり、少なかったりする。

 最上級生のトップクラスが参戦するこの大会で、最上級生とはいえ実力の無い生徒は、怪我をしたくないので参加しない場合がある。

 7、8月の長期休暇迄に校内の優勝者を決めないとならない為、大人数になった場合は参加許可が降りない場合があるのである。


「「失礼しました!」」


 話が済んだマルコとロメオは、一礼して職員室から出ていった。


「さてと、マルコ!」


 寮迄もうすぐ着くと言うところで、ロメオは立ち止まりマルコを呼び止めた。


「ん!?」


「これからちょっと手合わせしようぜ!」


 返事をしつつ振り返ったマルコに、ロメオはそう言い放った。




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