第52話 契約
3人を威嚇し続ける子白狼を、マルコの従魔にする事にしたティノは、ゆっくりと子白狼に近寄っていった。
「グルルルルッ!」
子白狼は近付くティノに、毛を逆立てて唸り声をあげた。
“スッ!”
ティノはそんな事はお構いなしに、子白狼に向かって手を近付けた。
「グルルルルッ! ガウッ!」
ティノの手が子白狼に触れそうになった瞬間、子白狼はティノに噛みつこうとした。
“ズッ!”
しかし、子白狼が噛みつく前にティノは殺気を放った。
“ビクッ!”
「…………クーン」
その殺気を受けた子白狼は、腰が引けて弱々しい声をあげた。
“スッ!”
大人しくなった子白狼をティノは持ち上げて、マルコの方に連れていった。
「ハッ!」
ティノは魔力で魔方陣を描き出し、そこに子白狼を置いた。
「マルコ、この中に入って子白狼を自分に従わせろ!」
ティノはマルコに、魔方陣の中に入るように言った。
「……したがわせるでしゅか?」
「そうだ! どんな風にでもいいから従わせろ!」
ティノが描き出した魔方陣は、魔物を従魔にする為の魔方陣で、魔方陣の中に入った魔物を従わせることで契約が成立する魔方陣である。
「……わかりましゅた」
ティノの言葉を聞いたマルコは、意を決した顔になり、魔方陣の中に入っていった。
「……!? グルルルル!」
魔方陣の中でキョロキョロと周りを見渡していた子白狼は、マルコが近付くとまた唸りだした。
「……ぼくはみかたでしゅ! おいで……」
マルコは、ゆっくりと手を広げて子白狼に近づいていった。
「ガウッ!」
「痛っ!」
子白狼は、近付いたマルコに体当たりで攻撃して転けさせた。
「グルルルルッ! キャン! キャン!」
マルコを敵と見なしたのか、子白狼は威嚇して吠えた。
「坊主! 大丈夫か?」
そばで見ていたエヴァンドロが、攻撃を受けて転んだマルコを心配して声をかけた。
「……だいじょうぶでしゅ!」
エヴァンドロに声を返し立ち上がったマルコは、また子白狼に向かって手を広げて近寄っていった。
「ぼくはみかたでしゅ!」
「ガウッ!」
「ぐっ!」
今度は手を噛まれ、噛まれた場所からは血が流れた。
それからマルコは、何度も何度も子白狼に近付いては攻撃され、その度にケガを増やしながら子白狼に近付いて行くのを繰り返した。
「おいティノ! 良いのかこのままで・・・」
ボロボロになっていくマルコを心配したエヴァンドロは、ティノに止めさせようと声をかけた。
「……大丈夫! マルコは強い!」
「…………」
ティノは腕を組みながら、マルコの事をじっと見つめていた。
エヴァンドロは、ティノが組んでいる手に力が入っているのが分かり、言葉とは裏腹に必死に耐えているように見えた為、それ以上声をかけるのをやめた。
それからもマルコと子白狼の行動は繰返し、血と泥でボロボロになりながらもマルコは子白狼に近づいていった。
「……キャン!」
何度も何度も攻撃しても近付いてくるマルコに、子白狼は吠えつつも後ろに下がり出した。
「……ぼくは、みかたでしゅ!」
「…………」
“スッ!”
キズだらけで泥だらけのマルコは、これまでと同じように子白狼に近付くと、膝をついて子白狼の頭に手を近付けた。
そして、警戒する子白狼の頭を撫でる事が出来た。
「モコモコでしゅ!」
子白狼の頭を撫でられたマルコは、嬉しそうに子白狼に笑顔を見せた。
「…………」
子白狼の方はじっとマルコの顔を見つつ、大人しく撫でられ続けた。
“パーッ!”
マルコが撫で続けていたら、魔方陣が輝き出し、光が収まると魔方陣は消え去った。
「……? ティノしゃま……?」
魔方陣が消えた事に、辺りをキョロキョロした後、マルコはティノの顔を見つめた。
「良くやったな! 契約成功だ」
そう言ってティノはマルコのキズを治す為に、マルコの頭に手を乗せた。
「……! やったでしゅ……」
「ハッ、ハッ、ハッ」
ティノの言葉に、ケガと張っていた気持ちが切れたのか、マルコはへたりこんだ。
そんなマルコのすぐそばで、子白狼は大人しくお座りをしていた。
――ステータス――
〈名前〉マルコ・ディ・ルディチ
〈種族〉人族
〈性別〉男
〈年齢〉3
〈能力〉Lv 13
HP 8/44
MP 78/78
攻撃力 29
守備力 29
力 25
素早さ 25
賢さ 39
耐久 25
〈スキル〉
剣術 (Lv 2/10)
水魔法 (Lv 2/10)
〈従魔〉
子白狼




