第66話 入学式
今回はティノとマルコが一緒の話です。
マルコはロメオと共に、ジョセンの町を探索に出た。
「まずはどこ行きたい?」
この町出身の案内役ロメオは、マルコの行きたい場所を聞いた。
「武器と防具の店の場所を覚えておきたいな……」
マルコはティノから、収納量が少ないが魔法の指輪を貰っているので、数本の剣や盾を指輪に収納している。
学校の休みの日には、冒険者として小遣い稼ぎをするつもりなので、武器と防具の店の場所を覚えておこうとマルコは思った。
「そうか、じゃあ俺のおすすめの店を紹介するよ」
そう言って、ロメオはマルコを連れてズンズンと町を進んでいった。
「おいっす! おっちゃんいる?」
店に着いたロメオは、言っていた通り顔馴染みなのか、軽い口調で店主を呼んだ。
「あいよ! ってロメオか……、オメエ学校はどうした?」
「明日入学式だよ! それより友達連れてきた」
店の奥から出てきた店主と軽い会話をかわした後、ロメオはマルコの事を紹介した。
「はじめまして、マルコと申します」
マルコは店主に丁寧に挨拶した。
「おっ! ロメオの友達にしちゃ、礼儀正しい奴だな?」
「一言多いよ!」
マルコの挨拶に、店主は思ったままを口にした。
その言葉にロメオは、軽く突っ込んだ。
「俺はこの店の店主のジュスティーノだ。よろしくな!」
ロメオと短いやり取りをした後、店主は自己紹介をした。
「マルコ、ここの武器と防具は見た目ダサいデザインだけど、結構丈夫で長持ちするんだぞ!」
「ダサいは余計だ!」
ロメオの言った通り、この店の武器と防具のデザインは独特な感じがした。
だが、手に持ってみると、手にしっくりくるような感じがする、不思議な品揃えだった。
「じゃあな、おっちゃん! また来るぜ!」
「失礼します」
「おう! 今度は買いに来いよ!」
一通り店の中を物色した後、マルコとロメオはジュスティーノの店を後にした。
その後、2人は食べ物の出店を見つけては買い食いを繰り返し、夕方頃に寮に帰った。
翌日、マルコの入学式が行われるので、ティノは保護者として学校の入学式会場に向かった。
『確か、マルコが首席挨拶をするんだったな?』
保護者席に座ったティノは、式が進む中、もうすぐ式の予定表にかかれている首席挨拶の事に意識が行っていた。
「新入生代表挨拶! 新入生代表、マルコ!」
「はいっ!」
司会進行役の呼びかけに、元気に返事したマルコが新入生と保護者達の前に立ち、代表挨拶を始めた。
「…………と思います。御静聴ありがとうございました。」
“パチパチパチ……”
『フー……、取りあえず失敗なく終わって良かった』
マルコの挨拶はミスなく終わったので、ティノは密かに安心した。
「ティノ様!」
式が終わり、この学校は全寮制なので、保護者との別れの時間が設けられた。
マルコは礼儀正しく、しっかりしているが、ティノの前では子供らしい顔を見せ、駆け寄ってきた。
「マルコ、これからしばらく会えないが、学生生活を楽しめよ」
「はいっ!」
マルコの頭を撫でつつ、ティノは暫く別れるマルコに話しかけた。
「入寮してすぐ友人が出来ました。勉強に魔法もがんばります!」
「そうか、良かったな。……じゃあまた夏にでも会いに来るよ。」
「はいっ! ティノ様お元気で……」
そう言って、ティノはマルコに背を向けて会場から離れていった。
「……さてと、殺りに行きますか?」
マルコの元気な姿が見れて安心したティノは、その足で密かにマルコの為に豚の暗殺に向かうのだった。




