第63話 説明
「敵ではない? 覗きの犯人がか?」
「覗き……? どういう事です? リーダー!」
明らかに、エローエのリーダーが戦闘モードになった事で、他のメンバーもティノに対して身構え出した。
そしてリーダーの言葉に、デボラが今にも飛びかからん形相で、ティノを睨みつつ問いかけた。
「あぁ、悪かったね。でも本当に敵ではないよ。何ならナイホソの状況を教えようか?」
“ピクッ!”
「何であんたが、ナイホソの状況が分かるんだ?」
ティノの言葉を聞き、関心を持ったのか、リーダーは反応を示した。
「実はちょっと調べて来たんだ。……知りたいかい?」
「……聞かせてもらえるか?」
リーダーは素直に、ティノから情報を聞くことにした。
「良いよ。まずここトウダイに集まった人間を、戦闘員と非戦闘員を合わせて、ざっと数えて約6000って所かな? ……で、ナイホソには戦闘員だけで5倍の30000はいたかな?」
ティノは、室内のメンバー全員を見渡しながら説明を始めた。
「……くっ! そんなにか……」
ティノの言葉に、ヤコボは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……で、指揮をとる貴族は…………」
ティノは言葉を貯めて室内のメンバーの注目を集め……
「……オルチーニ公爵家嫡男、ベリザリオだよ」
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
室内にいたメンバー全員が公爵家の名前を聞いたとたん、驚きと共に強力な殺気を放ち出した。
「…………オルチーニ公爵家」
「…………あの」
「……ルディチ家に濡れ衣を着せた張本人」
誰からともなく1人言のように連鎖し、全員の形相が怒りに満ち溢れていた。
「……殺す! 刺し違えても必ず!」
これまで1番冷静だったリーダーも、公爵家の名前が出たとたん、手から血が出るほど拳を握りしめていた。
「……怒っている所悪いけど、無理だね」
ティノは空気を読まずに、しれっとつっこんだ。
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
ティノのつっこみに、室内の全員が光線が出そうなほどの目で、ティノを睨み付けた。
「数が違いすぎるでしょ? 無理無理!」
全員の殺意を受けても、ティノは平然と軽い言葉を繰り返した。
「……テメエ!」
ティノの軽い態度に、気の短いデボラは押さえきれずティノに殴りかかった。
“トンっ!”
「……!?」
しかし、一瞬でデボラの背後に回ったティノは、デボラの後頭部を人差し指で軽く突いた。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
ティノの実力の一端を見た全員は驚きで、一瞬で殺気が治まった。
「そんな皆に提案があります!」
驚きで固まっているメンバーに、ティノはある提案をするのだった。
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“カラ~ン!”“カラ~ン!”
マルコとロメオが話していると、寮内に鐘の音が聞こえて来た。
「おっ! 確かこの時間だと食事の鐘かな?」
自室の鍵と一緒に渡された、寮内でのルールが書かれた書類に目を通していたマルコが鐘の音に反応した。
「へぇ~、じゃあ、食堂行こうぜ!」
「うん!」
会話をかわした後、マルコとロメオは2人で食堂に向かった。
食堂には、半分位の生徒が集まっていて、全員同じメニューの食事をカウンターで受け取り、トレイに乗せて思い思いの席に座っていた。
「取りあえず、空いてるところに座るか?」
「そうだね」
マルコ達も料理を受け取り、隣の席に座り食事を取り始めた。
「お前がマルコって奴か?」
食事が終わり、片付けようとしていたマルコに、1人の生徒が話しかけてきた。




