第53話 パルトネル
「全く、キズだらけじゃないか」
子白狼の従魔契約でケガをしたマルコを、あきれたように言いながら回復魔法をかけ続けた。
『こんな所まで似なくても良いのに……』
回復魔法をかけながら、ティノが初めて従魔契約をしたときの事を思い出していた。
ティノが従魔契約した時も、マルコと同じようにボロボロになりながら契約をしたのだった。
あれはティノがドラーゴと戦い手足を失って、アルミロをハンソー王国の首都に送った後の事である。
再生魔法の練習をしながらトウダイを目指していたとき、老いた白狼がケガをして動けないでいた所を回復させ、従魔にしたのである。
白狼は頭が良い魔物で、中には片言ながら言葉を話せる個体もいる。
その老白狼も長く生きている為か、少しだけ話せることが出来た。
聞いてみたら年老いた為、群れの中から追い出されたらしく、その時仲間だった狼にキズを受けたらしい。
白狼の寿命は、人間と同じくらいの長さがあるが、この老白狼は毛並み等からそれほど長く生きられないだろうとティノは思った。
「だったら残りの寿命を俺と一緒に過ごそうぜ!」
契約の時、ティノが最後にこう呟いたのが決め手になったのか、契約を成功させた。
その老白狼を、相棒を意味するパルトネルと名付けた。
結局パルトネルは、ティノがトウダイ村に着く1年前に、寿命で安らかに亡くなったのだった。
マルコの契約を見ていたティノは、それらのパルトネルとの大昔の思い出が浮かんでいた。
「……ところで、こいつの名前を決めなきゃな?」
昔の思い出から今に意識を戻したティノは、子白狼の名前を決めるようにマルコに言った。
“スッ!”
「クーン、クーン」
ティノは子白狼に近付くと、首の皮をつまんで持ち上げた。
子白狼は、少し前ティノに殺気を当てられた事により、自分より強い生物だと理解しているのか、大人しくつかまって弱々しい声を出した。
「……オスだな」
ティノが子白狼を持ち上げたのは、性別を確認するためだった。
子白狼のオス特有の物を確認したティノは、そのまま子白狼を回復したマルコの手の上に乗せた。
「オスでしゅか?」
手に乗せた子白狼の目をじっと見つめて、マルコは名前を考え始めた。
「…………ん~」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」
なかなか名前が思いつかず首をひねるマルコを、子白狼は手の上で大人しく待っていた。
「……まぁ、ゆっくり考えろ。そいつはこれから先お前にとっての家族みたいな者だ……」
「……かぞくでしゅか?」
家族という言葉にマルコは反応した。
マルコに家族と呼べる人間はもういない。
父も母も領地の家臣達も今はいない。
「……きめたでしゅ!」
「おっ! 何て名前に決めたんだ?」
マルコの言葉に、エヴァンドロが問いかけた。
「パルトネル!」
「!!? …………」
マルコの言葉にティノは目を見開き、言葉を失った。
「ティノしゃま! このこはパルトネルでしゅ!」
「…………そうか」
満面の笑みで、両手に乗せた子白狼をティノに見せつつマルコは言い、言われたティノは複雑な気持ちになりながらマルコの頭を撫でた。
――ステータス――
〈名前〉マルコ・ディ・ルディチ
〈種族〉人族
〈性別〉男
〈年齢〉3
〈能力〉Lv 13
HP 44/44
MP 78/78
攻撃力 29
守備力 29
力 25
素早さ 25
賢さ 39
耐久 25
〈スキル〉
剣術 (Lv 2/10)
水魔法 (Lv 2/10)
〈従魔〉
パルトネル(子白狼)




