第57話 子離れ
ハンソー王国の北西に位置するジョセンの町の学校に入る為に、ティノはマルコを連れて闇魔法の陰移動でジョセン近くの森に移動した。
海路でも陸路でも、試験の期日に間に合わない為である。
そして、試験当日
「ではティノ様、行ってきます」
「あぁ、まあお前なら大丈夫だろうけど頑張って来い」
「はい!」
ティノと少し会話をした後、マルコはジョセンの宿屋から試験会場に向かって歩いていった。
「あと少しでとりあえず世話係から開放されるか……」
離れていくマルコの後ろ姿を見て、ティノはしみじみと呟いた。
マルコが試験に受かれば寮生活になるので、これまでの訓練三昧の生活からティノは開放される。
「マルコがいなくなったらどうするかな?」
これまでの長い人生からしたら、マルコといたこれまでの期間は微々たる期間だが、結構面白い時間だった。
マルコを鍛える事をずっと考えていたので、それがこれから無くなるとなると、何をしようか迷うところである。
「このままだとハンソーは終わりだしな……、マルコの卒業まで持たないな……」
折角マルコが手から離れたのに、のんびり出来ないのは困ったものだ。
自分の子孫であるので、ちゃんとマルコに情はある。
これからは、マルコがどうなろうと構わないという考えは浮かばない。
「ハンソーをどうにかしないとな……」
どうやらこれからの事が決まったようだ。
あまり有名になる事はしたくないのが、せめてマルコが初等部を卒業するまでは持たせようと考えた。
「リンカン王国とデンオー帝国の両方押さえないとな……、面倒だな……」
ハンソーは両国を相手にして、疲弊している。
片方押さえたら、次はもう片方を相手にするのを繰り返している。
数で負けてはいるが、魔法教育に力を入れているハンソーには、有能な魔法使いが多いため何とか持っている。
「まぁ、マルコが寮に入ってからだな……」
3国を調べるのも、マルコが入寮してからの事だ。
「それまではのんびり過ごすか……」
そう決めて、ティノは宿屋の部屋に戻り、本を取りだし読みふける事にした。
マルコは、ティノがこれまで学問も教えていたので試験を難なく受かった。
そして、マルコが入寮してティノが色々動き出そうとしてすぐに、リンカン王国のある土地で、ある組織が動き始めていた。
様々な土地で拡大をし続けて来たクラン、エローエがハンソー王国の支援を受けて、リンカン王国の東の土地を支配することに成功したのだった。
リンカン王国東の土地、かつては豊かな町だったが、現在瓦礫の山と化した土地、ルディチ家領地トウダイである。




