第67話 暗殺
ティノは、マルコの入学式に出席し、ジョセンの町の近くの森から、公爵家の豚のいるナイホソの町の領主屋敷の天井裏に移動した。
『さてと、どこにいるかな?』
「ガーーー!、ゴーーー!」
『こんな時間に寝てんのかよ……』
ティノが天井裏から屋敷内を探していると、公爵家の嫡男のベリザリオを、寝室で寝ているのを見つけた。
思わず、ティノは心の中で突っ込んでしまった。
今は1時半位の時間であり、昼寝にしても中途半端な時間である。
『恐らく毎日夜更かししてんだろうな……』
ベッドのそばのテーブルには、たくさんの酒の空ビンが転がっているのを見て、ティノはそう判断した。
『都合が良い……、寝てる間に殺っとくか……?』
“スタッ!”
ティノは天井裏から室内に降り立ち、ベッドで寝ているベリザリオに近付いて行った。
「んんーー……」
「!!?」
ティノが近付いて行っていたら、不意にベリザリオが目を覚まし、上半身を起こして目をこすり出した。
「ん~……? 誰だお前は……」
“スパッ!”
「ん? …………」
ティノは騒がれると面倒なので、寝ぼけているベリザリオの首を一瞬で切った。
あまりの速さに、切られた本人も分からないまま、ゆっくりと頭がずり落ちて行った。
“スッ!”
「ヨシッと……」
落ちたベリザリオの頭だけを魔法の指輪に収納し、ティノはその場から闇魔法で移動した。
“ブシューーー!!!”
頭を失った胴体は思い出したかのように、ティノが部屋から消えてから血を吹き出し、ベッド周りを血の海に変えた。
「ふー……」
大した仕事ではないが、気付かれないように行動する事に少し疲れたティノは、トウダイの近くの森に着くと一息吐いた。
『明日あたり大騒ぎになるだろうな……』
公爵家の嫡男の暗殺に、ナイホソにいる貴族や隊員は犯人探しで、クランエローエの制圧どころではないだろう。
『その騒ぎが治まるまでに、元ルディチの友好貴族が到着してどうなるかな……』
この暗殺で抗争までの時間が稼げたので、ルディチ家と友好関係にあった貴族が、すぐにトウダイに到着するだろう。
しかし、今は大した力のない貴族が来てどうなるか、ティノはこれからの事に頭を巡らせつつ、トウダイにあるクランエローエの家に向かって行った。
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入学式が終わり、翌日から授業が始まった。
「次の授業は武術の授業だ! 着替えて訓練所に集まるように!」
担任の男性、アルマンドの言葉を聞いたクラスのメンバーは、訓練所に集まりそれぞれが得意な武術の基礎的な練習をおこなった。
マルコは木刀を手に練習していた。
「よーし! 最初に実力を見る為、全員で模擬戦をやるぞ!」
担任のアルマンドは基礎練の終了後、そう言って簡単なくじを持ってきて、生徒達に引かせていった。
「同じ番号の者同士で戦って貰うからな!」
マルコのクラスは成績優秀なSクラス、全人数は20人のトーナメント戦が開始される事になった。
「ルールは簡単、魔法の使用は禁止、だが身体強化はOK、相手に一本与えた者の勝ち、当然命を奪うような行いをしたら許さん。じゃあ1番を残して他は客席に移動しろ!」
簡単なルール説明の後、1番の2人を残し、他の生徒は客席に移動した。




