第77話 開戦
ティノが帝国軍将軍のオルラルドの砦に来て、1週間が経った。
「ん~……、壮観だね~……」
砦の最上階に上がり対岸を見つめると、リンカン王国側の砦には大軍勢が集結していて、すぐにでもこちらへ向かって攻めてきそうである。
その集まった軍勢を、オルラルドは嬉しそうに眺めていた。
終結した敵の数は、ざっと見積もってこちらの15000の3倍位の数になっている。
「ようやく開戦か……」
オルラルドの側に立つティノも、ここでのつまらない日々から解放される事が間近に迫って来たことに、嬉しくなった。
「明日にでも奴等は攻めてくるだろうな?」
「だろうな……」
ティノからしたら早く帰りたいので、さっさと開戦して欲しいところである。
翌日、オルラルドの予想通りリンカン軍は大軍勢で、こちらの砦に向かって迫りだした。
「サンソーネ! 準備は良いか?」
【はい。オルラルド様いつでも大丈夫です。】
動き出したリンカン軍を見て、オルラルドは何か策があるらしく、通信の魔道具で部下と連絡を取り合った。
そして大勢のリンカン軍が500m位の幅の、膝下位の水位の川を勢いよく渡りだした。
「土手を登らせるな!!」
オルラルドは砦内の味方の帝国兵に、川を渡り3m位の高さの土手を登ろうとするリンカン兵を抑えるように指示を出した。
「…………そろそろだな。やれ! サンソーネ!」
【はいっ!】
オルラルドの合図と共に、通信していた部下が何かをしたようだ。
だが、ティノは何をしたかは分かっているので、ただボーっと戦場を眺めていた。
“…………ドドドドドッ!!!!!”
少しすると、戦場に地響きが響き渡ってきた。
「「「「「!!? 何だ!?」」」」」
突然の地響きに、リンカン王国の兵達は慌て出した。
「「「「「水だー!! 水攻めだ!!」」」」」
“…………ドドドドザバー!!!!!”
地響きの正体に気付いたリンカン兵達が叫んだが時すでに遅く、あっという間に大量のリンカン兵を飲み込み、大量の水死体を作り上げていった。
例え泳ぎが得意であろうとも、戦時中で重たい鎧を着けた兵士達はなす統べなく流れていった。
「クッ、ハハハハハ……!! すごいぞ! あれほどの人数があっという間に消え去ったぞ!」
オルラルドは、大量のリンカン兵が自分の策にはまり消え去ったことに、大笑いを始めた。
「近くの帝国側の川をこちらに繋げただけで、ここまで上手く行くとはな!」
オルラルドが行った水攻めは、彼が言ったように帝国側の川をこちらに繋げただけである。
リンカン軍も砦間の川の上流を調べ、水攻めが来ないかの調査はしていた。
調査をした上で、まっすぐ数で潰しにかかったのだが、流石に帝国側の川を調査することは出来ず、作戦が裏目に出て大量の兵士が消え去ったのだった。
「時間を掛けた甲斐があったな……」
この川沿いの砦に配属されて、オルラルドは川を利用した戦略を練り、思い付いた策を時間を掛けて作りあげたのだった。
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「えっ!? 校内戦に参加しろって?」
学生寮のマルコの部屋に、マルコが校長室に呼ばれた理由を聞きにロメオが来た。
そして、マルコが校長から校内戦に参加するように言われた事を説明した。
ロメオは校内戦の事を知っていたらしく、マルコの説明を受けて驚きの声をあげていた。
「新入生の僕が参加して良いのかな?」
校長の指示とはいえ、通常最上級生が参加する大会に、マルコは未だに納得いかないでいた。
「ん~……、良いんじゃねえの?」
ロメオは少し考えた後、軽い口調で答えを返した。
「校内戦って確か、最上級生しか参加しないだけで、他の生徒が出ても良いんじゃなかったかな?」
「えっ!? そうなの?」
ロメオの話の内容に、今度はマルコが驚いた。
「下級生が参加しても勝ち目が無いから、最初から参加しなくなっただけらしいぞ!」
「へ~、そうなんだ」
ティノに連れられて色々な土地を回ってきたマルコは、そういった事に疎いため、初めて聞いたロメオの話の内容に納得したのだった。
「…………そうだ!!」
「!? どうした?」
ロメオが少しの間考え事をした後、大きな声をあげた。
マルコは、ロメオが何を思い付いたのか問いかけた。
「俺も参加する!!」




