第45話 豹変
「出て来ましたよ! あなた達殺りなさい!!」
ティノ達が馬車の中から出ると、チリアーコが護衛達にティノを始末するように命令した。
「「「…………」」」
しかし、護衛の3人はティノとの実力の違いから、無言で手を出せずにいた。
「何をしているのですか!? 高い金で雇ったのですよ! ちゃんと働かないとあなた達も奴隷落ちになりますよ!」
「「「!!?」」」
護衛の3人も借金の返済の為、チリアーコに雇われているに過ぎない。
このままティノ達を逃がしてしまうと、チリアーコに借金奴隷にされてしまう。
その事を言われた3人は、負けると分かりつつティノに向かって武器を構えた。
「クソーー!!」
自棄になったセラフィーノは、ティノに向かって突進していった。
「ちっ!!」
それを見たカルロッタも、舌打ちをしつつティノに向かって行った。
「仕方ないな……」
2人がティノに向かって行ったので、タンマーロも文句を言いつつ魔力を練り始めた。
「オラッ!」
セラフィーノは気合いと共にティノにロングソードを降り下ろした。
“ドムっ!”
「ウグッ!?」
しかし、ティノはセラフィーノの剣を交わしつつ、右拳を鳩尾に叩き込んだ。
その一撃でセラフィーノはうずくまり、気を失った。
「たーっ!」
続いてカルロッタが、2つのショートソードでティノに切りかかった。
“スッ!”
「!!? 消えた!?」
カルロッタは攻撃を交わされ、その交わしたティノの動きの速さから姿を見失った。
“トンッ!”
「!!?」
一瞬でカルロッタの背後に回ったティノは、首筋に手刀を当て、カルロッタの気を失わせた。
“ゴウッ!”
カルロッタの気を失わせたティノ目掛けて、馬車ごと消し炭にするような特大の火炎弾をタンマーロが放った。
“スッ!”
火炎弾を見たティノは、飛んでくる火炎弾に向かって右手を掲げた。
“フッ!”
「!!?」
ティノの右手から放たれた闇魔法の影によって、火炎弾は一瞬で吸い込まれ、跡形もなく消え去った。
全力で魔法を放ったタンマーロは、火炎弾が消えた後に魔力切れになり気を失った。
「おのれ! 役立たず共め!」
先程の戦闘のレベルの高さを理解できないチリアーコは、あっさりやられた護衛達を詰った。
「!? そうだ! エヴァンドロ! その男を倒しなさい!」
ティノの後ろに馬車から出てきた獣人がいたので、それを見たチリアーコは命令を下した。
「!!? あなた首輪をどうしたのですか!?」
しかし、チリアーコは獣人の男エヴァンドロの首に、奴隷の首輪が無いことに気付き目を見開いた。
「彼に解いてもらった……」
エヴァンドロは、チリアーコに面倒臭そうに答えた。
「おのれ!! 逃がさんぞ!!」
怒りで口調が変わったチリアーコは、エヴァンドロに向かって駆け出した。
“スッ!”
そのチリアーコにティノは、睡眠魔法を放ち眠らせた。
「闇商人の癖にうるさいんだよ!」
ティノは、眠り転けたチリアーコに一言呟いた。




