第68話 首の扱い
“コンッ!”“コンッ!”
「はいっ!」
ティノが、昨日のエローエのメンバーのいた家の扉をノックしたら、中から返事がして扉が開いた。
「こんにちは!」
扉が開いて、ティノは開けてくれた相手に挨拶した。
「!!? あんた……」
扉を開けたデボラは、ティノの顔を見て少し驚いた顔をした。
「中にリーダーいる?」
ティノはデボラの事など気にも留めず、にこやかに問いかけた。
「あぁ、ちょうど今昨日のメンバーが揃っている……」
デボラは戸惑いつつ、ティノを招き入れた。
「こんにちは!」
室内に入ると、昨日のメンバーが揃っていて、ティノはその中に、にこやかに入っていった。
「ちょうど少し前からあんたの話をしていた所だ」
挨拶もせず、リーダーはティノに話しかけた。
「……信用出来ないとか?」
「……そんな話もしていた」
ティノの言葉に、リーダーは正直に告げた。
「まぁ、そうだろね。昨日知り合っただけの得体の知れない人間だからね」
ティノは、自分の事を自嘲しながら話した。
「あっ、でも昨日の話の通り……」
“スッ!”
「……公爵家の嫡男の首取ってきたよ」
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
ティノは話ながら魔法の指輪から、取ってきた公爵家嫡男の頭を取り出し、部屋の中にあったテーブルの上に置いた。
それを見たメンバーは、驚愕の表情で眺めた。
「……ヤコボ!?」
テーブルに乗せられた首を見て、リーダーはヤコボに向かって名前を叫んだ。
「…………間違いありません。公爵家のベリザリオです。」
名前を呼ばれたヤコボは、テーブルの上の首を見つつ本物であることを証言した。
「ヤコボ、本当かい?」
ヤコボの言葉に、デボラが再度確認の質問をした。
「間違いない! こいつは9年前トウダイ襲撃に参加していた。罪もない町人を、笑いながら殺していたこいつの顔を間違えるはずがない!」
当時を思い出したのか、怒りで拳を強く握りしめつつ、ヤコボは間違いないことを強く述べた。
「……こいつが」
デボラだけでなく、他のメンバーもヤコボの証言により、ベリザリオの首に怒りの表情をぶつけ出した。
「ところで、この首どうするつもりだい?」
「……どうとは?」
室内のメンバーが、テーブルの上の首を怒りで叩き潰す前にティノは話し出した。
ティノの言葉に、リーダーは質問で返した。
「まさか、ここの町に集まったメンバーの前で叩き潰す訳でもないでしょ?」
「こんな奴、町の真ん中で晒し首にして何が悪い!」
ティノの言葉に、怒りの表情でデボラが突っかかってきた。
「……あんたには何か考えがあるのか?」
ティノの様子を見て、リーダーが問いかけてきた。
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客席に移動したマルコとロメオは、闘いを眺めつつ会話をしていた。
「マルコ! 新聞見たか?」
「うん……」
「山ひとつ越えた場所が、戦地になるかもしれないだよな……」
まだ公爵家の嫡男の死が報道されていないので、ジョセンの町はいつ戦争になるのか、この町にも被害が及ばないか不安な空気が流れていた。
「……そうだね」
ロメオの正直な気持ちに対して、マルコはトウダイの事を考え、複雑な気持ちだった。
マルコはティノに、自分の出身地の事と両親の事は聞かされている。
なので、出身地が戦地になることをロメオとは違う不安が心にあった。




