第30話 魔力操作
セービに帰り、ティノとマルコは宿屋で夕飯を食べた後、部屋で話をしていた。
まだマルコは小さいので、セミダブルのベッドがある1人部屋を借りていて、宿の店主の計らいで、1人分の料金で泊まらせてもらえている。
「マルコ! 剣術のスキルを手に入れたので、次は魔法の訓練をしよう」
「はいっ!」
マルコは、前からティノが魔法を使う姿に憧れていたので、魔法を教えてもらえることにキラキラした眼で返事をした。
「とは言っても、まずは魔力を感じる事からだな……」
「どうすればいいでしゅか?」
ティノが先に剣術のスキルを手に入れさせたのは、魔法を教える為でもあった。
魔法は基本、遠距離で戦うための技術だ。
遠距離で倒せれば1番なのだが、数が多かったり、魔法に耐性がある魔物と戦う時、必ず近距離での戦闘の技術が必要になるからである。
「ん~……、自分で感じとる事が出来れば良いんだけど……」
ティノはマルコの顔を見て、自分の時はしばらくかかって出来るようになったのを思いだしていた。
「これからお前に、ほんの少し魔力を流す。それを感じ取るんだ」
このやり方は、これまでたくさん読んだ本の中に書いてあった方法である。
あまり知られていない方法らしく、たくさんある魔導書でも書いてある本は滅多にない。
そもそもこのやり方をしなくても、大抵の人間はすぐに魔力を感じる事が出来るようになる為である。
「ベッドの上で背中を俺に向けて座り、心を落ち着かせるんだ」
「はいっ!」
マルコはティノに言われた通り、ベッドの上に座った。
「良いか? 目を閉じて体内を流れる魔力を感じるんだ。行くぞ?」
「はいっ……」
マルコの返事を聞いて、ティノはゆっくりとマルコの体内に魔力を流した。
「……どうだ? 魔力が流れているのが分かるか?」
「……はい、なんとなく……」
「それじゃあ、それを自分で動かすようにイメージするんだ……」
「……はい」
少しの間、魔力を感じる訓練をしたが、なかなかコツがつかめないのか、この日は出来るようにはならなかった。
結局5日かかり、マルコは魔力を操作出来るようになった。
普通の人ならこの方法でなくても2、3日で出来るようになるのだが、ティノの予想通りこの方法でやった事は正解だったようだ。
普通の人と同じようにやり、ティノ自身で魔力を操作出来るようになったのは、20日近くかかっての事だった。
「さてと次はどの系統の魔法を使うか……だな?」
魔力操作を出来るようになり、魔力を魔法に変える練習なのだが、ティノはどの系統から教えるべきか悩んでいた。
色々な系統を満遍なく鍛え、得意な系統を重点的に鍛えるのが王道だが、才能が無く、マルコはティノのように時間が大量に有るわけでもない。
「良し! 水系統にしよう!」
ティノ自身が最初に覚え攻撃、防御にも使え、多少の怪我の治療に使える水系統が1番だと、ティノは考えた。
更に、もし食べ物がなく空腹の時でも水さえあれば、人間はしばらくは持ちこたえられるものだからである。
「はいっ!」
ティノの考えを知ってか、知らずか、魔法を教わるマルコは元気に返事を返した。




