第74話 砦内へ
酒場から出たティノは、町から5分程離れた場所にある砦に向かい、暗闇に紛れて中に侵入した。
『入ったのは良いけど将軍はどこいるんだ?』
砦の中には、隠れる場所があまり無いので迷っている暇はない。
“ガシャ!”“ガシャ!”
『!!? やばっ!』
“バッ!”
見回りの兵士らしき足音が聞こえてきたので、ティノは慌てて天井に張り付いた。
“ガシャ!”“ガシャ!”
天井がやや高かったのが幸いしたのか、兵士は気付かずティノの下を通りすぎて行った。
『あっ! そうだ!』
“スタッ!”
“ドカッ!”
ティノは思い付いたように床に降り、歩いていた兵士を一瞬で伸した。
そして、近くにあった部屋に連れ込み、兵士が付けていた鎧を剥ぎ取り、気を失っている兵士を縛り転がして、剥ぎ取った鎧を着て、何食わぬ顔で砦内を歩き出した。
『さっさと将軍を見つけないとな……』
ティノは5階建ての砦内の将軍の部屋を探して歩きまわった。
そして、ようやくそれらしき部屋を見付け出した。
『さてと、どう切り出そうかな……』
侵入に関しては不安は無かったが、どうやって将軍に首を渡そうか、ティノは扉の前で考え始めた。
「……人の部屋の前で何をしている?」
ティノが扉の前で顎に指を当てて考えていたら、右側から声をかけられた。
誰かと思って見たら、オルラルド本人が立っていた。
「ハッ! オルラルド将軍に御報告したき事がありまして参上しました」
ティノは兵士らしい口調で、オルラルドに言葉を返した。
「報告……? まぁいい、中には入れ!」
「ハッ! 失礼します」
オルラルドに促され、ティノは室内に入っていった。
“ドサッ!”
「それで……、報告とは?」
オルラルドはソファーに深々と腰掛け、兵士の格好をしたティノに用件を問いかけた。
「ハッ! リンカン王国内における、ある情報を手に入れたのでお話に上がりました」
“バッ!”
「!!? ……リンカンの?」
オルラルドは、深々と腰掛けていた体制から前のめりになり、話の先を促した。
「はいっ! リンカン王国2大公爵家のオルチーノ家、その嫡男の首を手に入れました」
「!!? …………貴様! 何者だ!?」
話の内容を聞いたオルラルドは、ようやくこの兵士が自分の部下で無いことに気付いた。
“ニッ!”
「……それは秘密だ」
正体がばれたティノは口の端をあげ、言葉遣いを変えてオルラルドに対応しだした。
────────────────────
担任のアルマンドが他の生徒に向かって、マルコの実力の高さから参戦終了に決定した事を告げた。
他の生徒も、マルコの戦いを見ていたので、アルマンドの言葉に納得と、戦わなくて済むようになった事に胸を撫で下ろしていた。
「……残念だな。ちょっとお前と手合わせしたかったけどな……」
唯一、ロメオだけは残念そうにマルコに話しかけていた。
「また、その内手合わせできるって……」
マルコは苦笑しつつ、ロメオの事をなだめた。
結局マルコが外れたこの戦闘訓練で、優勝したのはロメオだった。




