第26話 3才と一緒
ハンソー王国は、アルミロの父フランコ・ディ・ハンソーが亡くなった後、長男ベニートと次男フェルモによる跡目争いが起こった。
王国貴族は真っ二つに分かれ、王国全土を巻き込み各地で戦乱が巻き起こった。
衰退の一途を辿っていくなか、貴族ではなく民衆を率いたアルミロが、兄達と貴族連中を打ち破り新国王の地位に着いた。
アルミロは、魔法使いとして他国にも名を轟かす程の実力を持ち、貴族・平民関係なく魔法を学ぶ事が出来るように教育体制を造り上げ、ハンソー王国が魔法国家と呼ばれる礎を造った。
「ティノしゃま!」
「どうした? マルコ!」
「ネコでしゅ!」
3年の月日が経ち、マルコはハンソー王国ですくすくと育っていた。
今も宿泊している宿屋の庭に猫を見つけ、楽しそうに追いかけている。
ティノが、ハンソー王国でマルコを育てる事にしたのは、平民でも教育を受ける事が出来る為である。
話が変わるが、ティノの息子であるカルロから始まったルディチ家は、何かしらの才能に秀でた人間ばかりだった。
そして、ルディチ家にはある法則があった。
それは、一人っ子であるということである。
二人以上の子が出来たことがなかった。
しかし、一人っ子でもその子が何かしらの才能に秀でていた事と、兄弟による相続争いが起きることが無かったので、今まで大した事では無かった。
マルコの父フランコであっても、歴代の者達に比べれば低いが、充分武にも知にも長けた人物だった。
「それに比べて……」
マルコは元気で明るく、誰からも好かれる性格をしてはいるが、魔法や武には才能を感じないでいた。
その事にティノは少々悩みを感じていた。
ティノは、どうしてもカルロを対象としてしまう為、マルコの才能の無さにどうしたら良いのか考えていた。
「隔世遺伝か?」
マルコの才能の無さは、どう考えてもティノそのものと言った感じだ。
ティノの呟いた通り、隔世遺伝によって小さい頃のティノがいるようである。
「カルロは、3才で1つか2つ魔法を覚えていたっけ……」
猫を撫でて喜んでいるマルコを、ティノは離れて見ながら、自分を見ているようで心苦しくなってきた。
「上等だよ……、才能が無くても強くしてやろうじゃねえか!」
ティノは確かに才能は無いが、不老のスキルによって有り余る程の時間があった。
幾らティノがのんびり屋だとは言え、この長い間で手に入れた知識がある。
その知識によって、ある方法を思い付いたのである。
「マルコ!」
「はいっ! ティノしゃま!」
ティノは猫を抱いているマルコに近付き、頭を撫でる。
「マルコは何になりたい?」
ティノはマルコに優しく問いかけた。
「ちちうえやごしぇんじょしゃまたちのようにつよくなりたいでしゅ!」
ティノはマルコに、赤子のマルコを逃がした執事が持っていたルディチ家の歴史が書かれた本を読んで聞かせていた。
しかし、何故両親が死んだのかは、まだ話していない。
本の内容を聞いたマルコは、先祖達に憧れ、その血が自分にも流れている事に、幼いながら誇りに思っているようである。
「強くなるには厳しい訓練が必要だぞ? お前はそれでも強くなりたいか?」
ティノが思い付いたマルコを強くする方法は、かなり厳しい訓練が必要になる。
マルコ本人の意志がなければ、とてもやり通せない。
その為、ティノはマルコに意思を尋ねた。
「はいっ! つよくなりたいでしゅ!」
ティノの問いに、マルコは元気良く答えた。
「そうか……、分かった」
マルコの答えを聞いたティノは、マルコを強くする事に迷いが無くなった。
初等部の学園に入れる9才までに、マルコを1人前にする為、ティノはマルコと修行の浮浪に旅立った。
――ステータス――
〈名前〉ティノ
〈種族〉人族
〈性別〉男
〈年齢〉?
〈能力〉Lv 574
HP 2186/2186
MP 6338/6338
攻撃力 672
守備力 609
力 528
素早さ 791
賢さ 1455
耐久 502
〈スキル〉
農業 (Lv 10/10)
火魔法 (Lv 10/10)
水魔法 (Lv 10/10)
風魔法 (Lv 10/10)
土魔法 (Lv 10/10)
雷魔法 (Lv 10/10)
闇魔法 (Lv 10/10)
光魔法 (Lv 10/10)
無詠唱 (Lv 10/10)
剣術 (Lv 10/10)
武術 (Lv 10/10)
錬金術 (Lv 10/10)
〈特殊スキル〉 不老
〈称号〉 浮浪者
――ステータス――
〈名前〉マルコ・ディ・ルディチ
〈種族〉人族
〈性別〉男
〈年齢〉3
〈能力〉Lv 1
HP 5/5
MP 4/4
攻撃力 3
守備力 3
力 2
素早さ 2
賢さ 3
耐久 2
今回から3章です。




