第47話 3人のその後
エヴァンドロのスープを食べ終わった後、ティノ達はソーツの町に入り宿屋に向かった。
「すまんね……、宿代借りて……」
奴隷から解放されたばかりのエヴァンドロは、資金を持っていないのでティノが貸してあげた。
マルコが世話になったので、ティノは宿代くらい奢ると言ったのだが、エヴァンドロは奴隷から解放してくれた恩から、絶対に返すと言って聞かない為、貸すことになったのだった。
「明日の朝7時で良かったかい?」
「はい! その時間にお願いします」
町の外で食事をしたとき、エヴァンドロは仕事を探す前に少し資金を稼ぎたいと言っていたので、ティノはマルコの訓練に参加して魔物を倒さないかと誘った。
エヴァンドロは、最初ティノが3才児のマルコに魔物退治をさせている事に顔をしかめていたが、ティノの実力を思い出し、言おうとしていた文句を言うのをやめたのだった。
マルコの為にもと、ティノに頼まれたので、エヴァンドロは明日からティノ達と一緒に、しばらくの間魔物退治をすることにしたのだった。
「じゃあ、お休み……」
「はい。お休みなさい」
エヴァンドロはティノに一言言い、借りた一人部屋に入っていった。
ティノも挨拶を返し、食事をした後また眠ってしまったマルコを背負ったままいつも借りている部屋に入っていった。
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その頃、ティノに商品であるマルコを連れていかれたチリアーコと護衛達はというと……
「ん……!」
チリアーコの護衛の1人タンマーロは、ティノ達が去ってからしばらくして気絶から目を覚ました。
「起きたかい?」
「…………あぁ」
タンマーロより前に目が覚めていたセラフィーノが、声をかけた。
目が覚めたばかりのタンマーロは、何が起きて気を失ったかを思い出し、返事を返した。
「ん……、あっ!?」
カルロッタもすぐに目を覚まし、現状を理解した。
「……それにしても気を失っていた間、魔物に襲われなくて良かったな?」
タンマーロは夜の街道で、周りが林のこの場所で、気を失っていた間襲われなかった幸運を喜んだ。
「……いや、幸運じゃないぞ」
「……?」
セラフィーノは、タンマーロの言葉をすぐに否定した。
「ほら、これ……」
そう言ってセラフィーノは、タンマーロとカルロッタにある魔道具を見せた。
「魔物よけの魔道具だ! あの化け物みたいな奴が置いていったらしい……」
「随分とお人好しだね……」
セラフィーノの言葉を聞いたカルロッタが少し笑いながら呟いた。
「あと……、あいつこれを置いてった」
「「……!!?」」
そう言ってセラフィーノは、2人に1枚の紙を見せた。
そこには、ティノが護衛の3人に向けて文章が書かれていた。
『3人もチリアーコと呼ばれていた男に借金があるのだろうが、足を洗え! 恐らくチリアーコの魔法の指輪に契約書が入っているだろう。しかし、その指輪も消して置いたから安心して離れろ!』と書いてあった。
「そう言えばチリアーコの奴、契約書を指輪に入れてたな?」
ティノの魔法で眠り続けているチリアーコの指には、いつも付けていた指輪が無くなっていた。
「じゃあ、このままバックレても大丈夫そうだな?」
3人は互いの目を合わせた後、意見が合い、立ち上がりその場所から去っていった。
因みにチリアーコの事は完全に無視していた。
ティノの文章の最後に『どうせ闇商人だから魔物に食わせようが、3人が殺そうが好きにしろ』と書いてあったので、3人は興味が無くなった為、チリアーコの運次第に任せることにし、放って置くことにした。
3人は馬車に乗り、行く予定だったスジチューノへ向かって馬車を走らせ出したのだった。




