第40話 詰問
チリアーコと別れたモレーノは、ティノを閉じ込めた家屋の方に向かっていた。
「ナルチーゾの奴遅ーな……」
モレーノは、ティノを閉じ込めた男のナルチーゾが待ち合わせの場所に来ない為、仕方なく様子を見に向かった。
向かっている途中に、前方から歩いてくるナルチーゾを見つけた。
「ん? ナルチーゾ遅いじゃねえか! 仕方ねぇから来ちまっぜ!」
「…………」
モレーノがナルチーゾに声をかけるが、ナルチーゾはうつ向いたままで返事を返さなかった。
「おいっ! ナルチー……」
“ドサッ!”
モレーノが返事を返さないナルチーゾに近付いて行くと、ナルチーゾはその場に、糸が切れた人形ように倒れた。
「おいっ! ナルチーゾ! どうした!?」
急に倒れたナルチーゾに向かって、モレーノは急いで駆け寄った。
“ザシュ!”“ザシュ!”
“ドサッ!”
しかし、ナルチーゾに近付いていた途中でモレーノは、両足の膝から下が切り離されて前のめりに倒れた。
「……へっ?」
何が起きたか分からず、上半身を起こして自分の足を見ると、あるべき場所に足が無く、大量の血が吹き出しているのと、自分の両足遠くに転がっているのを見つけた。
「ぐあーーーーーーーー!!!!!!!!」
自分の状態に気付いたモレーノは、痛みから絶叫しのたうちまわった。
“ザッ!”
「単細胞だな……、脳に伝達するまでずいぶん経ってるぞ?」
絶叫するモレーノのすぐそばに、剣を持ったティノが現れた。
「て、てめぇ……、な、何で……?」
結界に閉じ込めたはずのティノが、目の前に現れた事にモレーノは目を見開き驚いた。
「何でって……、結界から出たからだよ」
訳が分からない様子のモレーノに、ティノはしれっと答えた。
ナルチーゾによって閉じ込められたティノは、扉に向かって練り上げた強力な魔力を放ち、扉に仕掛けられた魔道具を破壊して外に出たのだった。
ティノが出てきたことに驚くナルチーゾを、直ぐ様気を失わせ、闇魔法で操りモレーノをおびき寄せたのだった。
「バ、バカな!? あ、あの結界から出るなんて……」
「バカはお前だ! 結構強力な魔道具使いやがって、出るのに疲れただろうが!」
言葉ではそう言いつつ、ティノは大した事無さそうに呟いた。
実際結界に使用された魔道具は、大昔ティノが戦ったドラーゴ程度の魔物ならば、何をしても絶対に出てこれない程の強力な魔道具だった。
「グッ……! て、てめぇが俺の足を……!?」
「あぁ、切った!」
モレーノとのやりとりが面倒くさくなり、ティノは端的に答えた。
「て、てめぇ……、こんな事してガキがどうなっても良いのか!?」
「!? 何だ? マルコにも手を出したのか?」
“ニヤリッ!”
ティノの言葉を聞いて、モレーノは口の端を上げて笑った。
「へ、へへっ……、あのガキがどうなっても……」
“ザシュ!”
モレーノが話している途中で、ティノはモレーノの左手を切り落とした。
「ぐあーーーーー!!!!!」
肘から先が切り落とされたモレーノは、また大声を上げて叫んだ。
「ぐだぐだうるせぇな! マルコをどうした?」
面倒なやりとりに飽きたティノは、苛立ちながら剣をモレーノの目の前に突きつけた。
「ガ、ガキは奴隷商に売り付けた! ちょ、ちょっと前に隣町に売りに出た。」
「本当か?」
モレーノの言葉が本当か確める為、ティノは剣をモレーノの首に沿わせた。
「ほ、本当だ! だ、だから勘弁してくれ!」
「…………」
“ドガッ!”
ティノは無言で以前同様モレーノに拳骨を落とし、気を失わせた。
その後、気を失っているモレーノの手足を魔法でくっ付け、モレーノとナルチーゾを魔法の指輪から出した紐で縛り、ギルドに引きずり届けて報告した後、ティノはマルコを追いかける為、ギルドから飛び出していった。




