第31話 取得
「ん~……!」
セービの町の宿屋の一室で、机の上にある空のコップに両手をかざして、マルコはうなり続けていた。
“ピチョンッ!”
コップの中に1滴の水が落ちる。
「ハーッ!」
マルコはほとんどの魔力を放出してしまい、そのまま横になった。
『まだまだ先は長いな……』
その様子を、本を読みながらチラチラと見ていたティノは、心のなかでそう呟いた。
マルコが今やっているのは、水魔法のスキル取得の為の練習である。
魔法でコップいっぱいに水をためる、簡単で分かりやすい練習方法である。
カルロやアルミロにもこの方法で教えたのだが、その日のうちに出来てしまったのは言うまでもない。
『まあ、あの2人は特別だからな……』
教える魔法をあっさり覚えた2人の事を思いだし、ティノは懐かしく思っていた。
「く~……」
どうやら疲労によって、マルコは眠ってしまったみたいだ。
「……しかたないな」
ティノ自身も本を読んでこの方法を見つけ、練習をして水魔法のスキルを手に入れた。
だがティノは、魔力操作同様20日ほどかかってスキルを手に入れたので、マルコも同じ位かかるだろうと予想している。
系統魔法の練習は、魔力操作の時とは違い本人の才能と練習次第でしか近道は無い。
「よっ!」
ティノは、眠ってしまったマルコをベッドの上に寝かせた。
「……すまんな、俺に似てしまって……」
ベッドの上ですやすやと眠るマルコの寝顔を見ていたティノは、思わずそう呟いていた。
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翌日から午前中はマルコの剣術練習、午後は魔物との実戦練習、夕方宿に帰ってから水魔法の練習をする事を繰り返した。
結局マルコはティノ同様、20日ほどかかって水魔法にスキルを手にいれることが出来た。
「やった! やりましゅた!」
コップいっぱいに水をためる事が出来て,マルコは満面の笑みでティノに語りかけた。
「良くやった! マルコ!」
ティノも自身が出来た時の事を思いだし、嬉しくなりマルコの頭を撫でていた。
「マルコ! 次の訓練だが……」
「はいっ!」
ようやく魔法が使えるようになったマルコに、ティノは直ぐに次の訓練を指示した。
「お前は魔法が使えるようになったが魔力の量が少ない……」
「はい……」
「そこで魔力の量を増やす為、これからは寝る前に魔力を使いきるようにしろ!」
「……? それでふえるんでしゅか?」
「あぁ!」
年齢が若い時の方が、魔力を使いきってから回復すると魔力の量が多く増える傾向にある。
大人になってからこれをやっても増えることは増えるのだが、僅かしか増えない。
ティノもたまにやることで魔力を増やしているが、そもそも大人になってから魔法を覚えたティノは、たいして量は増えない為、気が向いたときにやる位である。
まだ子供のマルコは、きっとかなり魔力の量が増えるのだろうと思い、この訓練をやらせることにした。
――ステータス――
〈名前〉マルコ・ディ・ルディチ
〈種族〉人族
〈性別〉男
〈年齢〉3
〈能力 Lv 5
HP 14/14
MP 20/20
攻撃力 9
守備力 9
力 7
素早さ 7
賢さ 9
耐久 7
〈スキル〉
剣術 (Lv 1/10)
水魔法 (Lv 1/10)




