第75話 オルラルド
「……ん~、取りあえず敵ではない」
ティノは、ここ最近よく使う言葉をまた使った。
トウダイの為に、使える者を使おうと暗躍めいた行動をしているが、自分がオルラルドを直接倒す訳では無いので、敵ではないだろうと思いつつ平然と答えた。
「……さっきのオルチーノ家の嫡男の首とは本当か?」
ティノに対して、椅子から立ち上がり腰に下げていた剣を抜く構えをしつつ、オルラルドは問いかけた。
“スッ!”
“ドサッ!”
「あぁ、本当だ」
首を魔法の指輪から取りだしテーブルの上に置き、オルラルドの対面のソファーに座り、堂々とした態度でティノは答えた。
“スッ!”
「……何故それを俺に?」
ティノの態度から毒気を抜かれたオルラルドは、構えをときソファーに座り問いかけた。
「あんた、リンカン王国と戦う機会をうかがっているだろ?」
指を指しつつ、ティノはストレートに問いかけた。
「!!? 何故それを……」
オルラルドは、自分の野望を誰にも話したことがないのに、目の前の男に言い当てられた事に驚きつつ呟いた。
「……あんたの性格からしたら予想出来ることだ」
オルラルドの功名心が高いのは、かなりの帝国民に知られている事で、この砦に配属された状態なら、どこを相手に名を上げるのが1番かは考えればすぐ分かることである。
「この首は手に入れたばかりでな。リンカン側は犯人は誰だか分かっていない。明日には大騒ぎだ。そこであんたがこの首を手に入れたとリンカン側に宣言すれば、取り返そうと向かって来ることは間違いない。そうすればお前は川を渡るリンカン軍に対して対処すればいい。」
ティノはこの首の使い方を、オルラルドに簡単に説明した。
「……貴様、ハンソーの者か?」
リンカンと戦わせたがるティノに、オルラルドはハンソーの工作員ではないかと疑った。
「いや、俺はトウダイの者だ」
オルラルドの言葉に、ティノは隠すことをやめ正直に答えた。
「トウダイ……、やはりハンソーと関わりがあるではないか!」
リンカンとの戦争の機をうかがっている為か、情報の収集力は高いようだ。
「確かにトウダイ奪取にハンソーの協力を得たが、武器や食糧の援助程度で戦力の援助は受けていない。更に言えば我々が奪取した土地を、寄越せと言ってこないとも限らない間柄だ。……それに関わりがあっても今回では関係ないだろ?」
ティノはハンソーとの関係がばれても、悪びれる様子なく話した。
「どう言うことだ?」
「リンカンと戦う事になったとして、ハンソーがその情報を得る頃には何も用意出来ていないだろう?」
開戦したのをハンソーが知るには、多少の時間がかかるのは分かりきっている事だ。
“シャキン!”
「……確かに、ハンソーの軍が来る頃にはリンカン軍は後退させている自信がある。……だが、お前が明日にでもハンソーに知らせに動いたら話は別だ!」
オルラルドは剣を抜き、ティノの目の前で止めつつ話した。
首を取って、すぐにここに来られる移動手段がティノにはあるということは、ハンソーに行く事も出来る可能性がある。
その事に気付いたオルラルドは、首だけ頂き、ティノを消す事も考えた。
“フッ!”
止めた剣をそのまま突き刺そうとした時、オルラルドの目の前からティノは消えた。
「だったら、開戦するまであんたのそばから離れないでいてやるよ」
「!!? …………なら良い」
オルラルドの左側からティノの声が聞こえ、驚きつつオルラルドはティノの提案を受け入れたのだった。
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戦闘訓練から数日後、マルコは何故か校長室に呼ばれ、放課後に校長室に向かった。
“コンッ!”“コンッ!”
「失礼します」
ノックをして校長室に入ると、入学試験と入学式の時に見た髭を蓄えた老人が座っていた。
「おぉ、よく来てくれた。そこに腰掛けてくれ」
そう言って校長は、校長の机の前にあるソファーに座るようにマルコに話した。
「はい。失礼します」
言われた通りに、マルコは一礼してソファーに腰かけた。
「君を呼んだのは1つ提案があっての……」
「……提案ですか?」
校長は、少し話しづらそうな表情である事をマルコに提案した。
「校内戦に参加してくれんかの?」




