第62話 話し合い
“コンッ!”“コンッ!”
ティノは、エローエのメンバーが集まる家のドアをノックした。
「あれっ? 誰も出ない」
しかし、ノックに反応はなかった。
“コンッ!”“コンッ!”
仕方ないのでティノはもう一度ノックした。
“ガチャ!”
「…………誰だ? あんた……」
出てきたのは、先程喧嘩しそうになっていた若い女性だった。
「こんにちは! リーダーに会わせてくれるかい?」
ティノは平然とその女性に話しかけた。
「……おとといきやがれ!」
“ガチャ!”
女性はそう言ってドアを閉めた。
「…………」
ティノはドアの前で立ちつくした。
「デボラ、誰だった?」
ティノを追い返して戻ってきた女性に対して、巨体の男が問いかけた。
「何かリーダーに会いたいとか言うのが来たから追い返した」
「……そうか? で、そいつは誰だ?」
「!!?」
男に言われて、デボラは後ろを振り返った。
「……お前!?」
「あっ、どうも……」
そこにはティノが立っていた。
デボラは振り返った先に、先程追い返した男が立っていた事に驚いた。
そのデボラに対して、ティノは笑顔で会釈した。
「あっ、あんたがリーダーだね?」
メンバーが集まっている部屋に入り込み、ティノはリーダーに話しかけた。
「……あんた誰だ?」
リーダーらしき男は、座ったまま冷静にティノに問いかけた。
「…………あっ! あんた確かモレーノと揉めた奴だろ?」
その部屋にいたメンバーの1人が、ティノの顔を見て思い出したように声をあげた。
「……モレーノ? あぁ、あの時の馬鹿か……」
言われたティノは、一時考えてモレーノの事を思い出した。
以前マルコを誘拐した、元エローエのメンバーの男である。
ティノの顔を見て思い出した男は、ギルドで1番最初モレーノと一緒にいたヤコボである。
「……で、あんたは何の用だい?」
モレーノの名前を聞いた他のメンバー達は、軽く殺気が出ていたが、リーダーだけは冷静にティノに話しかけた。
「先ず、俺はティノって名前だ。用ってのは、ナイホソに集まっている軍を相手にどうするのかって事を聞きに来たんだ」
ティノは名前と共に、メンバー達が話していた事をストレートに聞いた。
「何でそんな事を「あぁ、後、さっきの違和感の正体は俺だよ」……」
リーダーが話している途中で、ティノは言葉を重ねた。
“スッ!”
「……あんた本当に何者だ!?」
ティノの言葉に、リーダーはゆっくり立ち上がり殺気を放ち始めた。
「落ち着きな。取り合えずあんたらの敵ではないよ」
リーダーの殺気を前にしても、ティノは平然と話しかけた。
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「……あっ、あった」
“ガチャ!”
マルコは自分の部屋をようやく見つけ、中に入って行った。
「結構良いな……」
生徒達の部屋は例外なく均一で、ベッドと机とクローゼットがあるだけのシンプルな部屋だった。
マルコは予想よりも快適な感じだったので、嬉しく思いつつ背負っていた鞄をクローゼットにしまった。
“コンッ!”“コンッ!”
マルコがのんびり本を読んでいたら、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ハーイ!」
“ガチャ!”
「あっ!」
マルコがドアを開けると、入試の時会ったロメオが立っていた。
「おぉ、確かマルコだったよな? 偶然だな、俺隣の部屋になったんだ。よろしくな!」
ロメオは隣の部屋に挨拶に来たらしく、そこに入試の時会ったマルコが隣だった事に、嬉しそうに話していた。
「こちらこそよろしく!」
そう言って、マルコとロメオは握手をかわした。




