第46話 スープ
マルコを救出したティノは、獣人の男エヴァンドロを連れてソーツの町に引き返していた。
「ところで、エヴァンドロさんはソーツに行ったらどうするのですか?」
奴隷の首輪が外れた今、これからの生活の為に働かないとならない。
さっきまで奴隷だったエヴァンドロのこの先の事が気になり、ティノは歩きながら問いかけた。
因みに、マルコは町に向かい出してすぐに、助かった安堵からかウトウトし出したので、おんぶされたティノの背中でスヤスヤと眠りについている。
「昔から料理が好きなんで、どこかの料理店で雇って貰って、そのうち店でも持てたらと思っているよ」
「そうですか……、あなたの料理を食べてみたいですね。私は料理のスキルが無いもので……」
ティノは左手の魔法の指輪の中に、たくさんの料理を収納しているので、野宿をする時はそれを食べるし、町では店で食べるので料理はしない。
大昔トウダイで一人暮らしをしていた時は、簡単な料理をしていたが、包丁などはほとんど使わない調理だったせいか、スキルは手に入らなかった。
「助けられた礼に、食材と器具さえあればいつでも作るよ」
「本当ですか? マルコの事があってまだ夕食を食べていないんですよ。少しの食材と鍋しかないですが、今作って貰えますか?」
丁度夕食を食べる前に色々な事が起こったので、ティノは思い出したように腹が鳴り出した。
「あぁ、じゃあ食材を見せて貰えるかい?」
マルコを背負ったティノとエヴァンドロは、町が見えて来た草原で調理することにした。
「はい! どうぞ……、これだけですが作れますか?」
ティノは魔法の指輪から、1角兎の肉とジャガイモ、玉葱、ニンジン、塩、胡椒、バターと鍋と包丁代わりのナイフを取り出した。
「この食材なら、悩むまでもなくスープだな……、まかせときな!」
石を集めた簡単なかまどに鍋を乗せ、ナイフで切った野菜をバターで炒め、ティノの水魔法で出した水と肉を鍋に入れ煮込み、塩、胡椒で味を付けた。
「まぁ、簡単に作ったもんだけど、食ってくれや!」
ティノの魔法の指輪から食器を出し、それによそったスープをティノに渡しエヴァンドロは言った。
「おぉっ! うまそうだ!」
「……ふぁ、……いいにおいでしゅ。」
匂いにつられたのか、眠っていたマルコが目を覚ました。
「マルコ、起きたか? エヴァンドロさんがスープを作ってくれたぞ。食うか?」
「……!! たべるでしゅ!」
寝ぼけていたマルコだが、お腹が空いていたのか食事と聞いて目が覚めたようである。
「ハフ、ハフ、おいしいでしゅ!」
スープの野菜をスプーンですくい、マルコは嬉しそうに食べた。
「うん、旨い! エヴァンドロさんすごいですね!」
お世辞ではなく、出来たスープはとても美味しかった。
長い事生きているティノだが、高めの料理店でしかこれほどの料理は味わったことがない。
「いや~、喜んでもらえて嬉しいぜ!」
ティノに誉められたエヴァンドロは、照れながら嬉しそうに笑った。
「おじちゃん、すごいでしゅ!」
「あぁ、これならすぐにでも店が開けるんじゃないか?」
マルコとティノは、嬉しそうにエヴァンドロと一緒に料理を楽しんだのだった。




