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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第3章
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第39話 誘拐

「まだ着かないんですか?」


 ティノは迎えに来た男に連れられて、町の端の方へ来ていた。

 辺りには家も少なくなってきていて、宿から10分ほど歩いているにも関わらず着かないことに、ティノも違和感を覚え出した。


「すいません。すぐそこの建物ですから……」


 案内役の男は、木で出来た古い家屋を指差した。


「……ここですか?」


 確か揉めた相手は、Aランククランだと言っていたはずなのに、こんな家屋がクランの拠点だとティノはとても思えなかった。


「はい。リーダーが中でお待ちですので、どうぞお入りください」


 案内役はそう言って、家屋の扉を開けてティノに入るよう促した。


「分かりました……」


 ティノはどう考えてもおかしいとは思いつつ、男の指示に従い中に入っていった。


“パタンッ!”


 ティノが中に入ると、男はすぐに扉を閉めた。


「……まぁ、そうだよな……」


 ティノはそのまま部屋の中に入っていったが、思った通りこの家屋の中に人の気配は無かった。


「何が目的なんだ?」


 ティノは案内役の男に、ここに連れてきた理由を尋ねようと扉の取っ手に手をかけた。


“バチッ!”


「おいおい結界かよ……、ずいぶん手が込んでるな……」


 どうやらティノが中に入ると同時に、この家屋から出れないように結界が施されたらしく、ティノの手が扉の取っ手に弾かれた。


「面倒くせーな……」


 ティノは仕方なく結界解除の為に、魔力を高め始めた。






――――――――――――――――――――


「ん~……! ん~……!」


「おいっ! あんま暴れんなよ! ぶち殺されてぇか!?」


 ティノが結界に閉じ込められた頃、マルコはギルドの支部でティノと揉めた男に、口を布で覆われ、手足を縛られ、宿から連れ出されていた。


「モレーノさん! いらっしゃいませ!」


「おうっ! チリアーコ、このガキが約束の品だ!」


 誘拐犯ことモレーノは、そう言ってマルコを床に転がした。


「ん~……!」


 マルコは、チリアーコと呼ばれた男に救いの目を向けて声を漏らした。


「ホ~……、中々の見た目ですね」


 しかし、チリアーコはマルコを品定めするように眺めるだけで、マルコの声を無視した。


「約束の金をくれ!」


 そう言ってモレーノは、右手を出して金を要求した。


「分かりました。どうぞこちらを……、良品なので色を付けておきましたよ」


“ジャラッ!”


「へへっ、こりゃありがてぇ……」


 モレーノはチリアーコから金貨の入った袋を受け取り、中を確認してから袋を懐に入れた。


「しかし、こんなガキが売れんのかよ?」


「金持ちの中には、幼い男子を囲いたがる人間もいるのですよ」


 チリアーコは闇の奴隷商であり、時折密かにモレーノに商品の発注を依頼していた。


「そんなもんかね……、まぁ金になるならどうでもいいか?」


「そうですね。私にも理解出来ませんが、これが私の商売ですので……」


「そんじゃあ、また依頼があったら連絡してくれ!」


「はい、私はこのまま依頼者に届けに行きますので、2週間後にまたお会いしましょう」


「あいよ」


 会話を交わし終わったモレーノは、そのまま離れて行った。


「ん~……!」


“ドサッ!”


「それでは、行きますか?」


 チリアーコはマルコを馬車の荷台に乗せた後、一言呟いて馬車を走らせ出した。


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